幽霊屋敷


 通常のテーマパークにある幽霊屋敷には、何かが欠けているとずっと考えてきた。それが何なのか、あるときついに分かった。必要なのは本物だ。オレは理想の幽霊屋敷を実現するため、さっそく動き出した。


 それが数年前の話。土地の当てはあった。資金も何とか都合がつく。あれこれ煩雑な交渉や書類仕事も慣れたものだ。唯一にして最も厄介な問題は、いかにして本物の幽霊を連れてくるか、これだ。


 オレが探したのは、死んでもかまわないという連中だった。


 ただでとは言わない。相応の金銭と引き替えならばという意味だ。金に困っている連中は少なくない。まともに働いていたのではとても返せないほどの負債を抱えた、崖っぷちの連中だ。自分の命と換えてでも家族だけは助けたいなどと思っている、どん詰まりの連中。オレはそこに目をつけた。


 ネット広告に釣られてきた奴一人ひとりとじっくり交渉し、事件や事故に見せかけて死んでもらうことで多額の保険金を引き出す計画を話した。決まり文句は「諸々の面倒はうちが引き受ける。あなたはただ死んでくれればいい」だ。


 契約にサインした者たちをオレは順々に始末した。


 双方納得済みなのだし、もっと楽に行くかと思ったが、いざとなると案外誰もが抗った。今わの際でも大いに苦しんだ。だが、それはそれ、仕方ない。むしろ、それくらいの方がいい結果を生むかもしれない。


 オレはその都度屋敷に遺体を運び込み、それぞれの部屋に放置した。山奥の古い洋館を安く買い取り、それらしく改築を済ませていた。ちょっと気長な話になるが、あとはこいつらが化けて出るのを待つというわけだ。他にいい方法がなさそうなんだから仕方ない。うまくいかなければ、また別の奴を始末して投げ込むだけだ。


 保険金の支払い? 契約? 忘れてくれ。奴らはもう死んだんだから。死んだらおしまい。何も確かめようがない。そうだろ?


 運良く二、三ヶ月のうちにいくつかの部屋で奴らが化けて出るようになった。やり方はそう悪くなかったらしい。この調子なら、次の夏にはオレの理想の幽霊屋敷がオープンできそうだ。連中の中には色々恨みがましいことを言ってくる奴もいるが、耳は貸さない。死んでまでこの世のことにこだわるとは理解しがたい連中だ。楽にしろよ。お客を楽しませてくれなきゃ困るんだ。


 さて、準備万端整った。開園だ。




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