動け観覧車

けものフレンズ大好き

動け観覧車

 フレンズ達みんなの協力でついに倒した黒セルリアン。

 ボスも小さくなった上にサーバルちゃんに投げ捨てられてしまいましたが、その後無事見つかり、みんなで全てが解決したことを喜んでいます。


 その中心には常にかばんちゃん。


 かばんちゃんがいなければ、黒セルリアンが倒せなかったことを、みんな知っていました。

 

 この2人も、最初は素直に感謝していたのですが……。


「助手」

「なんです博士?」

「最近我々の扱いが悪くなっている気がするのです」

「そうですね、かばんが来てからというもの、かばんが頼られることが増えた気がするのです。でも博士は楽になって良かったと思っていたのでは?」

「そうです。ですがあまり舐められるとおさとしての立場がないのです。そろそろ我々の力を見せてやるのです」

「同感です博士。我々の偉大さをフレンズ達に思い知らせてやるのです」


 そして2人は、誰に知られることもなくその場を後にしました……。


 所変わってゆうえんち――


「これです助手」

「これですか博士」

 2人は巨大な鉄の輪っかの建造物――観覧者の前にいました。

「このアトラクションを動かせば、より尊敬の目で見るられようになること間違いなしです」

「そうですね博士、これが動き出してびっくりしないフレンズはいません。しかしどうやって?」

「実は事前に図書館で、この観覧車について色々調べていたのです。とりあえずスイッチさえ入れれば、簡単に動くはずなのです。ちょいです」

「ちょいちょいですね博士。それで、そのスイッチとは?」

「人生そこまで甘くないのですよ助手」

「世知辛いですね博士」

 

 それから2人は、観覧車をてっぺんから順に調べて行きます。

 使っているのが人間なら地面の方にあると分かるものですが、飛べるのが当然の2人はそこまで考えが至りませんでした。


「博士、これではないですか?」

 助手があるゴンドラのスイッチ……ではなく、嵌まっていたボルトを博士に見せます。

「……それっぽいですね。とりあえず押してみましょう」

 当然押してどうなるものでもありません。

 あげくには押すだけでなく引いてみたり、回してみたりします。

 小柄な博士達ですが、力はかなりあり、ボルトは少し緩んでしまいました。

「……これでは無さそうですね」

「残念です」

 散々いじくり倒してから、ようやく博士と助手は諦めます。


 それからゴンドラを一つづつ調べて行きましたが、言うまでもなくスイッチは見つかりません。

 地面に到着した頃には日も暮れ、2人ともすっかり疲れ果ててしまいました。


「助手、流石に今日はもう諦めた方が良いと思うのです」

「同感です博士。そもそも動かすこと自体諦めた方が良い気もしますが……」


「ねーなにやってんのー!?」


『お前は……』

 声がした方を振り向くと、そこには遊ぶことの天才、カワウソちゃんがいました。

 博士達が飛んでいるのを遠くから見て面白そうだったから、とりあえず近づいてみたのでした。

「帰るのです、今はお前に用はないのです」

「我々は疲れているのです」

「ふーん、でもこれ面白そうだね!」

 カワウソちゃんは深く考えずに、観覧車の操作盤あたりをベタベタと触りまくります。

「わーい! たーのしー!」

「やめるのです!」

「壊れたらどうするのです!」

 博士と助手は慌てて止めようとします。

 しかし、カワウソちゃんは構わずさわりまくります。

「壊れたらまたビーバーやプレーリーに直して貰ったらいいんじゃん」

「あの2人でも機械は直せないのです」

「フレンズには向き不向きがあるのです」

「ふーん。あれ、これなんだろ?」

 カワウソちゃんは本当に、びっくりするほど何も考えずに、目の前にあったボタンを押してみます。


 すると――。


「動きましたね、助手」

「動きましたね、博士」


 それは観覧車のスイッチで、今までうんともすんとも言わなかった観覧車が、ゆっくりと回転を始めました。

 

 博士は無言でカワウソを押しのけ、もう一度スイッチを押します。

 観覧車は動きを徐々に遅くし、やがて止まりました。


「あれー、もう止めちゃうの?」

「カワウソ」

「なーにー?」

「乗るのは構わないです。ただこのスイッチのことは忘れるのです。そしてこれを動かしたのは私と助手なのです」

「そうなの!?」

 あまり深く考えないカワウソちゃんは、簡単に博士の言葉を信じます。

「そうです、我々の力で動かしたのです。お前がスイッチを押したから動いたように見えましたが、それはたまたまなのです」

 助手も博士の意図を察し、口裏を合わせました。

「へーすごーい! みんなに言って良い?」

「好きにするといいのです。我々は寛大なので」

「寛大なので」

 そう言って再びスイッチを入れ、観覧車を動かします。

 こうなるとカワウソちゃんも観覧車に夢中で、誰が動かしたなどどうでも良くなります。


「博士……」

「嘘も方便なのです」

「賢さが溢れますね」

「さて、かばんの様子を見に行くのです。今は何も考えず、お腹を壊すまで料理を食べたいのです」

「奇遇ですね。私も同じです」

「・・・・・・」

「・・・・・・」


 そして1ヶ月後――


「さ、さ、さ、サーバルちゃんこれ大丈夫?」

「へーきへーき、博士が前に調整したんだって! これもあとらくしょん? らしいよ」


 がっしゃーん!


                                 おしまい

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動け観覧車 けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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