楽園67   漂流…?

何日間は晴れた日が続いた。六人は畑仕事や砦や町の修繕、愛ランド号で沖合で漁などをした。

巨大なバトルをした後は一ヶ月は静かな日々が続いていたので、この平和がずっと続いてほしいと思った。

「古代獣たちの襲撃もあれからなく、平和だよな」

「ああ、王国もパワーアップしたし、料理の調味料もバリエーションアップしたから、麗子の料理もたくさん出来るって喜んでいたよ」

「カトレアさんが、子供たちに教えてあげたってゲームも楽しかったよな」

「そうだな。俺も新バージョン考えたぜ」

「どんなんだ」

拓斗、博樹、翔は他愛もない男子トークをしつつ、修繕や農作業に精を出していた。

だが、最近だが拓斗は何かを感じていた。

それは、

「島が移動しているかもしれない?」

「拓斗、あんた、何を馬鹿なことをいっているの…島が動くなんてありえないわ」

「そうだ。昔流行ったカードゲームのモンスターに亀と島が合体したやつがいたけど、VRゲームや映画の世界じゃあるまいのに」

はるみや他の皆も拓斗の思い過ごしみたく言う。拓斗は一冊のノートを見した。

そこには、スケッチがされていた。

「ここ数日、いや、この島に来てから星の位置、風の吹く場所、波の動きを簡易的だけどスケッチしていたんだ。下手くそだけど」

皆がそれを見て、

「拓斗、すっげーよ」

「わかりやすくていいわ」

「私と夜空を見たあの夜からずっとしていたのね。凄いわ」

そこで、麗子がそれを広場にプレゼンみたく棒を使って巨大な図にした。

「私たちの王国がここ、アイランド号でやってきたあの日から、すでに、拓斗君の記録では二ヶ月は立っているけど、この島には私たち以外の人間はいない。人がいた痕跡は十六世紀の大航海時代のキャプテンタックとケン、ケイトの三人の船長が海賊たちを率いて根城にしようとした。沼にある難破船にはその海賊たちの遺体が無数に転がっている。これが沼ね」

「一番始めにこの王国である島を見つけたのは、彼らだった。やがて、四百年経って二十世紀に入ると、田端さんたち日本軍がこの島に前線基地を作り戦った。それから、俺たちが王国を造るまでは誰もいない」

「でも、地図に載らない島でも、私と拓斗は紫電改で飛んで見た時に、ここはかなり大きな島よ。そんな島がずっと見つからないかしら」

「何より、古代獣たちだよ。あんな怪獣たちがいきなり甦って襲ってくるなんて映画や漫画じゃあるまいのに」

「たしかにな。あれは驚いたな」

博樹と拓斗が雑談すると、カトレアが注意する。

「こらこら、問題はそこじゃないでしょうが、まず、この王国が漂流する島なのかが問題でしょう」

「はーい」

すると拓斗があることを思い出した。

「そうだ。古代獣たちだけど、襲ってきた彼らには大きな違いがあるんだ」

拓斗はノートに書いた記録を皆に見せた。

「マンモス、サーベルタイガー、ダイアウルフ、ティラノサウルスにアロサウル、全て生息していた時代も場所もバラバラなんだ。ギガノトサウルスも」

「ええ?」

ティラノサウルスなら白亜紀後期の北アメリカ大陸、アロサウルスは中生代ジュラ紀の北アメリカ、ギガノトサウルスは白亜紀後期の南米のアルゼンチンと多少の誤差はあるが、しかし、生息していた時代は全部違う。人間の世界で言えば令和、平成、昭和、大正なんかではない。

江戸時代、安土桃山時代、戦国、室町、南北朝、鎌倉、平安のようなものだ。

「僕たちと、田端さんの時代、キャプテンタックたち、藤原定家様と式子内親王様の時代みたいなものなんだ」

「この島自体が不思議だな。これからもま何か起こるんだろうか?」

「やだ。また、トラブルが起こるの?」

拓斗、博樹にはるみは怖がる。

もう、すでにこの楽園ごと時の流れに漂流しているのかと感じた。








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