バーチャル観客試合
東京セクシーパラディオン初代ワールドチャンピオンに / 全国紙新聞のスポーツ・芸能面の記事 2020年06月09日の夕刊
9日にグリーン・ドリーム・スタジアムで行われたケモプロのワールドシリーズ第6戦、優勝に王手をかけた東京セクシーパラディオンは8回表、雨森ゴリラの3ランで勝ち越すとそのままリードを守り切って勝利、4勝2敗で初代ワールドチャンピオンの座に輝いた。パラディオンは一昨年、昨年とリーグ優勝を惜しいところで逃していたが、今年は一気に世界の頂点に輝く結果となった。
なおケモプロではワールドシリーズは勝敗に関わらず第7戦まで行われる。11日の第7戦が行われる球場はシークレットとなっており、様々な特別賞があることから、ファンとしても見逃せない一戦になりそうだ。
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ケモプロ・ワールドシリーズ終了、初の南極大杯はフレズノに / 名勝スポーツ 2020年06月11日の記事
ケモプロは11日、ケモノリーグ(日本)とビーストリーグ(米国)の覇者同士が戦うワールドシリーズの最終戦を、南極大陸をイメージした南極大球場にて開催した。1日限りの幻想的な球場で行われた最終戦は5対7でフレズノ・レモンイーターズが勝利、初の南極大杯を手にすることになった。
(写真:南極大陸の形をモチーフにしたカップを掲げる、
そのほか個人賞として……──
(後略)
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南極大球場で突発日米交流会をやってきました! / ケモプロユーザーブログ 2020年06月12日投稿
(画像:南極大球場)
みなさん! ワールドシリーズ・ファイナルゲーム、お疲れさまでした!
いやー、1日しか公開されない球場とか、相変わらずケモプロはもったいないですね。
南極大球場、作り込みほんとすごかったので。外のアクティビティが話題になってましたけど、中の方も盛りだくさんでしたよ。
(画像:フィールドを望む、高級そうなレストラン)
例えばここ。最上階のレストランです。めちゃくちゃ高級そうだし、実際に建てられてたらVIP用にありそう。世界の要人がいそう。
(画像:巨大な発電機、暖房装置)
きらびやかな設備だけじゃなく、裏側もすごい。こんなでっかい機械、嫌いな男の子いないでしょ。
なんでも実際に南極で、開放型の球場でも観戦できるように設計したとかなんとか。公開されているメイキング動画オススメです。
さてそんなわけで知人とスゲースゲーと言いながら施設を回っていたんですが、同じことしている人に声をかけてもらって一緒に回ることになりました。
(画像:親指を立てるアザラシ系ケモノアバター)
名前はフィリップさん。アメリカのケモプロユーザーです。
カタコトの英語と翻訳ツールを駆使してやり取りするうちに仲良くなって、一緒にファイナルゲームも観戦。
そしてなんか知らない間に人が集まって、試合後は日米のケモプロファン交流会になりました。
(画像:観客席に集まった30人ほどのケモノアバター)
話を聞いてみると、ケモプロは思ったよりアメリカで人気なようです。というか今年はコロナの影響で、MLBはまだ開催日程が決まっておらず、マイナーリーグは開催しないという噂もあるとかで、今楽しめるスポーツ系の娯楽がケモプロしかないとか。まあこの辺は日米共通、というか全世界的に同じなんでしょうね。
今アメリカは大変みたいですが、ここではそんなこと気にせず野球が楽しめていい、と言っていたのが印象的でした。
◇ ◇ ◇
全選手に出場機会・70プレイヤーズウィーク開始 / 名勝スポーツ 2020年06月15日の記事
ケモプロは15日から21日まで、70プレイヤーズウィークと題してリーグごと1回戦総当りのイベントを開催する。各チーム支配下登録されている選手70名全員に出場機会のあるイベントで、そのあと行われるオールスターの出場選手を見繕う機会でもある。前年度も普段は見ない組み合わせの試合に盛り上がったが、今年ファンが目を向けるのは電脳カウンターズのロビン・ニアウッド投手だろう。彼のナックルを島根出雲ツナイデルスの山茂ダイトラ捕手が捕ることができるのではないか。その答え合わせがオールスターでできるかどうか、まずはこの70プレイヤーズウィークで両名の調子を見定めたいというのがファンの想いだろう。
