第6話 冒険 Ⅰ

まっぶしいぃぃ!!!


そして久々の光合成!!!


俺、今、植物してるぞぉ!!!


三ヶ月がたって、俺はようやく例の縦穴住宅から抜け出した。


いや〜サモンのおっさんにはだいぶお世話になっちゃったな。


魔法なんかも教えてくれちゃって。


それに昔は魔王軍の幹部らしいじゃありませんか。

いっぱい聞きたくもない武勇伝もたくさん聞かせてくれたし。

なんでもうっかりゴブリンキングを巨躯で潰したり、ドラゴンを捕食したり、またうっかりオークキングを捕食したり、極め付けにうっかりと部下のスライムを取り込んじゃったりとやり放題やったらしい。


そんで勇者に巨体を削られてから隠居して今年で2134年目。


全快まであと325年いるって。

気の長いこった。

それでなぜ俺に魔法を教えてくれたかって?


そりゃ暇だからだよ。

ずっと何百年も同じところにいて、ずっと暇だったら発狂しそうになるでしょ?

そんなことないって?

お主幾つだよ。


とそんなこんなで色々教えてくれた。

才能がありふれる俺(自称)が弟子のこともあって、火以外の魔法はほとんどマスターした。


なんで火習わんかったって?

燃え移るに決まってるやろ!

あんなもんいらん。

男はクールだ。


まぁ実のところ、
白い炎は火じゃないって言われました。

光の塊だって、あれ。

名ずけて『雷火』!『ライトの塊』からの『ライカ』。


決して火が出せないからって拗ねてるわけじゃないんだからね!


まぁ、なぜ出て来たかというとサモンのおっさんには悪いけど、暗〜い洞窟の中はやっぱり光合成がしにくくてな。色々溜まってたんだよ。『雷火』は殺傷力が高すぎて怖いから使えないしね。そんなこんなでサモンさんーーもといスラ爺と呼ぶことにしたがーーには地面に一言断りを入れて風の魔法で脱出させてもらった。


もう貴様には用がない!

嘘です。スラ爺大好き。

さて、と

これからどうすっかな?

少しうろうろしてたら考えついた。

巣、作るか。

おそらくマンドレイク史上空前絶後の発想。

ジャスティスな考えのもと、俺、レイクは木を切ろうと頑張っていた。

ほら、俺植物だし?森林破壊じゃないよね?

むしろ俺が森林だ。森林保護だ。


そういえば俺生まれてから何も食べてなかったな。

必要ないのかな?

まぁ光合成して、水浴びてればいっか!

ザクザクと、風の魔法で木を切り倒していく。

コントロールが甘いせいで切り口が一箇所に集まらず木がボロボロになっていくけど、同胞だし許してくれるよね?

ようやく3本切り倒したところ、MPが枯渇した。

仕方ない、寝るか。

一瞬で意識が飛びましたとさ。



............


つん、、

また羽虫どもか。いい加減懲りないか。

...つんtっ

『おい!!!!!』

全力で念話飛ばしたった。

そしたら勢い余って頭のてっぺんの葉っぱが一枚落ちた。

OH、MY GOD

髪だけに。

なんつって

で、だ。

羽虫じゃなかった。

相手は急な念話に驚いたのか、思いっきり後ろに飛び跳ねていた。

まぁ、あれだ。

山猫だな。

どうやらさっきまで鼻で突かれていたみたいだ。

道理でなんか顔あたりに露があるわけだ。


あ、これ自前か。

とはいえ、この状況どうするんだ?

なんかすごいみてくるし、あの猫。

「なんか用?」

舐められないように強気に念話出してみる。

そしたらにゃ〜って返された。

もしかして念話ができないのかな?

そうだ。こういう時のために白い粉を用意してるんだった。

大丈夫。副作用はないよ。

幻覚についてはちょっとみえるかも知れないけど。

依存性はないはず。多分

実はこの粉、俺の根っこの部分から作ってるんだよね。ちょっと前に洞窟の中で合成ってスキル覚えちゃって、素材ないやん、って思ったけど、素材俺だった。なんでも根っことか、枝毛いじってたら勝手に習得しちゃってた。


それで体の一部を犠牲に発動すると色々と効果のある粉ができちゃうんだ。白い粉は無属性で、隷属の効果なんかがあったりする。

...依存性はないよ。

とりあえずネコちゃんに近づいてみる。

実は猫好きだから、そんなじっと見つめられたら無性にモフりたくなる。

一歩踏み込んだけど、反応なし。

続いて二歩、反応なし。三歩、反応なし。

四歩の時に、異変が起きたのだった。


ネコちゃん、一歩さがちゃった。

あれ?距離変わんないぞ?

俺一歩が短いんだからさ。やめてよねそういうの。

しばらく見つめ合いが続く。

よく逃げないね、この子。

どうも俺を食べようって感じってもないし。


やっぱ俺になんか用があるんかな。

ほら、俺、自分で言うのもなんやけど結構レアだぞ。魔力量多いらしいし。強いぞ?

魔法使えるマンドレイクとか多分俺だけやで。

.......


