対 ヒグマ③



『――ヒグマは本来の動物の姿でモ、最高速度はライオンやオオカミにせまるぐらいの速さがだせるんだっテ』



寂れた遊園地の売店から拾ってきたノートと鉛筆を手に、黒かばんはセルリアンを椅子代わりにして腰を下ろす。


『それにあの巨体デ、最高速に達するまでほんの数秒しかかからない瞬発力も持ち合わせているんだってサ』


開いたノートに鉛筆を滑らせながら、黒かばんは楽しげに微笑んだ。


『そんなヒグマが元の能力をある程度キープしたまま身軽なフレンズの体を手に入れたラ、あんなにも強力な突進攻撃ができるようになるんだネ。勉強になるなア』


メモを取りつつ大きく深呼吸。

体から変異したサンドスター・ロウが風を伴って吹き出していく。


『山頂のセルリアンを殲滅したリカオンも大したものだよネ。元動物同士の争いなら、今頃ヒグマの一撃で終わっちゃってるだろうけド、さすがの粘り強さだヨ』


うきうきと話す黒かばんとは対照的に、周囲のセルリアン達は無機質な瞳を彼女に向け続ける。


『…これだけ教えてあげてモ、君たちがこの面白さを理解できないのは残念だネ』


パタン、とノートを片手で閉じ、黒かばんは一人鼻歌まじりに笑う。


『たーのシー♪』









「ガアアアアッ!!」


縦横無尽に薙がれる爪。

もつれそうになる足を懸命に動かして避ける度に、地面に点々と赤い飛沫が飛んだ。

失血で薄れそうになる意識は、傷口の痛みとお守り石をつけた腕の焼けるような熱さが強引に覚醒させてくれる。

お守り石が触れる腕が熱い、ということは、確実に体が変異サンドスター・ロウに蝕まれている証だ。


「ハッ…ハァッ…」


開きっぱなしの口からは熱と共に荒い息が漏れる。

必死に動くリカオンの脳裏に蘇るのは、キンシコウが野生暴走に陥ったときの様子。

ヒグマに受けた傷がサンドスターの力で癒えた直後、彼女は我を失った。

それならば自分は、このお守り石を身につけたまま隠れてじっとしていれば、傷が癒えて野生暴走に陥っても、サンドスター・ロウが石に吸収され再び正気に戻れたのかもしれない。

だが。


(それじゃあまりにも…遅すぎる…)


傷が癒えるのを待っている内に、ヒグマやセルリアンが山頂に向かうかもしれない。

自分が正気に戻れるまで、どれぐらい時間を要するのかわからない。

――その間自分が、何をしでかすか…想像できない。


(これしか…ないんだ!)


選んだ道は、傷をおしての戦いの続行。

自分の得意な持久戦はもはや通用しない。

この傷ではやがて捉えられる。そもそも自分が自分を保っていられる時間は限られている。

タイミングを見計らえ。決めるなら――


「一撃…!」


拳を握るも、そう簡単にヒグマも隙を見せてはくれない。

攻撃は最大の防御とでも言うかのように攻撃の手を緩めないヒグマに、リカオンは一旦距離をおく。


「いっつ…」


足を止めると思い出したように傷口が痛む。

そしてそこを中心に、体が燃えるように熱くなっているのを感じる。

熱い。熱い。体内の血が沸き立っているようだ。

冷静になろうとして、ヒグマの姿を確認し、ハッとする。


(この距離――)