◇ ◇ ◇
島根、魔球喪失か / 名勝スポーツ 2020年06月17日の記事
島根は16日、全支配下登録選手出場週間の70プレイヤーズウィークで東京と対戦。先発はシーズン後半で活躍したナックル使いの洞ヶ木ノリ。しかし早々に連打を浴び、2回8失点で降板。試合は2対12で東京が勝利した。シーズン最終戦で外野守備につき負傷した洞ヶ木。全治2週間と軽微ではあったが利き腕であったことから投球が心配されていた。1回、初球は棒球のストレート。その後も同じ球が続き、降板までナックルは3回しか投じられなかった。怪我の影響でナックルの成功率が低下していると考えられる。来シーズン開始までに復調できるかどうか、島根ファンの心境は穏やかではない。
◇ ◇ ◇
いよいよプロ野球開幕。観客はバーチャル? / 全国紙新聞のスポーツ・芸能面の記事 2020年06月18日の夕刊
明日6月19日、新型コロナウイルスの影響で延期していたプロ野球がついに開幕を迎える。2日から行われていた練習試合同様に当面は無観客試合とし、来月10日から入場者数を制限しての観戦を目指す。
また球場では無観客になるが、バーチャルな球場では観戦が可能になる。昨年のオールスターにおいてVR|(バーチャルリアリティ)のネット中継を担当したKeMPBが協力し、来月10日までの全試合(一部除く)でアバターでVRの球場を訪れて観戦できるようにする。各種放送でも客席をVRのものと合成する。ケモノプロ野球リーグに登録(無料)しアバターを球場に送り込み、選手たちにファンの応援を届けよう。
◇ ◇ ◇
開幕戦、初戦は天間対三 / 日刊球跳 2020年06月18日の記事
(前略)
──……先発は天間選手、そして三選手。あらゆる意味で球界を騒がせるこの二人。今回は三選手に電話インタビューを行った。
──オープン戦の最終戦以来の対決になります。「そういえばそうだった」──意気込みは。「DHじゃないのはありがたいよね。オオムラ選手と戦えるし」──投手戦については。「野手の調子によるよね」──天間選手の打席で投げたかった?「そんな機会はもうないんじゃない?」最後に何か一言「オオムラ選手に打たれたときの寄付金の送り先をコロナウイルス関連の医療機関にする。打たれないけど」
◇ ◇ ◇
「思ったより盛況だな」
VR用のヘッドセットをかぶり、辺りを見回す。バーチャルに再現された球場の中、観客席にはケモノアバターが所狭しと並んでいた。
「去年のオールスターの時とは、全体のユーザー数が違うからね!」
隣の羊アバター……ライムが息を弾ませて言う。
ケモプロが地道に成長し、新型コロナウイルスの影響でさらに増えたユーザー。その中にはプロ野球の代わりとしてケモプロを求めていた層もいる。そういったユーザーが中心に盛り上がっているのだろう。
去年も360度VR観戦、と題してオールスターの試合をケモプロの中で再現した。選手のモデルデータに、カメラの映像からリアルタイムで表情や汚れなどを反映して、動かす。今年のオールスターでも計画していて、システムのアップデートも行っていた。しかしオールスターは中止になり──その代わり、こうして無観客試合の間の施策のひとつとして採用された形だ。
「あとは初日だし? それに70プレイヤーズウィークが休みの日だからね。ケモプロファンも、こっちにアバターを送って応援してくれる人が多いよ」
「プロ野球も愛されているな」
何十年と続く野球の興行。球場を埋め尽くすアバターを見ると、その巨大さの一端を感じる。
「応援というのは、やはりすごい力だな。これを選手に上手く伝える方法があればいいんだが」
「だよね。巨大モニターを観客席に置くとか、プロジェクションマッピングするとか、すればよかったのに」
「予算の都合もあるだろうし、そこはこちらの担当じゃないからな」
そういうことをするならシステム的な手伝いはする、という提案だけはしたが。
「ん~、でもさでもさ! こういうの見ると悔しいじゃん?」
ライムは何かの画像を手渡してくる。これは別の球場……観客席に、ロボットが、応援団を?
