第2話

○ツムラ産婦人科・廊下

   赤ちゃんの泣き声が聞こえる。

   ベンチに座っていた5人の、中川雅彦(13)、太一(11)、忍

   (10)、裕也(6)、美樹(5)が一斉に喜ぶ。

   『ヤッター!』

忍「男の子かな? 女の子かな?」

雅彦「よし、母ちゃんにメールで聞いてみるか!」

   雅彦、携帯を出して打ち出す。

太一「兄ちゃん、すげぇ!」

裕也「(大きく)兄ちゃんスゲェ!」

   裕也と美樹が、『兄ちゃんはスゲェ』と連呼し、大騒ぎする。


○同・分娩室

   赤ちゃんを抱いている助産婦が、困った様子でベッドを見る。

   ベッドには、中川千恵子(44)。

千恵子、汗だくの顔で携帯を操作している。

千恵子「あーん、マサからメールだ。もう……」

医師「奥さん、携帯、もういいですか?」

千恵子「ちょっと待って! 今からブログに書くの」

医師「そ、そういう事は病室でやってください」

   睨む千恵子。

   知らんふりする医師。


○同・廊下

   雅彦、携帯を見て、

雅彦「女の子だ!」

忍「やったぁ!」

太一「何だよ、女かよぉ。チェッ」

雅彦「よし、病室に先回りだ!」

   雅彦が走りだす。

   太一、忍、裕也、美樹が雅彦の後を追って走りだす。

   廊下を歩く看護師や妊婦をすり抜けて、楽しげに走る雅彦た

   ち。


○同・外観・喫煙所

   タクシーが着くと、中川が降りてくる。

   中川、病院を眺めてため息をつく。

中川「思わずタクシー乗っちゃたよ……タバコでも吸って忘れるか

 ……と言ってもお金は戻って来ないんだよな……」

   中川、灰皿の近くに行き、タバコに火をつける。

   クラクションが聞こえる。

   ふと、中川が見ると、ハイヤーが病院前に着いた所だ。

   見ていると、ハイヤーから黒い背広の木下(66)が降りてき

   て、後部座席のドアを開ける。

   そこから出てきたのは、清楚な白いワンピースを着たお腹の

   大きい上田葉月(27)。

   中川、その光景を見ている。

中川「お嬢様でも妊娠するんだ……」

   中川、タバコを吸う。

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