まずい。過去の自分と、同じ轍を踏んだ。

先ほど突進攻撃を受けてしまった時と、同じ光景だった。

気付いた時には、ヒグマは熊手を構え、姿勢を低くしようとしていて。


どうすればいい。


いつもの癖で動くよりも先に思案を始めてしまいそうになったリカオン。


『遅い!』


そんな彼女の頭にふいに蘇ったのは、他でもない、ヒグマからの言葉だった。







『あいててて…また負けた…』

『あのな…相手の動きをしっかり分析して考えてから動くのは、お前の良いところでもあるし弱点でもあるぞ』

『そう言われても…』

『チームを組んでの戦いなら存分にその力を発揮できるだろうけど、一対一だとそのままじゃうまくいかないこともある』




『相手の不意をつくことも大事だ。たまには考えなしに、正面から突っ込んでみろ。…あ、反撃には要注意だぞ』

『それ、めちゃくちゃリスク高いじゃないですかー!』







「…ははは…」


乾いた笑みがこぼれる。

ヒグマが突進の構えをとる。

リカオンも、姿勢を低くした。


「もう充分リスク、背負ってますもんね」



ヒグマが再び、爆発的に駆け出す。



「――ッ!!」


一瞬遅れて、リカオンも大地を蹴った。

いつの間にか出血の止まった傷は、もう痛いのか熱いのかわからない。

火がついたように火照る体からは、すでに野生解放しているにも関わらず、その限界を突き破らんとする力が沸き上がっている。


「…!」


正面からぶつかってくるという予期せぬリカオンの行動に、ヒグマは一瞬目を丸め、駆ける速度が緩まった。

その時。



カッ、と指向性を持った強烈な光が、ヒグマの顔だけを照らした。



「ゴアッ…!?」


目をくらませるヒグマ。

思わず止まる、足。

ブンブンと頭を振って顔を上げた彼女の目に飛び込んだのは。


茂みから飛び出し、真っ直ぐな光を放つ目をこちらに向けるボス2号の小さな姿と。





――すでに懐にまで飛び込んでいたリカオンが突き出した、拳だった。





『ヒグマさんね――神経が集中しているとかで…鼻が敏感なんですって』





「ああああアアアッ!!」


全力の右ストレートは、ものの見事にヒグマの顔の正面を打ち抜いた。


「ガウアアアアッ…!」


弱点の鼻を強打したヒグマは、悲鳴のような咆吼をあげ、思わず熊手を手放して両手で顔を覆う。

リカオンは地面に落ちた熊手を、思いっきり蹴り飛ばす。

不規則に跳ねながら、熊手は二人から離れた所に転がった。


「…ッ!!」


のけぞって体勢を崩したヒグマに飛びかかり、そのまま押し倒す。

リカオンは自分の腕につけていたお守り石付きのベルトを躊躇うことなく取り外し。

それを未だに鼻を覆って唸っているヒグマの腕へと巻き付けた。


石が青い光を放つ。


「――!?グアアアア!!」


耐えようのない鼻の痛みを凌ぐほどの腕の灼熱。

ヒグマは身を捻って暴れ、その灼熱の原因を取り除こうと足掻くも。

必死でしがみつくリカオンが、全身を使ってそれを阻止する。


「ゴフッ!グアアッ!!」


暴れるヒグマの怪力に、手の力だけでしがみついていたリカオンは引き剥がされそうになる。

だが。


「――…ガウウウウウ!!」


瞳を強烈な野生の炎で燃やし、リカオンはヒグマの体に食らいついた。

意地でも離れない。このお守り石は、絶対に死守する。




二匹の獣がもつれ合う声が、山の麓の森に何度も木霊した。










――それから、しばらくして。




「アラーイさーん、見つかったー?」


未だサンドスター・ロウを噴き出し続けている山頂では、三つ目の四神像が土の中から顔を出したのを見て、フェネックが手を止めて相方の進み具合を確認していた。

自分が最初の一つを見つけたしばらく後、アライグマも二つ目の四神像を発見し、嬉々としてそれを掘り出していた。

そして今、自分が三つ目のありかを発見。

後はこれを掘り出し、最後の一つを見つけるのみだ。


「なかなか見つからないのだー!」


少し離れた場所で、縞々の尻尾がぴこぴこと動く。

噴火の影響か、はたまた別の何かの影響か、どうやら山の形はこの地図に描かれたものと少し変化しているようだった。

そのせいで、四神像の場所にもずれが生じているようだ。

探す範囲を広めなければいけないかもしれない。


「もうちょっとがんばっててねー。これが掘り出せたら、私もそっち手伝うよー」

「フェネックの手を借りなくても、アライさんが最後の一つを見つけ出してみせるのだー!」


うおおお、と土を巻き上げるアライグマ。

フェネックもまだ半分以上が埋まったままになっている三つ目の像を掘り出そうと、穴掘りを再開する。


しかし、その手はすぐに止まった。


(あれ…?)


