7#風船の謎

 ばぅっ!ばぅっ!ばぅっ!ばぅっ!


 ポインター犬のポチは、口から割れてしまった風船の破片を下に置いて、申し訳ない顔をしてハンターの主人の前ではっ!はっ!と舌を垂らして座っていた。


 「やっぱりまた割っちゃったか。でも大丈夫だよ。ドンマイだよ。」


 ポチはねぎらいに頭を撫でるハンターの手をペロッと舐めて、信頼のアピールをした。


 だが、ポチはずっと気になっていた。


 車の片隅にこびりついていた、かなりゴムが劣化した風船のことだ。

 あれは、何を意味をするのか?

 もしかしたら、あの主人が俺を飼う前に他の猟犬をパートナーにしており、その他の猟犬というのは・・・


 ・・・カイザー・・・?!


 ・・・まさかカイザーでは・・!?


 ・・・じゃないよな・・・。


 ポチはそう考えると、『カイザーに逢いたい』という心はどんどん空気が抜けていく

風船のようにすっかり萎んでしまった。


 その代わり、あのビーグルのセルパの顰めっ面の顔が脳裏にどんどん風船が膨らむように大きくなり、カイザーへの気持ちを押し潰した。


 ・・・もしカイザーにまた逢ったら、言ってしまうだろう・・・


 ・・・もしかしたら、僕のご主人の前のご主人はカイザーではないか?と・・・


 ・・・そしたら、カイザーはどんな顔をするだろうか・・・?


 ・・・カイザー・・・!!


 帰路につく車の中で、もう一度座席の隅にこびりついていた風船のゴムが劣化した匂いを嗅いでみた。


 ・・・カイザー・・・


 ・・・カイザーの・・・匂い・・・


 ・・・一致・・・


 ポチの目から涙が溢れた。


 ・・・何てことだ・・・


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