第5話 親への報告

私の実家は秘密主義だ。学生時代に恋人ができても、そんな話を親に報告することはなかったし、親から彼女でもできたかと聞かれることもなかった。妻と結婚するときも、お互いに婚約してから半年ほどは親に黙っていたほどだ。家の中でお互いのプライベートのことを共有しない間柄の家庭だった。

しかし、いざ私が結婚するという話を親にしてからは、比較的家族内での会話の機会が増えた。親としていろいろとアドバイスをくれたり、普段は決して話すことのなかったデートでどこに行ったとかそういう話を親とするようになった。

そして今回の妊娠の件も、話し出すときは少しためらったが、婚約発表よりもずっとスムーズに親に切り出すことができた。

昼過ぎに父親が外出しようとしていたので、何時頃帰ってくるか尋ねると、今日は出張で明日の夜に帰ってくるという。それなら出かける前に伝えておこうと思い、妻と一緒に産婦人科へ行き妊娠6週目であることを伝えた。

父は特に驚く様子もなく、事実としてそれを受け入れ、それはおめでとうと言ってくれた。変に驚かれたりリアクションをされるのは苦手なので、淡々とした反応でホッとした。

その後数分ほど子育てのアドバイスをしてくれた。夜寝るときに赤ちゃんは決まって親の方へ首を傾けて寝るが、いつも同じ方向を向かせていると頭の形がいびつになるので、赤ちゃんを寝かせる位置は親の右側と左側の交互に置かないといけないとのこと。また、先日ニュースであったようにハチミツを与えてはいけないこと。またショッピングモールなどにある幼児用のプレイランドは感染症の宝庫だから絶対に遊ばせないこと。

また、妻の両親にとっても初孫となるため、極端に可愛がり過ぎる可能性があるが、そうすると子供の人格に偏りが出るかもしれないから、特別扱いせずに普通に接するとのこと。

祖母にもひ孫の顔を見せてあげたいので、とにかくこれから1年ほど、私や妻だけでなく、家族全体で元気に過ごして欲しい、とせつに願う。

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