伝説がやってきた

 10月下旬。


「うーむ……」

「できたっ! 先輩、ネームチェックお願いするッス!」

「お、わかった」


 俺は眺めていた紙束を脇に置くと、ずーみーから渡されたタブレットを手に取った。


「ん~、ちょっと疲れたッスねぇ……」

「師匠、お茶を入れましょうか」

「よきにはからえー」


 アシスタントにして後輩のまさちーに返事をしながら、ずーみーはずぶずぶと、俺の脚の間で万年コタツに沈んでいく。


「はッ、ただいま。大先輩はいかがいたしまするか」

「ありがとう。同じのを頼む」


 棚田高校漫画部の部室に、食器の立てる音が響く。

 俺もずーみーもあまりこの部室を片付けようと思っていなかったのだが、新入生たるまさちーは違ったらしい。いつの間にか床に直置きされる本はなくなり、資料は棚に整理されて、電気ケトルが置けるスペースが生まれていた。……それでも周囲は本の山なんだが。


 今日は連載を再開した『獣野球伝 ダイトラ』のネーム打ち合わせで部室に寄った。最近はどうしてもオンラインで済ますことが多いのだが、今日は近くに寄る用事があったので部室に行くことにしたのだ。


「今回はツナイデルスのドラフト組――乾林かんばやしザン寒野かんのレミが中心なんだな」

「見てて絡みが多かったんで、おおむねその通り描いた感じッスね。同じ高校出身だからか仲がいいんスよ」


 島根出雲ツナイデルスの新人女子ケモノ選手コンビだ。失敗して落ち込むレミを、ザン子が乱暴に慰めている。彼女ら二人の視点で、ツナイデルスのメンバーをおさらいしていくような形だ。


「前話は各球団のドラフトに焦点を当てて、ちょいっと獣子園も描いたので、こういう回が必要かなっと」

「いいと思う」


 ただでさえ登場人物が多いし、シーズンオフの間は本編がなかったのだから、記憶を呼び覚ますためにもあったほうがいいだろう。


「ザン子とガンタがやりあうところもいいんじゃないか? 真面目っぽいけど、ここは譲らない、みたいなところが見れて」

「ッスよね!」

「その二人って、乾林って同じ苗字ですけど、兄妹じゃなくて従兄妹なんですね」


 湯飲みをコタツの上に置きながら、まさちーが会話に入ってくる。


「同じ苗字でいとこって、ケモプロに多いですよね。というか、きょうだいの選手をみたことがない気がしますが……なぜなんでしょう?」

「きょうだいともなれば接している時間が他人よりは長くて、ある程度の関係はできているものだと思うが、ケモノ選手は生まれて間もない。きょうだいという程の関係性はまだ構築できないだろう……ということで、いとこまでになっているんだ」

「ははぁ、なるほど。考えられておられるのですね!」


 そのうちきょうだいという関係を持つケモノ選手も出てくるだろうけれど、まだ先の話だな。


「……このネームで問題ないと思う。面白いものになりそうだ」

「うッス! じゃあさっそくペン入れするッス。まさちー、どんどん行くッスよ!」

「はッ! 承知仕りました!」


 ずーみーはもぞもぞと這い上がって机に向かう。それに応えるまさちーは、うん。武士だな。


「まさちーの方は調子はどうだ? 仕事で困ったことはないか?」

「いえ、師匠にもよくしてもらってますし……給料も十分いただいています。父も母も感謝しておりました。……ただちょっと、文化祭の時は忙しかったです」

「ああ……任せて申し訳なかった」


 棚田高校の文化祭は10月にある。俺もずーみーも忙しくて手伝えなかったのだが。


「いいんですけど、貴重な資料を展示するのが恐れ多くて緊張しました」

「今年はレジェンドの展示だけにしたんだったか?」

「ッスね。学校に結構ケモプロ関連で問い合わせがきちゃったみたいで……先生のほうから、人が集まりすぎるから中止してくれと。んなこたないとは思うんスけど」

「そんなことはありませぬ! 師匠のケモノはすばらしいモノです! 現に、ケモプロの展示を見たいという方が、当日もいらっしゃいましたし!」

「えっ、マジッスか。……何人ぐらい?」

「や……えっと、わざわざ問い合わせてきたのは、ひとりですけど」


 なんだ、という顔でずーみーがコタツにずり落ちていく。するとまさちーは両手を振って慌ててフォローした。


「やっ、しかしずいぶん熱心なご婦人で!」

「ふーん……どんな人ッスか?」

「えーとですねえ」


 コンコン、と。ドアがノックされる。三人で顔を見合わせた。心当たりは誰もないらしい。


 どうしようか――と迷っている間に。


「失礼します」

「どーもー」


 扉が開いて、二人の女性が入ってきた。

 スーツ姿のほうは、この棚田高校の理事長兼校長のミサキ。

 もう一人はそれとは対極的。髪をデカいヘアバンドでまとめてブロッコリーみたいにし、袖の長いどてらを幽霊のように着ている。年のころはミサキと同じぐらいか。メガネの奥の目を輝かせて部屋の中を見回す。


「おーおー! なっつかし! 変わってないねぇ!」

「生徒の前ですよ、はしゃがないでください」

「べっつに、いーじゃん。お、ちょっと片付いてる。へーへー、ポットまで!」


 どてら女は電気ケトルに近づくと、しゃがんで袖でぺしぺしと叩いた。


「……ミサキ。彼女は?」

「あっ」


 ミサキの代わりに声を上げたのは――まさちーだった。どてら女を指差す。


「この人ですよ、師匠!」

「おっ?」

「このおばさんが、文化祭で師匠のこと聞いてきた人です!」

「ん~?」


 言われてどてら女は、ぐるりと顔をまさちーに向ける。


「……あ、チミか。ちょっと覚えてるよ~、うん」

「まさちー、知ってるのか?」

「いや、その、名前までは」


 名称不明の女を連れてきたミサキに目をやると、彼女は長くため息を吐いてから口を開いた。


「彼女は……シノザキタカラコ。この漫画部の創設者で――」

「ああっ!?」


 声を上げたのはずーみーだった。


「知っているのか?」

「知ってるも何も!」


 何で知らないの、という顔をされる。俺とまさちーは顔を見合わせた。わからんな? わからん。


「……誰だ?」

「レジェンドッスよ!」


 ……レジェンド?


