オールスターゲーム2020(1)
ドリームチーム合流、2日間の練習開始 / 名勝スポーツ 2020年07月02日の記事
ケモプロは先月28日にオールスターのファン投票の開票が行われ、両リーグの出場24名が確定した(北露路王子(東京)のみ負傷のため辞退し得票三位を繰り上げ)。本日全選手が集合、初の全体練習が行われた。ファンの注目はロビン・ニアウッド(電脳)のナックルを山茂ダイトラ(島根)が捕球できるのかどうか。マウンドからロビンが投じた一球目は、小さく揺れてダイトラのミットに収まった。その後も投球練習は続き、ダイトラは姿勢を崩すことはあったものの後逸せずに全てを捕球。ビーストリーグ山ノ府クマ貴(FLE)との勝負に期待がかかる。
◇ ◇ ◇
オールスター・総務大臣電脳杯4日開催 / 名勝スポーツ 2020年07月02日の記事
ケモプロは今月4日、5日の2日間にわたり日米リーグ対抗のオールスター・総務大臣電脳杯を開催する。球場は4日がグリーン・ドリーム・スタジアム、5日が東京セクシードーム。予定されていたライブビューイングは新型コロナウイルスの影響でキャンセルとなったが、試合の模様はインターネット配信の他CS、ラジオでも放送される。先発メンバーはすでに公示されており、注目の『ロビン対プニキ』は初日の4日に実現する見込み。5日の試合後には初のデジタルの杯が授与されるセレモニーも予定されている。
◇ ◇ ◇
2020年度ケモプロオールスター出場選手一覧 / ケモプロ公式サイト
ケモノリーグ
投
Robin "Redbreast" Nearwood(電脳)
Amrita "LeopardCat" BlackDragon(青森)
捕
一
二
三
遊
外
指
ビーストリーグ
投
Albert "Immutable" Laysan(WIL)
Archer "Secretary" Bushfire(HWB)
Kenny "Crabeater" Austral(FLE)
Barbara "Bison" CrossingRoad(BOB)
Gunner "Machine" TreeHole(ANC)
Lil Pierre "YellowRing" Kharadra(ANC)
Yona "Zan" UnderBlue(BIS)
捕
Barry "GreatSeal" RiverSky(ANC)
Mike "Meadow" Grassland(HWB)
Pinky "Fairy" Burrow(BIS)
一
Nada "Canada" Rockies(FLE)
Enoch "Wild" MudPuddle(ANC)
二
Amelia "Guardian" SouthernHill(ANC)
Jade "King" Fisherman(BOB)
三
Ash "Monk" TreeLine(WIL)
Foster "Rakko" KombuForest(BIS)
Derek "WhiteCrest" Daybreak(FLE)
遊
Amelie "Mayflower" Ship(BOB)
Zato "Humpback" Ocean(HWB)
外
Sierra "Bighorn" CoolerMountain(FLE)
Peyton "Javelina" Farmland(WIL)
Rohan "Thorough" Furlong(ANC)
Cash "FireEater" Rainforest(FLE)
Doddie "TaxCollector" Door(HWB)
Sonia "Social" Nestominium(BOB)
Dean "Degu" DiggingChain(ANC)
指
Patricia "Florida" Peninsula(BIS)
◇ ◇ ◇
7月4日。
「(ケモプロファンのみんな! 待たせたな! マルコ・ウッズだ)!」
バーチャルな球場の放送席の中で、リーゼント頭の狼系男子アバターがノリよく叫ぶ。
「(今日はケモプロ、初のオールスターの公式実況をやらせてもらえるってことで、超興奮してるぜ! 盛り上がってるか、ビーストリーグ)!」
マルコが呼びかけると、スタッフたちの声であろう歓声と口笛が聞こえてきた。
