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 一人。


 一人というのがいい。


 それがオレの望んでいたことだと今更分かった。


 連中がみんな逃げていったからそうなった。


 ここにはもうオレしかいない。空の霞んだ町。


 たまに勝手にやってきて、辺りをうろつきまわる連中もいる。


 ここら一帯はもうオレの庭だっていう意識になってるから、オレからするとそいつらは侵入者ってことになる。だから追い出しにかかる。カメラなんか持ってる奴は最悪で、だいたい叩き壊してやる。


 金ならなくはない。どさくさに紛れて手に入れたものだ。


 街まで出て金を使って何か手に入れることもある。でも、置き去りにされたものをかき集めれば暮らしは何とかなる。


 オレの楽しみは空になった家々を燃やして回ることだ。


 火が燃え広がり、家屋全体を覆いつくし、やがて崩れ落ちる。


 それをただじっと見ている。


 じっと見ているうちにだんだん虚しい気分になってくる、その感じがオレはなんだか好きだ。オレにだってちゃんと感情ってものがあったんだなって思う。そんなこと、知ってたはずのことだった。


 久しぶりに街まで買い出しに出たときのことだ。


 どっかの食堂でかかっていたテレビを道端から見た。どいつもこいつも、まるで何もなかったみたいに呆けてやがった。


 だけど、そんなの昔からそうだった。


 誰も何もしてくれない。それだけが本当のことだ。


 オレは毎日全身にたっぷり嫌なものを浴びている。


 体の内側からも取り込んでいる。


 その嫌なものを浴び続け、吸収し続けているうちに、何か巨大な化け物にでも変身しないもんかと思う。


 そしたら、連中の街を破壊してやるんだ。


 炎を見ながら、オレは我を忘れるほど怒り狂い、拳をぎゅっと握りしめる。


 それから急に泣き出し、力が入らなくなって地べたに身を投げ出す。


 そうして疲れ果てて寝てしまう。


 目が覚めても一人だ。

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