第4話 おめでた。

土曜日もやっている産婦人科が近所にあったので、妻と一緒に出向いた。私が寝坊したのが妻の気に障ったらしく、病院につくまでネチネチと人格否定された。初診の妻はまず診察券を受付で発行してもらい、私が椅子に座って待っている間に、妻は尿検査や問診に呼ばれた。

診察から戻ってきた妻は笑顔だった。妻が手に持っていた書類をちらっと見ると、妊娠おめでとうございます、という文字が印刷されているのが見えた。そうか、本当に妊娠したんだな、と実感が湧いてきた。

妻は、他の人が近くにいたのを気にしてか言葉少なに、6週目だって、よかったね、と言った。会計窓口へ移動するためにエレベーターに乗ると、私は思わず泣き出してしまった。人生が次のステージに進んでいると実感できた。すべてが目まぐるしく動いていて、もう私は自分ひとりの人生を歩んでいるのではなく、妻とこれから生まれてくる子供のために生きているのだ、と思った。

予定日は12月上旬らしい。意外ともうすぐだ。妊娠中の過ごし方や、出産後の過ごし方、子育てなど、これからどんどん勉強していかないといけない。忙しくなるな。

担当の先生は初老の男性で、優しそうな人らしい。私も診察室に入って説明を聞けばよかった。

2週間後に再診があるので、それまでに市役所へ出向いて母子手帳と検診補助券をもらわないといけない。それから親への報告だ。妊娠3ヶ月を過ぎるまでは妊娠状態が不安定らしく、安定期に入るまでは友人や職場には黙っていて欲しいと妻に言われた。そうは言っても、とにかく会う人みんなに言って祝福して欲しい気持ちでいっぱいだ。

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