「(オーケー、それじゃゲストを紹介するぜ! まずはBeSLBから美しき広報担当、ローズマリー・アンブローズ)!」
「(こんにちは、ローズマリーです)」
アルマジロ女子アバターのローズマリーが、カメラに向かって手を振る。
「(ウーン、アバターもイイけど、実物ともお会いしたいね! おっと、これってセクハラか? いやいや、会いたいってんならオレは次の人物にだって会いたいぜ? 日本のKeMPBから! イカレた男、ユウ・オオトリ)!」
「Hi」
すっかり
「(ユウ・オオトリです。俺もマルコとまた直接会える日を楽しみにしている)」
「(ヒュー! どうやらこっちは脈ありみたいだ。女性ファンに嫉妬されないうちに、話を進めよう)!」
スタッフたちの笑いが響く中、マルコは司会を続ける。
「(さあ今日は祭りだ! ケモノリーグとビーストリーグのドリームチームが戦う、オールスターゲーム! まったく楽しくなってくるぜ! 今日の球場はワールドシリーズの舞台にもなった、ここだ)!」
カメラが球場の外を映し出す。巨大なレモンの木がバックスクリーンの後ろにそびえたつ、レモン農場の中の球場。
「(フレズノ・レモンイーターズの本拠地、グリーン・ドリーム・スタジアムだ! オールスターをレモン農場の中心でやっちまうなんてイカレてるぜ)!」
「(ケモプロでしかありえない光景ですね)」
「(まったくだ。さあて、そろそろ今日の選手紹介に移ろうか。まずはケモノリーグの選手から紹介していこう! 一覧が出せるか? オッケー、これを見てくれ! 今日の先発メンバーだ)!」
1 二
2 遊
3 右
4 指
5 一
6 中
7 三
8 左
9 捕
投
「(さて、ユウには今日の先発メンバーを解説してもらうぜ! 先発投手は影家カズシマ)!」
ウォーミングアップ中のスカンク系男子が映った。額から鼻先にかけて一本入った白い筋が傷跡のように見える。カズシマはカメラを見つけると、ストレッチをしたままニィ、と歯を出して笑った。
「(カズシマは電脳カウンターズのエースだ。2018年、2019年度の最多奪三振、ベストナインを獲得している。速球とコントロール、手元で鋭く曲がるカットボールで強気に攻めていくのが持ち味だな)」
「(そいつは手ごわそうだ。さて、二遊間は今年度のワールドチャンピオン、東京セクシーパラディオンから南北
平行して駆けながらキャッチボールをしている、ジャガーの従兄弟にカメラが向けられる。
「(で、いつも思うんだが、どっちが兄だ)?」
「(体が小さい方が兄だな。弟は──)」
ぽろり、と少し体の大きな方のケモノが捕球をミスする。
「(──ちょっと緊張に弱いかもしれない。が、二人とも俊足を活かした守備と、盗塁の成功率でリーグのトップだ。兄のジノ丸は2019年、弟のガスケは2020年の最多盗塁を受賞している)」
「(まったく、塁に出したくないね! フレズノもさんざん苦労させられた。ワールドシリーズでの三盗は夢に出てくるほどだぜ)」
この二人はワールドシリーズでも盗塁をバシバシ決めていたからなあ。
「(で、次はライト、赤豪原ビワ太、同じパラディオンの選手だな)」
「(チーム内では他の選手の影に埋もれてしまっているが、打率も高い外野手だ。守備でも高い評価を得ている)」
首周りの赤いワラビー系男子が、グラブをはめながら球場を見渡す。
「(ヘイ! 確かこいつの従兄も優秀なバッターだったと思うんだが、どうして選出されていないんだ)?」
「(赤豪原ガルは確かに成績はいいんだが、あまりファン人気がないんだ。それに東京にはゴリラがいるし)」
「(それはおかわいそうなことで。その代わりに選出された指名打者が、氷土クオンってわけか)」
白い体毛のオオカミ系女子が、念入りに素振りをする。
「(彼女は伊豆ホットフットイージスの指名打者だ。チームのことを考えた打撃ができる、ということで評価されている。ホームランも狙えないわけじゃないが、確実な得点を選ぶという感じかな)」
「(ワザの好きな日本人らしいな。さてファーストは……おいおい、今日はゴリラじゃないのか? 乾林ザン子だって)?」
「(島根出雲ツナイデルスの選手だ)」
