土曜日:『グミの雨』

 お昼ご飯を食べて少し休憩していると、家のチャイムが鳴らされます。ドアを開けると、そこにはしぐれ君が立っていました。


「こんにちは、しずくちゃん」


「しぐれ君!」

 

 いよいよ休日、土曜日です。学校が休みの今日は、「グミの雨」が降ります。


 土曜日になると、私たちはグミを集めに公園に行きます。グミを集めるときはどうしても楽しくなってしまって周りが見えなくなってしまうので、いつも広い公園まで行って集めるのです。


 ■


「着いた!」


 公園に着きました。そこにはもうたくさんの人がいて、みんなグミを楽しそうに集めています。


 空から、カラフルな小さな粒が降ってきます。このグミたちはもちろん食べられるので私たちのおやつ代わりです。試しに一粒、空から降ってきたものを手のひらで受け止めて口に入れます。んんん~~~!! やっぱり甘くて美味しいです!


 グミは拾い放題ですが、注意しなくていけないことがあります。私たちが食べていいのは空から降ってきたものだけで、一度地面に落ちてしまったグミは拾って食べてはいけません。そういうグミたちは全部犬や小鳥さんたちのものになります。横取りはしてはいけません!


 家から持ってきていた大きめのかごを目の前に差し出して降ってくるグミを一つずつ拾っていきます。


「さあーいっぱいとろう!!!」


「今日は一段と元気だね、しずくちゃん……」


 しぐれ君といろんなことをしながら、ちょっとずつグミを集めていきます。例えば、どれだけとれたか勝負したり、走り回ってみたり、たまに食べてみたり。そういえば、昨日の星たちは金平糖みたいで美味しそうだよね、とか話したりもしました。


 楽しい時間はあっという間に過ぎていき、公園の時計を見上げると、もう午後3時を過ぎています。いつもなら5時くらいまでやっているのですが、今日はもう帰らなくてはいけません。


「ごめんしぐれ君。私、今日はもう帰らなくちゃいけなくて……」


 しぐれ君はちょっと驚いたような顔をしましたが、すぐにいつも通りのふわふわ笑顔に戻して、


「そっか……。今日はいつもより早いんだね。わかった。僕はもうちょっとここにいるから、気を付けて帰ってね」


と言ってくれました。しぐれ君は、こういう人なのです。


「うん! また明日ね!」



 公園を出て、急いで家に帰ります。もちろん、しぐれ君の言葉通り気を付けながらです。

 実は言っていなかったけど、明日はなんとしぐれ君の誕生日なのです。そのためのプレゼントを、これから作ります。



 家に着き、台所のドアを勢いよく開けます。


「お母さん!!」


 お母さんは、いつもみたいにテーブルで本を読んでいました。私に気付いたお母さんは、優しい顔でこっちを振り向きます。


「アレ、買ってきてくれた?」


「もちろん」


 そう言ったお母さんは右手に持った二枚の板チョコをひらひらと動かし、私を安心させるのです。



 と、いうわけで、さっき集めたグミと板チョコを使ってしぐれ君への誕生日プレゼントを作ります! 三角巾とエプロンをして準備万端。精一杯の思いと感謝を込めて。

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