対 ラッキービースト②
『何度モエラーニナッタケド、ヨウヤクワカッタコトガアルンダ。――今コノパーク内ハ、サンドスター・ロウノ濃度ガ、サンドスターノ濃度ヨリモ大幅ニ高クナッテイルヨ』
かばんの前でぴょこぴょこと歩きながら語るボスを取り囲むようにして、フレンズ達は耳を傾けていた。
「さっきから言ってるサンドスター・ロウって、一体何なのだ?」
「んーたぶん、あの黒いサンドスターのことじゃないかなー」
アライグマが話についていけなくなると、フェネックが助け船を出す。
『ソレカラ、各ちほーニ散ラバッテイル、他ノラッキービースト達ニヨルト、「アリツカゲラ」ヤ「ヒグマ」ノヨウニ暴レ出シタフレンズハ、ドウヤラ他ニモイルミタイナンダ』
「そ、そんなぁ…!」
サーバルが悲しげな声をあげる。
「なんで、そんなことがわかるんですか?」
『ボク達ラッキービーストハ、離レテイテモツナガッテイルンダ。見タモノヲ教エアッタリ、言葉ヲ届ケタリデキルンダヨ』
かばんの質問に答えたボスは、目を虹色に光らせながら続けた。
『ゆきやまちほーデハ、源泉ノ様子ヲ見ニ行ッテイタ「ギンギツネ」ガ、温泉ヲ利用シニ来テイタフレンズニ噛ミツイタミタイダネ。みずべちほーデハ、PPPライブノ準備ヲシテイタ「マーゲイ」ガ、ダンスレッスン中ダッタPPPタチニ襲イカカッタラシイヨ』
淡々と述べられた現実に、一同は絶句する。
「ギンギツネさんと…マーゲイさんが…!?」
「そんな訳ないのだ!マーゲイは…ちょーっとおかしなところもあったけど…でも、二人ともとっても利口で、話が通じるフレンズだったのだ!そんなことするはずないのだ!」
「それは…ヒグマさんも同じです。アリツカゲラも…」
憤るアライグマだったが、リカオンの深刻な表情に口を閉ざした。
『コレハ、ゴク一部ノ事例ダヨ。キットラッキービーストタチガ知ラナイトコロデモ、同ジヨウナ被害ガ出テイルト思ワレルヨ。「ギンギツネ」ト「マーゲイ」ニツイテハ、「アリツカゲラ」同様ニ、被害ガ大キクナル前ニフレンズタチニヨッテ取リ押サエラレタミタイダネ』
ボスの目の虹色の輝きが消え、いつもの色に戻った。
『コンナ現象ハ初メテデ、対処法ガマニュアルニナイヨ。正直ボクニハドウスルコトモデキナイ』
「な、なんだか…気分が悪くなってきた…」
頭を抱えて、ソファに腰を下ろすキリン。
アリツカゲラに襲われて、心身共にぼろぼろの彼女には、あまりにも負担が大きすぎる話だった。
「…セルリアンはフレンズを襲うけど、命を奪うようなことはありませんでした。――フレンズではなくなってしまうから、同じようなことかもしれないけど…」
震える手でぎゅっと拳をにぎり、リカオンは呻るように言葉を紡ぐ。
「でも、ヒグマさんの行動――あれは完全に、命を奪おうとする攻撃でした。アリツカゲラの攻撃も、キリンを傷つけてる」
「フレンズ達は、力試しで勝負を挑むことはあっても、相手を傷つけるようなことは絶対に望まないはずだよ」
リカオンの後に続いたタイリクオオカミの言葉に、かばんはへいげんちほーのライオンやヘラジカたちを思い出した。
たしかに、あの戦いもそうだった。行き過ぎた戦いは避けていたはずだ。
「どうしてこんなことになっちゃったの…?どうしたら、みんなは元に戻るの?」
いつも明るく、笑顔を絶やさないサーバルが、泣きそうな声をこぼすのを見て、かばんは唇をきゅっと結んだ。
「ラッキーさん、図書館に行きましょう。このパークのことを詳しく知ってる博士さんと話せば、何かわかるかもしれない」
『今外ニ出ルノハ危ナイッテワカッテテモイクンダネ?』
頷くかばん。ボスはそれを見て、ロッジの入り口へとむかう。
『ワカッタヨ。権限ハ君ニアル。君ノ指示ニ従イ、行動ヲサポートスルヨ』
かばんは確かめるように鞄の肩紐を握りしめると、立ち上がってフレンズ達を振り返った。
「ボクは、ラッキーさんと一緒に図書館に行きます。キリンさんは具合が悪そうだから、キンシコウさんと同じように部屋で休んでてください。リカオンさん、オオカミさんは、けがをした二人の様子見をお願いします」
「オーダー、了解だよ」
「ついて行きたいけど…そっちは任せるよ」
快く了解してくれた二人に頷いて、サーバルに視線を向けようとしたかばんは、いつの間にか目の前にせまっていた彼女に思わず驚いた。
「う、うわぁ!?」
「わたしはかばんちゃんについて行くからね!」
眉をつり上げて、強く宣言するサーバル。
「で、でも…」
「今までずっとかばんちゃんと一緒に冒険してきたんだから!今更置いていったりなんか、しないでよね!危ないとこだってついて行くよ!」
さらに顔を近づけて迫るサーバルに、かばんはおもわず笑みをこぼした。
「ありがとう、サーバルちゃん」
ちょっと待つのだ、とアライグマが声を上げる。
「もちろんアライさんもついていくのだ!さっき宣言したとーり、アライさんはかばんさんに協力するのだ!いやだとは言わせないのだー!」
「アライさんが行くなら、わたしも行かないとねー」
かばんに詰め寄るアライグマの背後に、フェネックも歩み寄ってきた。
「アライさん一人だとー、暴走してかばんさんに迷惑かけそうだしねー」
「そんなことはしないのだー!」
腕をぶんぶん振って反論するアライグマの姿を見て、胸の奥に抱いていた緊張や不安が少しとけたのをかばんは感じた。
「それじゃあ…行きましょう」
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