鼻の頭から背中にかけて鋭い鱗を並べたセンザンコウ女子は、ゴキゴキと肩を鳴らしながら相手ベンチを睨んでいた。
「(ケモプロを題材にした『レミは静かに野球がしたい』という漫画が連載中なんだが、その主人公のひとりに抜擢されている)」
「(翻訳版も掲載しているから、ぜひビーストリーグのファンにも見てほしいですね)」
「(いいね、跳ねっ返りは大好きだ。つまり、漫画の人気で選ばれたってことか)?」
「(たまに守備が雑だが……打撃力は高い方だ。ツナイデルスの中ではトップクラスだな)」
「(そんなツナイデルスからさらにもう一人、センターは草刈レイだ)」
プロングホーンというシカのようなケモノ。レイはザン子の肩を引っ張ってやめるように言っていた。
「(チームの中では苦労人……のような立ち位置だ。俊足で守備範囲が広い)」
「(今日のオーダーは守備を重視って感じか)?」
「(そのようだな)」
「(ハハッハ、
ツシマテンのケモノ男子は長い手足を広げ、黙々と柔軟をしていた。
「(鋭いライナーもジャンプキャッチしてアウトにする反応と身体能力で、ファンからは忍者と呼ばれている)」
「(ニンジャ! いいねぇ! ユウはニンジュツは使えないのか)?」
「(修行していないから使えないな)」
「(そいつは残念だ)」
修行してもマルコが期待するような術は使えないと思うが。
「(さてレフトは島住キョン、伊豆ホットフットイージスの選手だな)」
ベンチから出てきたキョン……シカ系のケモノ男子は、レイに声をかけられて困った顔をしながらも、一緒にザン子をベンチに引っ張っていく。……意外と似た者同士かもしれない。
「(今はイージスで選手兼任監督代行をしている。一部に熱心なファンがいるな。もちろん、守備能力は保証する。ちょっと調子にムラがあるという評判だが)」
「(今日の調子がいいことを祈っておこうか? さて、捕手は、またもやツナイデルスか)!」
ベンチの中で防具を付けた青い虎は、ムッとしかめつらをする。
「(ツナイデルスの第二捕手で、捕球能力と併殺打を打つ能力に定評がある)」
「(併殺打を、なんだって? 打つ? なんてこった、大丈夫なのか)?」
「(ロビンのナックルを受けるために投票されたんだと思うが、想像以上に票を集めてしまってな……)」
ダイトラとルーサー、ダイトラとナガモ、という感じの投票と、「あのクソ虎に入れてたまるか」という一部の勢力の差し合いで、捕手が三人も選出されることになった。
「(ケモノリーグの事情は複雑だな! しかも先発はカズシマじゃないか)?」
「(早めにロビンが登板して、ルーサーかナガモに交代してくれることを、ケモノリーグのファンは祈っているかもしれない)」
「(そいつぁ監督の采配に注目だな! さあてケモノリーグの先発メンバーは以上だ! 次はローズマリー、君にビーストリーグの解説をお願いしても)?」
「(もちろん)」
「(いいね! それじゃ先発メンバー表を出してくれ)!」
1 右 Doddie "TaxCollector" Door(HWB)
2 中 Peyton "Javelina" Farmland(WIL)
3 指
4 捕 Barry "GreatSeal" RiverSky(ANC)
5 一 Enoch "Wild" MudPuddle(ANC)
6 左 Sierra "Bighorn" CoolerMountain(FLE)
7 三 Foster "Rakko" KombuForest(BIS)
8 二 Amelia "Guardian" SouthernHill(ANC)
9 遊 Amelie "Mayflower" Ship(BOB)
投 Archer "Secretary" Bushfire(HWB)
「(先発投手はホーボーケン・ホワイトベアーズの、アーチャー・ブッシュファイア)!」
「(ビーストリーグナンバーワンの速球派です)」
カメラがブルペンへ移り、ペットボトルから水を飲むケモノ選手を映す。オレンジ色の顔に白いくちばし、黒い後ろ頭の羽。細身のヘビクイワシ系男子のアーチャー。
「(牽制球も上手いし、捕手のバリーと合わせて、南北従兄弟には仕事をさせませんよ)」
