名探偵は助手を募集中

けものフレンズ大好き

名探偵は助手を募集中

「その色にその目……あなたはヤギね!」

「えぇ~ちがうよ~アルパカだよ~」

「ぐっ……!」

 ここはジャパリカフェ。

 今日もキリンちゃんのとんでも推理が炸裂します。


「き、今日はたまたま調子が悪かっただけだから!」

「お前それ何度も言っているのです」

「何度も聞かされる身にもなるのです」

 最近ジャパリカフェの常連になりつつある博士と助手が、すぐにつっこみを入れます。

「お前の好きな漫画の主人公とは大違いなのです」

「読んでも全然身についていないのです」


「漫画……それよ!」


 キリンちゃんはすごくいい顔でびしっと、博士を指さします。

 対照的に、差された博士はとても嫌そうな顔です。

「ギロギロにあって私にないもの、それは助手よ! 助手がいれば本来の力が発揮できるわ! というわけで助手は今から私の――」

「お断りなのです」

 言い終わる前から助手は即答します。

「お前の助手になるぐらいなら、ラッキービーストの助手になった方がしゃべらない分だけマシなのです」

「猫の手も借りたいほど忙しくても、絶対にお前の助けは借りないのです」


「猫の手……はっ!?」


 キリンちゃんはすごく驚いたような表情で、ジャパリカフェを出て行きました。

「なんだったんだろうねぇ~?」

「構うだけ時間の無駄なのです」

「どうせ猫の手と言われてサーバルのことでも思いだしたのです。それよりもう一杯紅茶をよこすのです」

「我々は喉が渇いているので」

「はいよ~」


 博士と助手はキリンちゃんを完全に思考の外に追いやり、紅茶を楽しみます。

 ただ、キリンちゃんの行動は、2人の予想を大きく超えていました……。


「あなた猫よね! 私の斑模様の頭脳がしっかり記憶していたわ。今から私の助手になりなさい」

「それは楽しそうです」


 ここはさばくちほー。

 猫の手で思いついたフレンズはサーバルちゃんではなく、

「それじゃあよろしくねスナネコ」

「はいです」

 文字通りネコが付くスナネコちゃんでした。

 残念ながらキリンちゃんの思考は、「ネコ」という単語で終わってしまい「ネコ科」までには至りませんでした。


「なにをするのです?」

「探偵と言えば犯人逮捕して事件解決よ!」

「事件?」


 スナネコちゃんは首をひねります。

 良くも悪くも――完全に良いことですが、黒セルリアン討伐依頼、キョウシュウエリアは概ね平和でした。


「何かないの!? 助手でしょ!」

 いきなり無茶ぶりします。


 しかし、同じように深く考えないスナネコちゃんは、素直に何かないかと頭をひねり数秒後――。


「そういえば隠していたジャパリまんが、知らない間に減りました」


 あまり事件らしくない、他愛もない話をしました。

 けれども、今のやる気がみなぎっているキリンちゃんにはそれで充分でした。


「大事件ね! 当然その時は密室だったんでしょ!」

「みっしつ? みっしつとはなんですか?」

「・・・・・・・」

 実は言った本人であるキリンちゃんも、良く理解していません。

 漫画で出てくるので、とりあえず言ってみただけです。

 それでも素直に知らないというのも情けないので、適当に言うだけ言ってみました。


「……なんか狭い部屋のことよ!」


 言う間に本当にそんな気もしてきました。


「ぼくのおうちはそんなに狭くないのです。でも砂に埋まっていました」

「つまり密室ね! それで容疑者は?」

「ようぎしゃ?」

「その時一緒にいたフレンズよ」

「えっとー。確かあれはかばんとサーバルが来た後だったのです。ああ、そういえば、2人にあげたんでした。すっきり……」

「・・・・・・」

 自分で言った事件を自分で解決し、満足そうなスナネコちゃん。 

 結局探偵自身は何もしませんでした。


「……合格ね」

「はい?」

「これぐらいの事件が解決できないようなら、私の助手は務まらないわ」

 とりあえずキリンちゃんはそう言っておきました。

 同じようにあまり深く考えないスナネコちゃんは「良かったです」と、素直に喜びます。

 

 しかしそれもここまででした。


「助手って面白いですね」

「そうでしょう、だからこれから2人でパークの難事件を――」

「でも、もう満足しまた」

「え?」

「ぼくは寝るのであとは頑張って下さい。おやすみなさい」

 言うが早いか、スナネコちゃんはその場でうつぶせに寝てしまいました。

 

「え、あ、え……」


 キリンちゃんは呆然とします。

 しかし、この程度で考えなお……へこたれるキリンちゃんではありません。

「どうやら初めての助手としての仕事に疲れてしまったようね。私も最初に探偵になった頃はそうだったわ。でも明日からびしびししごいてあげるから覚悟しなさい!」


 キリンちゃんは自分なりの決め台詞を言って、スナネコちゃんの元から去ってとします。


「……帰り道が分からない」


 スナネコちゃんのおうちにいる間、外では砂嵐があり、風景が一変していたのです。

 事件ではなく道順が文字通り迷宮入りしてしまいました。


「出番よ助手!」

「……ぐー」

「ぐぬぬ……」


 結局キリンちゃんはスナネコちゃんが起きるまで、じっと待っていることしか出来ませんでした。

 そして待っている間、「どんなに困っても猫の手を借りるのはやめよう」と心に誓うのでした。


                                  おしまい

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名探偵は助手を募集中 けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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