みんな死ぬまで

 中学二年生の女子生徒Mが首を吊って死んだ。


 その直前に、担任教師とクラスメイト全員にMからメールが届いていた。メールには動画サイトのアドレスが添えられていた。


 Mは教室で酷いいじめにあっていたが、これまで一度として抵抗を示したことはなかった。そのMから何か発せられたとなれば、いじめに積極的に関わらなかったものでも興味がわいた。メールを受信した全員が動画サイトに接続した。


 それはMが首吊り自殺をする映像だった。


 うすら寒い思いがして途中でサイトを閉じたものでも、それがどこで行われたのかはすぐに分かった。全員がよく知っている場所、教室だった。いじめの舞台となったところだ。


 Mの自殺動画はライブ中継だったが、誰一人として学校に連絡を入れたものはなかった。夜遅くに巡回の警備員が発見するまで、首を吊ったMの姿は配信され続けた。


 背景となった黒板には、何か文字がびっしりと書かれていた。しかし、動画ではぼやけてしまってうまく読み取ることができなかった。


 それは担任教師とクラスメイト全員のフルネームだった。


 もちろんM自身の筆跡によるものだ。


 そのことを知った担任とクラスメイト一同はぞっとなった。


 Mから来たメールに「みんな死ぬまで、絶対にやめない」という一文があったからだ。そこに名前を書かれたものが「みんな」に違いなかった。


 クラスメイトたちが一人また一人と死んでいった。


 自殺したもの、発狂死したもの、Mの首吊り死体の幻を見たといって心臓発作を起こしたもの、衰弱死したもの。罪をなすりつけ合っての殺し合いもあった。


 精神力が弱く、役に立たず、状況に応じて態度や考え方をころころ変える担任教師は、数名の生徒を引き連れて集団自殺した。


 Mの行為は、いじめから逃れる最終手段としての自殺というのとは少し違った。


 Mは、言わば化けて出るために、意図的に自らの命を絶ったのだ。言ってみれば、それは全員を巻き添えにするための自爆だった。


 まもなく、黒板に名前を書かれた全員が恐怖の末に死に、これである意味でお互い様ということになった。


 それで救いは何もない。

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