大きな耳が捉えた違和感。

砂漠の砂の中に潜む生き物の音も捉えるその耳に届くのは、アライグマのいる方角から聞こえる、土を掘り進む音。

アライグマが懸命に穴を掘っているので、聞こえて当然の音なのだが。


彼女が土を巻き上げるリズムと、聞こえてくる音のリズムが、合っていない。

正確に言えば、リズムが合っている音もあれば、合っていない音もある。

まるで、別の誰かが、土を掘り進んでいるような――


「――」


ハッと息を呑み、顔を上げる。

アライグマは宝探しに夢中で、周りなど見えてないし、聞こえていない。

無意識に、細い足が動き出す。


一直線にアライグマの元へ。走る。

アライグマは気付かない。

フェネックが自分の方へと走ってきていることに。

自分の背後の土が、ぼこっと盛り上がったことに。


「アライさん…!」


滅多に聞かないフェネックの焦燥を含んだ声に、アライグマがようやく視線をあげる。


「ふぇ?どうしたのだ、フェネッ――」


いきなり、突き飛ばされた。

不格好に倒れて、斜面を転げ落ちそうになったアライグマは、呻きながら立ち上がって振り返る。


「痛いのだ…!何するのだフェネック――」


文句を言う声が喉の奥に消えた。

――振り返った視線の先で、突如現れたセルリアンが振るった腕に、強くはじき飛ばされるフェネックの姿を見たから。


「フェネック!!」


なんで。どこから。いつの間に。

いろいろと訳がわからなくてパニック状態に陥るアライグマだったが、やらねばならぬことが一つあることだけはわかった。


一直線にフェネックの元へ。走る。

セルリアンの腕をかいくぐり、地面にぐったりと倒れ込んだフェネックを抱え上げ、セルリアンから距離をとる。


「フェネック!しっかりするのだ!フェネックゥ!!」


抱きかかえたままのフェネックと、爪の生えた腕をうねらせてゆったり動くセルリアンを交互に見ながら、アライグマは必死にフェネックに呼びかける。

再度フェネックに視線を落としたアライグマの背筋が凍り付いた。


クリーム色の前髪がじわりと紅く染まり、その額から血の筋がフェネックの白い肌の上を流れ落ちた。

よく見れば、右足の膝にも毛皮の下から血が滲んでいる。


土中から強襲した中型セルリアンの爪は、本来狙っていた標的がいなくなってしまったため空を裂いただけだったものの。

その腕はアライグマを庇ったフェネックの軽い体を易々とはじき、彼女は衝撃で山肌から飛び出した岩に額と右足を打ち付けてしまったのだ。


「フェ…フェネッ…ク…」


目を疑う光景に、フェネックを抱えたまま震えるアライグマ。

そんな彼女たちから離れたところで、ぼこ、ぼこ、と土が盛り上がり。

次から次へと土中に身を潜めていたセルリアン達が姿を現した。


「あ、あぁ…!」


後ずさろうとしたアライグマの後方でも、セルリアンが土の中から飛び出す。

リカオンによって地上のセルリアンが殲滅され、静けさを取り戻していた山頂は、見る間に再びセルリアンの巣窟と化してしまった。

小さく呻き、フェネックが目を開ける。


「う…ん」

「フェネック!し、しっかりするのだ!」