「これは……どうなんだ? ボールが飛び込んできて当たったら壊れるんじゃないか? それともさすがにプレー中は引っ込めるのか?」
「んーん。ホームランボールが当たって壊れるぐらいなら話題になってヨシ! だって」
「……いいのか? だってこれ、高いんじゃないのか?」
「んー、安い方が販売価格で1台200万円、高い方が800万円だから、広報としては妥当! って感じかな?」
「球場でそこそこ目立つ広告の年間掲載料ぐらいじゃないか」
「一番目立つところと比べたら安い安い!」
ライムはアバターに雲のような笑顔をさせる。
「自社製品の広告と考えたら、壊れちゃっても丸損ではないよ」
「……まあ、かなり話題にはなりそうだな」
「でしょ。ディスプレイは壊れても話題にならないから仕方ないね」
いろんな会社が作っているから、ひと目で見てどこのディスプレイかなんて分からない。しかしこのロボットたちならすぐに分かるし、報道でもフォローがきちんと入るだろう。
「ま、ケモプロはリーズナブルに提供して勝負だよ。ネットやテレビの放送では観客席を合成するし、球場にだってバックスクリーンには映すからね!」
「それもあってだろうな、今回も有料の座席が完売したのは」
ちなみに今回のチャンネル1──テレビ放送に映る席からの収入は、実際に試合を行っている球場の運営団体と分配することになっている。
「ムフ。お兄さんも律儀だよね。関係者なんだからタダで入ったっていいのに」
きちんと抽選に申し込んだ。2席しか当たらないとは思わなかったが。
「応援をするためにズルをしても、いいことはないだろう」
そんなことをしたって、俺の幼馴染は喜ばない。
「お、カナお姉さんの打席だよ! 早かったね」
噂を──してはいないが、ともかく俺の幼馴染、史上二人目の女子プロ野球選手のカナがバッターボックスに向かっている。
「テンマ選手もサン選手も好調みたいだから、すぐに回ってきたな」
特にサン選手は一回表、テンポよく三者凡退に抑えていた。この回も四番相手に三振を取るという活躍ぶりだ。マウンド上にあるサン選手のモデルは、ボールを手で回しながらバッターボックスを睨んでいる。
「やっぱりカナお姉さんは3Dモデルで見てもかわいいね!」
「そうだな」
背の高い野球選手たちの中に混じると、カナも小柄な方に見える。メガネをしっかりとかけなおして、カナはバットを構えた。
「──……あっ、捕られた」
「抜けなかったか」
一二塁間のゴロをファーストが追いついて捕球し、サン選手が受けてフォースアウトにする。
「惜しかったね」
「サン選手もプロということだろう」
言っている間に六番打者が三球三振に切って取られる。
「ここまでノーヒットだし、やはり調子がいいみたいだな」
「ムフ。やっぱり投球練習シミュレーターのおかげ? アンバサダーのサン選手が活躍すると、KeMPBとケモプロの宣伝になっていいけど、お兄さん的にはフクザツ?」
「カナが打てば嬉しいし、サン選手が力を付けたならみんなの成果ということで誇らしい」
だが。
「……サン選手がカナを抑えた時の喜びは、間接的なものだな」
直接的ではない、間にいくつか物の挟まる喜び。
「カナが打ってくれた方が嬉しい。今日もやってくれると信じている」
しかしそうは言ったものの、今日はサン選手の日だった。
四球やエラーでランナーを塁に出すものの、ヒットはなく、得点を許さない。テンマ選手が2失点し6回で降板する中、スコアボードに0を刻んだまま続投する。
やがて中継でその単語が多く出るようになる中、再びカナとサン選手の対決が訪れた。
九回表、0対2、2アウト。ランナーは先ほど振り逃げで出塁した四番のシマ選手が一塁に。
「振り逃げって、条件的にどうなんだ?」
「ムフ。条件的にはセーフだよ。サン選手の初の
ノーヒットノーラン。長い球界の歴史の中で100回に満たない数しか達成されていない、数年に1度あるかないかの大記録。
「どうどう、お兄さん。こうなってくると、どっちを応援するか迷っちゃう?」
「答えは変わらないぞ」
記録がかかっているからといって手加減するプロはいない。カナだってそうだろう。
バットを振らないまま追い込まれるカナ。普段サン選手を応援しない人でさえ、固唾を飲んで見守る次の投球。サン選手がランナーを無視して悠々と腕を振り──
カァン!
「わ! 行った!?」
首を上げてボールを追う。高く舞ったボールは、グラウンドの最奥へ。センターの選手がフェンスに背をつけて──跳ぶ。
「落ちたー!」
グラブに弾かれたボールは、フォローに近づいていたライトの選手を通り越して転がる。アバターたちがエモートを連打し、球場が揺れる。ようやく追いついたライトが捕球し、送球するも──
「やったね、スリーベース!」
カナは三塁に滑り込んでいた。一塁ランナーもホームに還り、1対2。
マウンド上のサン選手は、静かにスコアボードを見つめ──ヒットが記録されると、小さく地面を蹴った。
「あ、エラーじゃないんだ。失点もしちゃったし、ノーヒットノーランはなくなっちゃったね。交代かな?」
「どうだろうな。まだ完投勝利はあるし」
マウンドに捕手が駆け寄っていく。声をかけられたサン選手は、ひょいと肩をすくめた。それを見て、捕手はゆっくりと戻っていく。
その後、サン選手は六番打者を三球三振にし、翌日の紙面をノーヒットノーラン目前の完投勝利と、カナに1打点を浴びて新型コロナウイルス対策を行う医療機関に百万円の寄付をしたことで賑やかすのだった。
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