PIECE-2

「ねぇ。タマちゃん、むっちゃん、わびちゃん」


 呼び掛けると、見事に三人揃ってこっちを見た。


 全く、三人ともすっかり素直になったもんだ。


「恋だねぇ」


 僕の言葉を受けて、またしても三人揃って慌て始めたから可笑しくて堪らなかった。


「呼ばれたら振り返るだろうが!!」

「……そ、そうだ」

「キュウ、一体何の用だ?」


 希咲ちゃんに、小夜ちゃん、美月ちゃんに見せてあげたいよ。

 多分、この三人のこういう照れてるとこ、彼女たちはあんまり見る機会がないだろうから。


「ねぇ、みんな彼女が出来たのに戻らないの?魔界あっち

「うっしーとサトちゃんも帰るなら僕のお金使ったっていいからさ、みんな仲良く帰りなよ?」

「フラちゃんとシルフも、こっちの世界じゃ生きにくそうだからタマちゃん連れてってあげてよ」


 最近少し思うんだよ。

 互いに近付き過ぎたなぁってね。


「フラちゃんとシルフもってなると少し足りないかなぁ……調整セーブしてたけど、テレビ出演とか受けて稼ごうか」


 みんな、気のいい奴らだから。


「僕たちと過ごすうちに不老になるとはいえ、不死じゃないんだからね?」


 こうでも言わなきゃ、戻らないでしょ。


「彼女たち、魔界の方がこっちより生きやすくなってくる頃だよ」


 僕を待たなくていいんだよ。


「だから、この前は誰か召喚してって頼んだけど、あれやっぱりナシね。タマちゃん」


 一番に考えなきゃいけないことは僕のことじゃないんだから。


「キュウ、お前……」


 タマちゃんは勘が鋭くなった。

 だからもう、素質十分だよ。


「早く魔界王になりなよ、船長キャプテン


「だから!それ!小夜の漫画じゃねぇか!」


 みんなが戻ったら、barでもやっていけばいい。でも、シャ・クーラの命日――その日がきたらまた僕は貧血で倒れてしまうよなぁ。

 店は一日たりとも閉めたくないから、何かいい方法を考えなきゃね。


 ……もうすぐ、またその日がやってくる。


 彼女の命日になると、なぜか朝からクリスタルの放つ光がいつもより強い。

「サクラ」が関係ないならば、次は命日にかけてみようか。


「……僕も君に贈りたいよ」


 バケツいっぱいに咲き誇る高貴な薔薇の花。

 一輪手に取り、唇を寄せた。

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