涙目のアライグマに顔をのぞき込まれ、フェネックはしばらくぼーっとしていたが。

痛んだ頭を反射的に手で押さえ、その手を汚した赤を見て、彼女は溜息交じりに笑った。


「あー…やってしまったねーアライさん…。どうやらやっぱり、罠が用意されてたみたいだよー」

「そ、そんなこと言ってる場合じゃないのだ…!どーするのだ…!どーしたらいいのだぁ…!!」


完全にセルリアンに取り囲まれてしまっている。

じわじわと距離をつめてくる彼らは、岩場の影に放置された四神の存在には気付いていない。

どうやら狙いは自分たちのようだ。

早く、逃げねば。

でも、どうやって。

四神はどうなる。


「――もう私のことはいいからさー…アライさんだけでも、四神像を持って逃げなよ」


ぐるぐると焦りが脳内を渦巻いていたアライグマの耳に、囁くようなフェネックの声が突き刺さった。


「…は?何、言ってるのだ…フェネック…」

「はい、これお守り石。アライさん、ツチノコにあげてたでしょー?わたしのやつあげるよー」


押しつけるように自分の持っていたお守り石を渡してくるフェネック。

アライグマは憤りの声を上げた。


「さっきから何言ってるのだフェネック!フェネックを置いて逃げるなんて、できるはずないのだ!!」

「…じゃあここで二人ともやられちゃっていいの?かばんさん達との約束は、どーなるのさ?」


真剣な声色、真剣な表情のフェネックに、アライグマは完全にのまれた。

固まるアライグマの腕から離れ、フェネックはおぼつかない足取りで立ち上がる。


「わたしはさーほら…ケガしちゃったし。どっちみちダメなんだよ。アライさんはまだ元気だからさ…。四像神を持って逃げることが出来たら、まだチャンスは残るでしょー?」


いつもと変わらぬ口調で話しながら、フェネックはよろよろと歩く。

一番近くまで迫っているセルリアンに、自分から接近していく。


「私が囮になってセルリアンを引きつけておくから、アライさんはうまいこと逃げ道見つけて、頑張って逃げてねー」




もう、アライグマの方は振り返らない。

彼女の姿を見てしまうと、きっと心細くなって、怖くなってしまうから。

自分よりも一回り、二回りは大きいセルリアン達を見上げ、フェネックは瞳に光を灯す。


――正直戦闘にはまったく自信が無い。

腕力も、武器も、何も持ち合わせていない。

強いてあげるならよく聞こえる耳と、サーバルほどはいかないが優れたジャンプ力を持っているぐらい。

この二つを駆使して攻撃を躱し続ければ、少しは時間がかせげるか――


『ギイイィ…』


一匹のセルリアンが、鈍い動作で腕を振り上げる。

頭を打ったダメージのせいか、その姿が二重、三重にダブって見えた。


(あー…これ、ちゃんとかわせるかなー…?)


目に入り込みそうになる血を手の甲で拭い、薄い微笑みをつくるフェネック。

そんな彼女に向かって、セルリアンは奇妙な腕を振り下ろした――




突然、襟元を後ろから引っ張られ、フェネックは尻餅をついて倒れた。




ガッ!!


重い音がして、フェネックは倒れた拍子に瞑ってしまっていた目を開く。




(――あぁ…だよねー…)