まだ譲らんのかこの子は。

根性あるな。俺も根ならあるけど。

不意に一歩、今度はネコちゃんの方から近づいてきた。

おっ?くるか。よしよし

俺に反応がないのをみてまた少しずつ近づいてきた。

おお、きてるきてる。

目の先まで来たネコちゃん。

ふん!この時を待っていたとばかり。

光速にも届きうる299792457 m/sの速さを持ってネコちゃんの鼻あたりに白い粉をかけた。

ビクビク横たわって悶えるネコちゃん。

俺はというと隣で見守っていた。


.........


ネコちゃんがお眠りになられてから約5時間といったところか。


唐突だけど、俺は今「そこらへんに落ちてるゴミ」のふりをしている。


なぜかって?必要なことだからだよ。

何も強敵と出会って死んだふりとかそういうんじゃなくて。ほら、欲しくなくてもなんかしてたらスキルが勝手に手に入ることってあるでしょ?前の合成なんかもそうだけど、あれだって暇で根っこの枝毛弄ってただけだし。

今回も似たようなもんだけど、ネコちゃんが横たわってる隣で仰向けになってたら本能的に分かってしまったんだ。

《擬態》習得しましたってさ。また謎習得か、と思っていたら続きがあった。

『《擬態》LV1【そこらへんに落ちてるゴミ】習得成功』

『これにより《擬態》LV1【そこらへんに落ちてるゴミ】常時発動します。』

ん?今なんて??

常時発動ってあれ?まじで?俺今見た目そこらへんに落ちてるゴミってこと?

魔法で水を出して自分の姿を確認してみたけど、元から廃棄されてる木の一部のような見た目からさらにゴミ要素が入って、目も当てられない状態になってた。

なんやこれ!!ゴミスキルやな!!ゴミすぎ!!

俺ショック。

これネコちゃん起きたらどうしよ。

ほら、俺今ゴミだし。

なんかこの姿みられたくないな。

どうしよ!!

ちょっと焦ってきた。

ここは冷静に考えるんや。

それでもいい案が思いつかず、30分ぐらい時間が経った頃


擬態のレベルが上がったのを実感した。

ん?レベルアップ??


そっか!と名案が浮かぶ俺。

レベルを上げて他のものに擬態したらいいじゃないか。俺やっぱ天才。

そんなこんなでかれこれ三時間ぐらいゴミの真似してる。

そうそう今【そこらへんに落ちてるゴミ】から【粗大ゴミ】にまでレベル上がったよ。

相変わらずゴミだけど。

とはいえだいぶ前のサイズよりかなり大きくなってる。


前の身長がりんご7個分だとしたら、今は10歳ぐらいの少年の身長になってるはずだ。

それぐらいでかいゴミだ。今は。

ゴミを生み出さない分、社会のゴミよりはましだがな。

おっと、またレベルアップしたぞ。

なんだなんだ?

『レベル規定条件が満たされました。自由擬態が使用可能となります。暫定常時発動の対象を記憶から読み取ります。』

ついにやったか。

自由ってことは俺の意思で変えれるってことだよな?

そんで記憶から擬態できるってことは理想なやつになれるってことか!

これは嬉しい!

ゴミスキルとか言ってごめんな!!

神スキルだよ!

擬態で髪も生えるじゃん!やったね!


早速理想なイケメンになれるかチャレンジしてみた。

この世界に人間がいるかどうかはまだわからないけど、マンドレイクの姿に戻るより、なんとなく人間の姿に戻りたかった。


そうしてできたのが俺、金髪美少年第一号!!

実際水面を覗き込んで見ると、黒髪に幼い顔立ち、病弱なまでに白い肌、、って、、前世の俺の少年バージョンじゃないか。

金髪でもなんでもないじゃん。


まぁ、これはこれで悪くはないけど。

少し肌が綺麗すぎるような気もしたが、まぁ子供ってこんなもんかな。最大レベルが18歳の俺がいうセリフでもないけど。


記憶の中からコピーしてきたはずだし、俺が小さかった頃はこんな感じだったような気もする。

これで人に見られても大丈夫だぜ、擬態様々だね!


この姿で魔法を使ってみたが、特に問題はなかったように思う。むしろ前よりも射程が上がったぐらいだ。

少し身体を動かして、徐々に慣れていく。

とはいえ元人間でマンドレイクも人間に似てる形だったし、動きに問題はないけどね。

ただし、後ろからただならぬ気配を感じる。

「貴様、我が子に何をした!!」

急に飛んできた強い念話に少し気圧される。

上からすごいプレッシャーが圧しかかる。

ゆっくりと後ろを振り向くと、なんと!目の前には今の俺よりも大きいネコちゃn、いやこれはもうどう見ても猫ではないな。

虎かな?おお、なんか光りだしたし。

「貴様、人間ではないな。何者だ!!」

相変わらずプレッシャーがすごい。

だけどなぜか怖くない。

それにいいこと聞いたね。やっぱこの世界、人間いたね。

「ほう?我の威嚇に反応すら示さんとは...なんという...」

「あの、どちら様ですか?」

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