楽園61    女神降臨

凶暴な古代生物たちに囲まれ、アイランド号に逃げようにも脱出路のロープウェイや地下道の前にはサーベルタイガーが、森にはダイアウルフが立ちはだかり袋の鼠になってしまった。

「ちくしょう。苦労して作ったのに使えないなんて」

博樹が悔しがる。

「ゲームオーバーなんて嫌」

カトレアが号泣する。

「拓斗、はるみさん、ごめん王国を守れなかった」

翔が不在の二人に詫びるが、その中で麗子は違っていた。

「博樹、翔、カトレア、全員三つ数えるわ。そしたら、温泉に向かってよけて、体をかがめて」

麗子が言うと、三人は「え?」となるが、切羽詰まった状況なので言うとおりにすることにした。

サーベルタイガーが、“ガアッ”と口を開けて襲いかかってきた。そして、ダイアウルフも“グガッ”と全身に力を入れて飛び跳ねた。四人で温泉の方に向かってよけた。

“ドッカン”と二体がぶっつかりあい、麗子が下に置いてあった赤い炎が灯る松明の上に二匹が転げ落ちた。

“ギャアア”

物凄い悲鳴がする。二匹は松明を上に落ちて炎に焼かれ、温泉に飛び込んだ。

四人はそのスキにロープウェイに乗りアイランド号まで一直線に向かう。

船のマストに着いた時、誰もが心臓がバクバクしていた。

「すごかったな」

「ああ、映画のワンシーンみたいだったよ。麗子さんのおかげだよ。ありがとうございます」

「あら、持っていた武器で出来ることをしただけよ。三人とも怪我はない?」

女性リーダーは、皆の安否確認をする。

「うわ~ん、怖かったよ」

カトレアが麗子に泣きながら抱き着いた。麗子と翔は彼女を慰める。

「よしよし、カトレアもよくがんばったわ。えらいえらい」

「カトレアさんも無事でよかった。さて、はるみさんと拓斗は大丈夫だろうか」

大乱闘になって、ティラノサウルスやサーベルタイガーたちをやっつけたが二人はまだ基地跡に探索に行っている。アイランド号にいることなんてわからない。何か知らせる方法はないかと考えていた時、ギガノトサウルスが雄叫びをあげて砂浜を突進してきた。

「グギャアー!!!」

四人は船の錨を揚げた。

「来やがった」

「みんな、沖から戦いましょう。いくら巨体でも海流に逆らうなんて出来ないわ」

沖合まで逃れたがギガノトサウルスは血眼で追いかけてくる。

「東京タワーやスカイツリーほどはないけど、街中の小さなマンション一棟ぐらいでかいわ」

「一難去ってまた一難かよ。ちくしょう」

波をかき分けアイランド号に迫るギガノトサウルス、船に鋭い牙や爪をたてようとした時だった…真空を切るような音がした。

“ドカーン”

ギガノトサウルスの頭上で赤い閃光が炸裂した。

「ギャアアァ!」

ギガノトサウルスはそのまま波間に消えていく。

皆は空を見るとこう言った。

「女神が舞い降りた」

「助かったわ。女神様」

そこには、紫電改に乗ったはるみがいた。

はるみが風防を開けて、グーサインを皆に贈った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る