「(走る隙はないってわけだ。こいつは南北従兄弟が刺される場面が見れるかもな? さて、野手はライトから。同じくベアーズから、
ベンチにキチッと背筋を伸ばして座る、目つきの鋭いドーベルマン系男子が、少し気取りながらキュッと襟元を正す。
「(堅実な守備と打撃が持ち味です。確実に塁に出て、攻撃の起点を作ってくれるでしょう)」
「(いいねえ。お次はセンター、ウィルミントン・ヨゾラからペイトン・ファームランド)!」
そのドディの隣で、律儀にポリポリと一粒ずつヒマワリの種をかじり続けているイノシシ系女子が映る。
「(ペイトンと言えばなんといっても肩! 速くて正確な送球でホーム突入を何度阻止したことか! 彼女の代名詞ともなった『ジャベリンスロウ』をお楽しみに)!」
「(ハッハッハ、それ、練習してきてあるぜ! お楽しみに! さあそして三番は、フレズノ・レモンイーターズの大砲だ! 指名打者、山ノ府クマ貴! 通称『プニキ』だ)!」
ベンチの奥で、腕を組んで座る、大きな黄色い熊。アメリカでも『プニキ』呼びが定着してしまった強打者。
「(言わずと知れたホームラン以外は無価値の男です。今年度のホームラン数はケモノリーグのゴリラに負けてしまったけど、来年度こそやってくれると期待しています)」
「(まったくだ。だがホームラン王は他の選手にも可能性がある。四番のバリー・リバースカイはどうだ)?」
「(肩よし、打ってよしの、理想的なキャッチャーですね。アンカレッジ・ハンマーズと言えばバリーですよ)」
白い羽毛に黄色のくちばし。ハクトウワシ系男子のバリーは、ベンチから身を乗り出してケモノリーグの選手たちを観察していた。
「(それじゃ、同じハンマーズ、五番・ファーストのイーノック・マッドパドルはどうだい)?」
「(打撃はいいと思いますよ、打撃は)」
ベンチの中、肥満体のイノシシ男子が、ペイトンの持つ袋からヒマワリの種をわしづかみにして取っていく。ドディが苦言を弄するが、イーノックは無視し、ペイトンは気にしていない。
「(オーケー、深く突っ込むのはやめよう。次はレフト、イーターズのシエラ・クーラーマウンテンだ)」
大きな角を持ったヒツジ系女子が、プニキの隣で同じように腕を組んで座る。
「(イーターズ第二の大砲ですね。三番から六番まで強打者の揃ったまさにドリームチームです)」
「(オールスターの醍醐味だな! さて、七番はサード、ビスマーク・キャッツから、フォスター・コンブフォレストだ)」
ラッコ男子のフォスターは、プニキの前のベンチに座ってぼけーっとしている。
「(ビーストリーグのサードと言ったら彼ですよ。忍者がジャンプなら、フォスターは走りと肩で勝負。キャッツでサードに飛んだ打球で内野安打になったケースはゼロなんですからね)」
「(南北従兄弟の内野安打はこれで封じたな! それじゃあこっちの二遊間も続けて紹介してもらおう)!」
そんなプニキの周辺に近づいていくケモノ女子が二人。
「(セカンドはハンマーズのアメリア・サウザンヒル。ショートはボイシ・ブロッサムズのアメリー・シップ)」
ブルドック系女子のアメリアと、アメリカンショートヘア系女子のアメリー。二人はキャアキャアと楽し気にプニキに声をかけ──なぜかシエラが不機嫌そうに静止した。張りつめた空気に耐えかねたフォスターはソロソロと場を離れようとして、シエラに見つかり咎められる。
「(ディープなファンにはたまらない組み合わせですね。この二人、アマチュア時代は同じチームでプレイしていて、名コンビとして人気だったんですよ。ドラフトで別々のチームになってしまったけど、こうして一一緒のチームにいるところを見ると微笑ましいです)」
画面上ではいつの間にかフォスターが三人のケモノ女子に詰められており、あまり微笑ましいとは言えそうになかった。
「(ああ、これは、どっちのチームもセンターラインを抜くのは厳しそうだな、いろんな意味で)」
マルコは咳ばらいを一つして切り替える。
「(さあそろそろ試合開始だ! 年に一度の祭り、オールスターゲーム! 勝ったら日本の政府からトロフィーまでもらえちまうらしいぜ! 張り切っていこう)!」
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