漏れてしまった溜息は、呆れからか、安堵からか。

フェネックの前で彼女を庇うようにして立ち、セルリアンの腕を両手でしっかり受け止めているのは、アライグマ。

その瞳はギラギラと野生の光を放っていて、ぐぬぬと歯を食いしばる口からは鋭い牙が覗いていた。


野生解放。

アライグマは本来の獣の力を引き出すこの能力が、あまり好きではなかった。

アライグマは元々気性の荒い動物。

臆病な自分を守るための防衛本能とも言われているそうだが、野生解放をすると、どうしてもこの獰猛な一面も引き出されてしまうようで。

頭の芯まで熱されたように熱い血が滾り、歯止めが利かなくなるというか、荒っぽさが際立ってしまうのだ。

だからアライグマは、滅多に野生解放を行ったことはなかった。

しかし――。


「フェネックの言うことは、いつも正しいけど…」


セルリアンの腕を掴む指に、ぎりっと力がこもる。


「今回ばかりは間違ってるのだ!アライさんは…アライさんは…!!」


――大事な友を助けるのに、躊躇う理由などあるはずがない。


「フェネックを囮に逃げるなんて、大反対なのだあああぁっ!!」


背負い投げ。


セルリアンの腕をぎっちりと掴み、アライグマはその大きな相手を強引に持ち上げると、思いっきり地面に叩きつけた。

弱点の石から落ちたセルリアンは、叩きつけられたと同時にぱっかーんと爆ぜた。


「がうううぅ~…!」


唸り声をあげて視線を走らせるアライグマ。

仲間がやられたことに反応し、そばにいたセルリアン達が動く。

振るわれた腕を、掴むことが得意な手でまたも器用にキャッチ。


「アライグマの力を――」


セルリアンをしっかり捕まえたまま、アライグマは身を捻り。


「なめるななのだ!!」


そのまま、別の個体に向かって投げつけた。

投げ飛ばされたセルリアンは、仲間にぶつかった衝撃で。

投げつけられたセルリアンは吹っ飛んで倒れたはずみで石が壊れて、二体同時に弾け飛んだ。


「…うひゃー…」


尻餅をついたまま立ち上がれず、フェネックはただただ感嘆の声を漏らす。

その背後に、一匹のサイズの大きいセルリアンが迫る。


「!!」


即座に気付き、アライグマは駆ける。

フェネックの脇を通り過ぎ、セルリアンの体にしがみつくと。


「のだああああー!」


一気によじ登り、背中の石を両手で掴んだ。

セルリアンが大きく身を揺すり、抵抗するものの。


「へっへっへ…残念なのだ。一度掴んだら、離してやらないのだ」


がっしりと掴んだ石から、アライグマは手を離さない。

掴んだまま足をかけ、思いっきり踏みつける。


「おぉりゃあああなのだああ!」


ビシッとアライグマの足の下で石がひび割れ、セルリアンの体が爆裂した。

不格好ながらもなんとか着地して、フェネックの側に寄るアライグマ。


「はい。お守り石は返すのだ。ケガをしたフェネックが持っておくのだ」

「あはは…すごいよーアライさーん」

「でも、これだけやってもまだまだいるのだ…」


牙を軋ませてアライグマは唸る。

アライグマの奮闘により数体消滅したものの、潜んでいたセルリアンの数はかなり多かったようで。

自分たちを囲む包囲網が、なかなか崩れてくれない。


(アライさんはリカオンみたいにハンターじゃないから、フェネックをうまく守りながら戦える自信はあまりないのだ…)


ぎらつく瞳できつくセルリアンを睨むアライグマ。

いつもの彼女の様子と異なるその横顔に、フェネックは何も言えず黙り込む。


(自信はなくても…)


背中を曲げ、アライグマは低く身構える。


「やるしかないのだ…!」


迷っている暇はない。早く片付けて、ケガを塞ぐ手段を考えないと。

フェネックを暴走など、させるものか。

掌に拳を打ち付け、怒声をあげる。


「おまえたち、かかってくるのだ!!アライさんがみーんなまとめてやっつけてやるのだぁ!!ふははははは!!」


不安を笑い飛ばし、精一杯強がる。

セルリアン達が爪を光らせ、不可思議な咆吼をあげた。


『ギイイイイイイ!!』『ギイイイッ』『ギイイイイー!!』




そして。






数体のセルリアンが、突如として粉みじんに、爆ぜた。






「――…へ…?」


思わず野生解放を止め、間抜けな声を漏らすアライグマの視線の先には。




「おいしいとこいただいて悪いけど――」




キラキラと舞うセルリアンの破片を熊手で振り払い。



「…後は私に任せとけ」






セルリアンハンター――ヒグマが、自分以上に強烈に瞳をぎらつかせ、虹色に煌めくサンドスターを纏って立っていた。



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