第3話 宿命
瞼を閉じれば青いステータスウィンドーが開き、自分の状態が分かる。
今まで見るのが嫌だった。
だって俺は最低最弱の小作人。
こんなの見れば鬱になっちまう。
職業:小作人の下にミッションという項目がある。
人生の目標みたいなやつだ。
ミッションは選んだ職業によって異なり、例えば騎士だったら『王に仕え、民を苦しめる魔王を倒せ』とか、鍛冶屋なら『世界一の名工を目指せ』だったりする。
俺のミッションは――
領主に仕え、年貢を納めろ、だ。
なんだよ、それ。
痛いギャクかよ。
だが俺は自分に起きた超常現象を確かめるべく、ステータスを覗いた。
ネーム:アキヒコ
職業:小作人
ミッション:領主に仕え、年貢を納めろ
レベル:9999
HP:9999999999999999999
MP:0
腕力:9999999999999999999
素早さ:9999999999999999999
防御力:9999999999999999999
器用さ:9999999999999999999
うんのよさ:128
スキル:マッハ開墾、新種開発、豊作祈願、雨乞い、肥料生成、年貢をちょろまかす、一揆発動……
小作人は運が低いようだ。
それよか気づかなかった。
スキルがめちゃくちゃある。
なんだよ。雨乞いや豊作祈願なんてのまであるじゃねぇか。もし気づいてたら、今頃こんな目に合わずに済んだのに……
いや、違う。
これでいい。
俺は領主を睨めつけた。
領主ののどがゴクリとなる。
「ふふふ、所詮てめぇは小作人だ。魔法を覚えることすらできない。ワシには転移魔法がある。てめぇなんざ敵じゃねぇが、お上にいいつけてやる。圧倒的兵力でキサマの一揆騒動を粉砕してやるぜ!」
奴が転移魔法を詠唱するよりも早く、俺はスキル『マッハ開墾』を発動させる。
俺の右手に光のクワが現れた。
「償え! てめぇが今まで農民にやってきた報いを与えてやる。てめぇを倒し、豚のように丸々太ったてめぇの肉を、畑の肥料にしてやる!」
俺はクワで滅多斬りにしてやった。
「いでえぇえええ! な、なんでワシ程の実力者がこんな小汚い小作人なんかにぃぃぃ!! だがな、アキヒコ。てめぇはやっちまったんだ。てめぇは主に刃を向けた。もはや一生逃げ続けなければならない。てめぇの悔しそうに泣き叫ぶ哀れな顔が目に浮かぶぜ」
最後にそう捨て台詞を残し、領主は消滅した。細切れになった肉片は、欠片すら残らなかった。
「死んでようやく役に立つと思ったが、奴は畑からも必要とされなかったか……」
この様子を見ていた村人達は言葉すら忘れ、驚いていた。
だがすぐに状況を飲み込む。
村人の一人が叫んだ。
「た、大変だ。アキヒコがとんでもないことを仕出かしちまった。お、俺は関係ないぞ。これから国の偉い奴らが騎士とか連れてやってくるが、俺は無関係だ」
ローザが俺の手をとって言った。
「逃げましょう、アキヒコ。あなたは私を助けてくれた。私はあなたを裏切らない」
俺は静かに答えた。
「逃げる必要なんてないさ。俺のミッションは小作人。領主の為に田畑を耕すしかできない男。
だが領主を選ぶことはできる。
クソのような領主がやって来たら、すべて畑の餌にしてやるだけだ」
そうだ。
俺は小作人。
畑を借りて年貢を納めるのが俺の宿命。
だから俺が変えてやる。
俺が仕えてやってもいいと思える領主が来るまで俺は逃げも隠れもしない。すべて返り討ちにするだけだ。
農民は俺が守る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます