第16話 待合室で夫がすること

通院の日は一緒に行く。通っている病院は診察室に妊婦しか入れないため、私はいつも待合室で待機している。夫だってエコーを一緒に見て、子がお腹の中で動いている様子を見たいが、夫が入室できないのは病院の決まりなので仕方がない。

病院はクリニックでなく総合病院のため、待合室は妊婦だけでなく、隣接している眼科の利用者もいる。婦人科の前の椅子はいつも子供や妊婦で埋まっているので、私はいつも少し離れたベンチに座り、妻の診察が終わるのを待っている。

妻が診察室へ向かう前に必ず、何を飲みたいか聞く。そして私は妻が診察室へ向かうとすぐに売店へ行き、自販機でジュースを買うのが日課になっている。

今日妻が飲みたいと申し出たのは、果肉の入ったジュースだった。

いつもならりんごジュースやオレンジジュースを飲みたがるので、院内の売店で用事が済む。売っているのはたいてい紙パックの小さなタイプのジュースだが、たくさん飲みたいわけではないのでそれでちょうどよい。

ただ、果肉入りのジュースは売店では売っていない。仕方がないから今日は近くのコンビニまで行くことにした。

コンビニでは、最近のはやりなのか、ドロッとした果肉がぎっしり入ったジュースが何種類も並んでいたので、柑橘系で飲みやすそうなものを一つ選んだ。ついでに自分用の缶コーヒーを買った。

待合室に戻って少しすると妻が診察を終えて戻ってきた。ジュースを渡すと、これではないという顔をし受け取った。なら何がよかったのか、と聞いてもきっと妻の口から具体的な答えは出てこないだろうから、私は缶コーヒーを少し大きく一口飲んだ。

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