4#この割れた風船はあの野犬の匂い

 「こらっ!ポチ!!食うな!!これは割れた風船だ!!」


 御主人は、あの時訓練で割れた風船を素直に捨てておけば良かったと後悔した。


 ずっと、ポチがその割れた風船を嗅いだり、身体を摩り寄せたりするのでわりと気に入ってるんだと放ったらかしにしていたのだ。



 がぶっ!がぶっ!がぶっ!



 猟犬のポチが、割れた風船を口で引っ張ったり爪で八つ裂きにしたりしてるのを見て御主人が割れた風船で遊んでいるのだと思い込んでいた。


 だがポチは割れた風船を口に入れようと何度もするので、御主人が割れた風船を飲み込んで窒息したら困ると、ポチの口から割れた風船を取り上げようとした。


 だが、


 びよよよーん。


 割れた風船のゴムが伸び、



 ばちーん!!



 「きゃいん!!」


 「ほうら!割れた風船を噛んでたから、大切な鼻に伸びた風船が当たったんだ。もう、この風船割れてるから捨てちゃ・・・」


 ・・・はっ・・・?!


 御主人はふと思った。


 ・・・何であの時、ポチが取ってきた風船が自分が膨らませた時より大きく膨らんでたんだ・・・?


 ・・・まさか、あの森・・・何かうろ覚えが・・・??


 御主人が考え込んだ。


 ・・・あの森に・・・生きてたのか・・・あいつが・・・?!


 ポチは、野犬のカイザーの吐息と唾の匂いが媚りついた割れた風船を何度も何度も嗅いで、口で引っ張って伸ばしたり、身体を摩り寄せたりして何度もあの愛おしい野犬のカイザーの感触に浸った。


 ・・・カイザー、もう一度逢いたい・・・


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