第11話

2年生の団体へ向かって行くといくつかのグループに分かれて好き勝手にざわついていた生徒たちが一瞬だけ話をやめて一斉にこっちを向いたが、歩いてくるのが俺とわかると興味を失ったようにまたお喋りに興じだした。なんでやねん。


友達が少ないというステータスはこんな極限状態でも否応無く発揮されてしまうらしい。そこに慈悲はない。

数少ない知人もこの場にはいないようだ。ゴブリンの襲撃程度で死ぬような変態共じゃないので心配はしていない。多分。


少しだけ不安になりながら端末を起動する。


《うぇる(ry》


おいさぼんな。


《めにゅ》

〈ステタス〉 !

〈アイテム〉!

〈ショップ〉!

〈掲示板〉!


のばし棒つけるのも面倒くさいのかよ。俺かよ。


持ち主に似てきた(?)アプリケーション(?)に少しだけ親近感を覚えながら掲示板を吟味する。今回時間には余裕があるのでじっくり確認しよ…


〈掲示板〉


妹の為に

フランシス・紺野・ケイ


私の大事な妹たちを脅かす害獣を駆除したいと思います。同じ考えの紳士諸君も共にゴミ掃除をしましょう。特に彼方。手伝ってくれますね?



※コメントはありません



うん…。

そっと掲示板を閉じた。俺は何も見てない。何もだ。この妹狂いは知らない人間だ。

あーステータスも確認してみるかー。エクスクラメーションマーク付いてるのは更新されてるってことなんだろうなー。楽しみだー。


〈ステータス〉


遙 彼方

人間Lv.5


筋力 45

耐久 50

知力 43

精神 61

俊敏 77

運 3


ポイント 180


スキル

自動反撃オートカウンター


称号

妹狂い




………What?

俺は何も見なかったことにしてステータスを閉じた。何かの間違いだと信じてる。疲れてるんだ、俺。うん。


もう一度見た。画面に映る文字は変わらなかった。俺は考えるのをやめた。


レベルが上がっているな。ピロリロリンという電子音が脳内で4回くらい響いたから多分それが通知音だったのだろう。同時にステータスの能力値も上がっているがさっぱり変化を感じ取れない。あまり身体を動かす感覚が変わってしまっても問題なので良い傾向かもしれない。運は何故か変わってない。悪い傾向かもしれない。


ポイントは多分ショップで使うのだろう。後回しだ。


スキルの詳細は表示されない。自動という言葉から察するに身体が勝手に動くのは実はこれのせいだったりするのか。そうするといつどのようにして取得したのかという疑問が湧いてくるが。レベルか行動に応じてなのか、それ以外か…。

…わかったところでというのもあるな。どうせ詳細わからないし。


称号なんてなかった。ないといったらない。


とにかくステータスには未だ謎が多い。保留だ。逃避ともいう。



次はアイテムを選択する。


〈アイテム〉

・劣悪な棍棒

・劣悪なロングソード×2

・臭いレザーアーマー

・初心者セット〈使用不可〉



色々と疑問はあるが…覚えのない武具はドロップ品と捉えていいのか?タップしてみると取り出すかどうかの確認画面が表示されたので〈はい〉を選…いや、危ういところで思いとどまる。


取り出す、とはまさか何もないところから突然棍棒が出現するんじゃないか。実に怪しい。悪目立ちしないように万全を期して人気のないところで試した方がいいな。

少し後ろ髪引かれるがこれも今は保留になりそうだ。


最後の機能は、ショップ。

本当に1ヶ月ここで過ごさなければならないとすれば最低限食料は必須だ。

まさかゴブリンの肉を食わねばならないとは考えたくはない。ていうか灰になるから食えない。


祈るような気持ちでショップを開く。


〈ショップ〉

食料品

・乾パン(缶)10ポイント

・水(2Lペットボトル)5ポイント


日用品

・歯磨きセット(7日分)10ポイント

・お風呂セット10ポイント

・寝袋50ポイント


武器

・ショートソード1ポイント

・ロングソード1ポイント

・ダガー1ポイント

・バトルアックス2ポイント

・和弓(矢30本)3ポイント


ポイント譲渡

・10ポイント譲渡

・100ポイント譲渡

・全ポイント譲渡


※レベルで開放されます※



武器安すぎだろどんだけ戦わせたいんだよ。

乾パンを選択するとアイテム欄に購入とこの場で装備していくの二択を要求された。乾パンをこの場で装備するってなんなん。

迷わずアイテム欄に購入し、アイテム機能に戻ると、きちんと追加されているのを確認。…乾パンくらいなら取り出してもバレないか?

周りを横目で確認して、乾パンをタップ。取り出しますか?の問いに「はい」を選


「皆!大変だ!」


思わず肩が跳ねそうになった。間の悪さに舌打ちしたくなるのを必死で抑えて端末をブレザーのポケットにしまう。声の主は体育館奥のステージ上に立っていた。


「落ち着いて聞いてほしい。連絡が取れなくなっていた見回りの先生達が…遺体で発見された」


な、ナンダッテー!



ていうかお前誰だよ。

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