大将を助けよう? 大将が助けよう!
けものフレンズ大好き
大将を助けよう? 大将が助けよう!
52回にもわたる死闘(?)を繰り広げてきたライオンちゃんとヘラジカちゃん。
しかし52回目の引き分けで2人は和解し、お友達になりました。
さらに黒セルリアンも倒し、ライオンちゃんも気が抜けたのか、以前のように威厳のある態度はほとんど取らなくなりました。
そんな平和で気の抜けた生活が続いたある日……。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ねーねー」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あのさー」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「2人ともさっきからなんで私の前うろうろしてるの?」
ここはお城のライオンちゃんの部屋――。
何をするでもなくうろうろしているオーロックスちゃんとオリックスちゃんに、ライオンちゃんは耐えきれずに言いました。
「え、いや……」
「なんでもないです!」
2人はそそくさと部屋を出て行きました。
「なんなんだろ?」
「……というわけだ」
「はあ……」
オーロックスちゃんはその時たまたまへいげんちほーを歩いていたかばんちゃんを捕まえ、強引に話を聞かせます。
「えっと……」
しかし、かばんちゃんは話を聞いても一体何が問題か分かりません。
それは一緒にいたサーバルちゃんも同じです。
「結局オーロックス達は何が言いたいのー?」
「だから言ってるだろう! 大将がここ最近、すごく大人しくなって優しくなられたって!」
うんうんとオリックスちゃんも頷きます。
「あの、だからそれが何の問題が……」
「大将は変わってしまった。以前なら会っただけでも身震いがし、敵になった瞬間倒されるんじゃないかという怖さがあった」
「そういえば、最初に会った頃のライオンは、すっごく怖かったね」
「だが今の大将にはその頃の面影が全然ない。俺は心配なんだ。大将が大将が……」
オーロクスちゃんは一呼吸置いてから、
「病気なんじゃないかって!」
心の底から言いました。
「えー、ラオイン病気なの!?」
「違うよサーバルちゃん。オーロックスさん、別にライオンさんは病気なんかじゃありませんよ。ただ気が抜けてるだけです。黒セルリアンの時だって活躍したでしょ?」
「でも……」
オーロックスちゃんは納得してない様子。
それはオリックスちゃんも同様でした。
「……分かりました。こうなったらぼくが直接ライオンさんに話を聞きます」
「たのむぞかばん!」
こうしてかばんちゃんは、健康そのもののライオンちゃんと会うことになりました。
「……と、こういうわけなんです」
「あー、それであの2人が心配してうろちょろしてたんだねー」
「だからライオンが前みたいに偉そーにすれば解決だよ!」
「うーん……」
しかしライオンちゃんはあまり乗り気ではありません。
「駄目ですか?」
「いやあ、以前みたいに気を張ってると疲れるし、微妙にサンドスターも消耗するんだよねー。ねーねー、また君が何か良いアイディア考えてよ」
「またですかぁ!?」
「私と君の仲じゃーん」
ライオンちゃんは馴れ馴れしくかばんちゃんにしなだれかかります。
「カバンガンバレカバンガンバレ」
「ラッキーさんまで……」
「かばんちゃんならできるよ!」
「……はあ」
こうしてかばんちゃんによる、「ライオンちゃん本当に元気だよ」作戦は実行されることになりました。
「ほら見て下さい、ライオンさんはこんなに元気ですよ!」
「おりゃ!」
ライオンちゃんはその辺に落ちていた岩を適当に持ち上げて投げ、健康をアピールします。
しかし――。
「それぐらい弱いサーバルでも出来るし……」
「むしろ以前より持ち上げられていないような……」
「ひどーい!」
オーロックスちゃんもオリックスちゃんも納得してくれません。
「ほらこんなに早く走れますよ!」
「わははは……」
ライオンちゃん、「なんでヘラジカは毎日こんな生活が出来るんだろう……」と、半分尊敬し、半分呆れながらそのあたりを全力で走り回ります。
けれど――。
「大将ならそれぐらい病気でも出来るし……」
「むしろ以前より遅いないような……」
「いや、私以前から滅多に長時間走らないよ?」
ライオンちゃん本人の抗議も虚しく、2人とも納得していない様子。
それから色々試してみましたが全部駄目で、それどころか「ひょっとしたら死んじゃうかも」と、余計心配します。
「……もう病人でいいよ。疲れた……」
「ライオンさん……」
「おい!」
不意に強い調子で声がかけられます。
「あれ、ヒグマさん?」
「ここにセルリアンがいなかったか!? かなり大型で危険な奴だからここまで追ってきたんだが……」
「いや、見てな――」
そう言おうとした瞬間、すさまじい勢いでかばんちゃんの目の前の何かが通り過ぎます。
「オーロックス! リカオン!」
かばんちゃんより動体視力が優れているサーバルちゃんは、すぐにそれが何かを理解します。
誰がやったのかは明らかでした。
「ちっこんな所に――」
「・・・・・・」
構えたヒグマちゃんの横を、無言でライオンちゃんが通り過ぎます。
その目は完全に野性解放したときの色をしていました。
「私の部下に手を出して――」
ライオンちゃんが右手を振り上げ、
「――ただで済むと思ってんのか!」
思い切り振り下ろします。
セルリアンは石どころか身体ごと真っ二つにされ、一瞬で消え去りました。
「オーロックス、オリックス!」
ライオンちゃんはすぐに2人に駆け寄ります。
幸いにも大きな怪我も無く、2人は無事でした。
「やっぱり大将は強いですね……。俺勘違いしてました」
「すみません」
2人は素直に自分達の間違いを認めます。
「そうそう、これが普段の私なの。だから――」
「でも大将部屋汚いから片付けるように言ったら、最近調悪いから無理って……」
「・・・・・・え?」
「ラ~イ~オ~ン~?」
どうやら誤解されたのは、ライオンちゃん自身に理由があったようです。
「いや~メンゴメンゴ、許してちょ?」
「もう!」
「ライオンさん!」
「もうものぐさはこりごりだよ~」
「ん?」
完全に蚊帳の外のヒグマちゃんは呆気にとられます。
そうそうヒグマちゃんと言えば――
「今日も平和だなー」
ツキノワグマちゃんは相変わらずでした。
おしまい
大将を助けよう? 大将が助けよう! けものフレンズ大好き @zvonimir1968
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