3#野犬に逢いたい猟犬
猟犬のポチは毎日ワクワクした。
またあの森に行くことを心待ちにした。
逢いたかった。あの元猟犬のカイザーと風船で一緒に遊びたくて期待と興奮でポチの胸はまるで風船のようにどんどん膨らんだ。
しかし、行く先々は違う山林。
何時も御主人の猟友会のメンバーと一緒に、鹿やイノシシやサルを退治する為に駆り出された。
「あー風船で遊びたい!!あのカイザーって奴と遊びたい!!」
何時も何時も、あの時にカイザーがパンパンに息を吹き込んだ風船をボンヤリと思い出した。
その風船は御主人に手渡した直後に、パァーン!!とドデカイ音を立てて割れてしまったが、そのカイザーの吐息が詰まった風船の膨満さを忘れなかった。
「ポチ!!何してんだ?」
「ばう・・・?!」
「今さっきから何ケポーーッと突っ立ってるんだ?何で獲物を追いたてないんだ?
もう他の奴の猟犬どもがみーんな追いたてて、何でお前だけ参加しねえんだ?」
「くぅ~ん。」
ダーーーーーン!!
散弾銃の銃声を聞いて、ポチはふと我にかえった。
・・・そうだ俺・・・『猟犬』なんだ・・・!!
・・・また遊べるんじゃん!!またあの森へ来れば・・・!!
・・・今は『猟犬』しなきゃ・・・!!
しゅたったったったったった!!
ポチは一目散に、銃声が響いた場所へ猛ダッシュで駆けていった。
しかし、時は遅し・・・
「よお!ポチよお。何してたんだ?」
「本当、お前は猟犬失格だな。一昨日来やがれ!!」
他の猟犬達は、其々のハンターのパートナーに撫で回されて勝ち誇ったように、呆然と立ち尽くすポチを上目線でしたり顔をしていた。
傍らには、散弾銃で蜂の巣になったイノシシの射殺体が転がっていた。
くんか、くんか。
「何イノシシ嗅いでるんだ役立たず!!帰れ!!帰って糞して寝てろ!!」
「きゃはははははは!!そうだ!!そうだ!!」
「くう~~~ん・・・」
駆けていったポチに付いていった御主人は、悔しそうに鳴いているポチを抱き締めるとこう言った。
「本当、最近お前変だぞ?何があったんだ?」
「くう~~~ん・・・」
「そっか・・・もしかして『スランプ』に陥ったんじゃねえか?まあ人間も犬もあるよな、『スランプ』が。」
御主人はそう慰めたが、ポチは別に『スランプ』なのでは無かった。
・・・逢いたい・・・
・・・あの森の野犬に逢いたい・・・
・・・あの野犬に逢って、一緒に風船で遊びたい・・・!!
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