スナネコと「もじ」
しれん
第1話
ボクは、スナネコです。
今日は、いつもいるさばくちほーから離れて、「ゆうえんち」というところに来ています。前に黒くておおきいセルリアンをみんなで倒したから、お祝いをするためです。
この「ゆうえんち」というところは、見たこともない知らないもので溢れています。とてもたのしいところです。けど、ボクの今いるところの周りのものには、もう飽きてきてしまったので、少し探検してみようと思います。
たくさんのフレンズたちの間をかき分けていきながら歩いて行くと、この「ゆうえんち」の中でもいちばんおおきい、まるいものの前に着きました。すぐ下から見ると、さっきいたところから見るよりももっとおおきく見えるから、とても不思議です。でもまあ、さわぐほどでもないか。
次に目に付いたのは、白いおおきなウマのお人形です。背中に乗れるようなので、乗ってみました。満足です。そのすぐ近くには、「ばす」に似ているものもありました。これにも乗ることができたので、満足です。
こんな風に、「ゆうえんち」にある色々なものを見て回っていたら、地面に何かが落ちているのに気がつきました。
何だろう?
すぐに興味はその落ちているものに向きました。
持ってみると、とても薄くて、そこに絵となにか変なものがかいてあります。絵を見てみると、さっき見て回った「ゆうえんち」の中のものとよく似ています。
おもしろーい、すごーいなどと思っているうちに、段々と飽きてきました。なので、次のおもしろいものをまた探しに行こうとしたとき、ボクを呼ぶ声が聞こえました。さっき、自分が「ヒト」という動物だとわかったと言っていた、今日のお祝いの主役のかばんです。かばんは、今まで会ったことのあるフレンズに挨拶をしていたみたいです。どうやら、ボクはあちこち歩き回っていたためにかばんと会うことがなかったから、ボクが最後みたいです。
かばんは、ボクの近くに来ると、
「スナネコさん、その持っているものはなんですか?」
と、聞いてきたので、
「さっきおもしろいものを探して歩いていたら、見つけたのです。ボクはもう飽きたのであげます。」
と言って、かばんにこの薄いものを手渡しました。かばんは、それを見て、
「これは…? ふむふむ…。『ゆうえんち あんないず』ですか。スナネコさん、ありがとうございます。」
と言いました。
…「あんないず」?
「なんでかばんは、これが『あんないず』だとわかったのですか?」
「あっ、えーっと、ここにですね、文字でそう書いてあるんです。」
…「もじ」?
やっぱり、かばんといると、いつも知らないことばかり発見できて飽きませんね。ボクは、この「もじ」というものを知りたいと思いました。
「『もじ』とはいったいなんなのですか?」
「文字は、ヒトが言葉を目で見えるようにするためのものだそうです、博士が言っていました。」
言葉を見えるようにする…ヒトの考えることはおもしろいですね。
「ボクも『もじ』を使ってみたいです。」
「ぼくもあまり多くは書けませんが、簡単な文字なら教えられると思います。それでも大丈夫ですか?」
ボクは頷いて、歩き出したかばんについていきました。かばんは地面に砂があるところまで着くとその場にしゃがんで、
「どんな文字がいいかな…。」
と、考え始めました。
少しして、かばんがなにか思いついて、地面の砂にすらすらとなにかをかき始めました。そして、
「スナネコさんの名前を書いてみました。自分の名前がいちばん実感が湧くんじゃないかな、と思ったので。」
と言いました。地面の砂を見ると「すなねこ」とかいてあります。
これが「もじ」…!
これがスナネコという「もじ」…!
これがボクの名前の「もじ」…!
今まで味わったことのない興奮と喜びが一気に出てきました。ボクはすぐに、地面の砂にかいてある「すなねこ」を真似してかいてみました。お絵描きみたいでとてもたのしいです。
ボクは何回も何回も「すなねこ」とかき続けました。かけばかくほど上手にかけるようになっていった気がしてとてもたのしいです。
地面の砂にかかれた、たくさんの「すなねこ」を見て、ボクはただ一言、
「まんぞく…!」
と言いました。今までのどんな満足よりも満足していました。そんなボクを見ていたかばんも、とても満足そうに、とても嬉しそうにしていました。
そのとき、今度はかばんを呼ぶ声が聞こえました。かばんととても仲良しのサーバルの声です。その声に、かばんは返事をしてから、ボクにも軽く挨拶をしてサーバルのいる方に向かいました。そこには、ボクの家のトンネルの先で会ったフェネックやアライさん、ツチノコなど、知っているフレンズもたくさんいました。
「もじ」をかけるようになったこと、みんなに自慢しよう。
そう思って、かばんが向かった先にボクも向かうことにしました。
スナネコと「もじ」 しれん @Siren_927
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