楽園9  それぞれの歩く道

夜が明けた。

南国の朝日は少し暑いが、どこか子供の頃の夏休みに近所の神社や公園でしていたラジオ体操を思い出す。六人は砂浜に立ち、水平線を眺めていた。

なぜ、ここに流れ着いたのか、自分たちの元の生活には戻れるのか、何よりこの楽園の正体がわからない。

そんな風に考えていた皆は、あることを決めた。

「夜になるまで、この楽園を調べること」

楽園が島だと思っているが、もしかしたら大陸かもしれない。そして、島には自分たち以外の人間がいるかもしれない。

しかし、巨大なジャングルが六人の前に立ちふさがる。どうやって突破するのか難問だったが、翔があることに気付いた。

「あそこに小川が流れているが、川の水源地に向かってみるのはどうだろうか?もしかしたら、町や村があるかもしれない」

しかし、こんな南洋を舞台にした未開の島、もしくは大陸に人がいても、言語のわからい人間たちだったらどうする。名作ビルマの竪琴の主人公水島上等兵が助けてもらったような原住民だったら、襲われるかもしれない。

「万が一のために、俺たちのこの船を沖に逃げられるように修理しておいた方が良くないか?」

博樹は自分たちが時間を過ごす船をちゃんと修理していつでも使えるようにした方がいいと言う。

麗子や拓斗も博樹に賛同するが、はるみとカトレアはいずれにしても探検するにも船の修理にしても道具や知識、技術がないために一旦、船内を探して道具や地図、通信機、薬などを整理してどちらも出来るようにした方がいいと言った。

「はるみさんの言うこと一理あるしな┅」

拓斗が両手を後ろに回すと何痛みを感じた。どうやら、何かが手に当たった。

木製の箱だったが、映画や小説ならこういうものは中身が、

「道具箱だ」

トンカチやペンチ、釘などが入った道具箱だった。これなら、船の修理や新しい道具や武器などを作ることも出来る。

「やったわ。これなら両方叶って一石二鳥ね」

麗子は喜ぶ。他の皆も同じだった。

早速、拓斗は翔と近くの椰子の木を切りに行く。

拓斗が斧で木を切る。倒れたら、翔がノコギリで補強する。博樹とはるみ、カトレアは船の壊れた壁や床を直し行く。麗子は、破れた帆をタオビニールシートやタオルで修繕していく。

半日かけて、「出来た」

皆は一緒に叫んだ。暑い中で一緒に作業して一つの目的である船を修理した。これなら、脱出も探検も両方が可能だからだ。

「行くぞ」

博樹の音頭を取り、全員で船を浜から海に入れる。

元々近かったのが幸いしたが、船を海に、波に乗せることが出来た。

そしたら、

「浮いたわ」

「よっしゃ!!」

「やったわね」

「まるで、ノアと家族になったようだ」

みんなで大喜びした。素人の自分たちで協力しあい、船を修理出来たのだ。やり遂げたのだと胸を張って言える世界中のみんなに伝えたかった。

六人は、船の櫓を持ち、マストの帆を高く掲げた。

「この船に名前付けないか?せっかく、海を渡れるようにしたんだし」

「そうだな」

「かっこいい名前がいいわ」

「かわいいのもいいわ」

それぞれの案を出し合う六人。まるで子供の名付けの話し合いみたいだ。

そして、最終的には船の名前は「トロピカルアイランド」に決まった。

やはり、南国を冒険する船にふさわしい名前でなくてはと翔が考えたのが採用された。

何より、南国の楽園でみんなが出逢えたから、それを記念して考えたのだ。

しかし、そのまま大海原に出るのは危険なのでいったん、岸に近い場所を航行するか、川を下り水源地に行くか話し合った。

すると拓斗があることを話した。

「くじ引きでパートナーを決めると言うのはどうだろう」

おお、いいね。

近くに落ちていた枝をくじにしてそれぞれのパートナーを決めた。赤、青、緑のテープを巻き、同じ色を引いた者同士がパートナーを組む。

「行くよ」

「オッケー」

いっせいのとくじを引いた。






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