「この高校の漫画部の創設者で! 在学中にデビューした大物漫画家! 残した原画を見に毎年文化祭に足を運ぶ人がいる! あの! レジェンドのシノザキタカラコさんッスよ!」


 ◇ ◇ ◇


 ずーみーは俺の脚の間で姿勢を正し、まさちーは土下座した。


「大変な失礼を……! なんとお詫び申し上げればよいか!」

「ニョホホ。よいよい、おもてをあげい」

「ははァッ!」


 武士、許しを得て顔を上げる。


「ささ、どうぞお座りください!」

「お、じゃあ遠慮なく。ほれほれ、ミサキちゃんも座りなよ。それともそこのカップルに習って、抱えてくれてもよいのだぞ?」

「やめてください。そういうことを言うから誤解されるのですよ……だいたいそんな体格差はないでしょう」


 ミサキはさっさとコタツの一面を占領する。どてら女――レジェンド――シノザキは、唇を尖らせてその隣の面に座った。俺とずーみーの対面になる。余った場所、俺の右手にまさちーが遠慮がちに座った。


「ウヒ。自分のことまったく知らない人って久々だな。ワシもまだまだってことで」


 俺はともかく、まさちーは展示をやったんだから覚えて……いや俺も一年の時やったけど作者気にしてなかったな。お互い様か。


「存在は知っていたんですが」

「おっ、そう? んじゃデビュー作は?」


 読んでないんだなこれが。部室にはあるんだが、背表紙ぐらいしか見てない。


「先輩、『こうべをたれぬ稲穂かな』ッスよ。ほらこれ」


 ずーみーが脚の中から伸びて、棚にある古い少女マンガを一冊手に取る。


「どういう内容なんだ?」


 百合とは聞いたことがあるんだが。


「学園ものッス。主人公のイナホカナと、生徒会長のタナジョウミサキとの頭脳バトルって感じッスかね?」


 カナとミサキか。親近感を覚える名前だな。


「イナホの所属する文芸部が腐ってるんで、タナジョウは潰したいんスけど、インテリ系オタクのイナホが毎度うまい策でかわすんスよ。あれこれあってお互い惹かれあいながらも、その想いを口にすることはできず……みたいな。アニメ化もされたんスよ? あ、あと棚田高校がモデルだって言われてるッス」

「オウ、後輩よ! 解説ありがとう! そーなんよ、この高校がモデルなの。ミサキはミサキがモデルでねー、フッフッフ」

「……おかげさまで在学中は『お姉さま』なんて呼ばれて大変でしたよ」


 ミサキは眉間を押さえてふかぶかとため息を吐く。


「女子高として描くものだから、翌年から女子ばかり入学してくるようになって……」

「わっはっは。恐るべし漫画のパワー! ビシ!」

「あなたのせいですよ……?」

「いーじゃーん。成金高校って噂で生徒が集まらなくて1クラスしかなかったのが、それで増えたんだからさ」


 ……なるほど。棚田高校の男女比率がここまで偏ったきっかけは、シノザキのせいだったのか。


「せっかくの学校が潰れないですんだでしょ? よッ、お爺様から学校を贈られる女!」

「やめてください」

「なんスか、それ?」

「ニョホホ。気になるかね? この学校はねー、ミサキちゃんのためにお爺ちゃんが作った学校なんだな! 孫ができたと報告を受けたその日に作り始めてね! 究極の孫バカだろ~ん?」


 祖父が作った学校を引き継いだとは聞いていたが、そういう理由で作っていたとは初耳だな。


「私の話はいいでしょう。ここへ来た目的を果たしたらどうです?」

「つれないな~もう」

「目的とは?」


 俺が問いかけると、シノザキはニタッと笑った。


「気になるかい、後輩! ま、だいたい察しはついているじゃろ? これだよ~これ」


 シノザキはドテラの内側から、一冊の本を取り出す。どう見ても、見覚えのある本を。


「『獣野球伝 ダイトラ』! こいつにサインを貰おうと思ってね!」


 ◇ ◇ ◇


「最初はさ~、若いアシの子がヘッドホンでなんか聴いてるから、なんの曲? って訊いたのよ。そしたら野球実況だって言うし、甲子園じゃなくて獣子園だって言うじゃん? ワケわかんないから調べるわけよ」


 若者のトレンドは知ってないとね、とシノザキはニタッと笑う。


「そしたら近々単行本は出るし、スピンオフのアニメもやるって知って、さらにその作者がうちの高校の後輩だって噂よ。やっばいじゃん。なんで教えてくれなかったのさ、ミサキ~!」

「別に、タカコに教える必要はないでしょう」

「おうおう、ワシOGやぞ? 理事やぞ? そんなこと言うと、寄付金払うのやめちゃうぞ~?」

「理事なのか」

「オウ、そうさ! 理事さ!」


 シノザキは両手をあげて、どてらをモモンガのように広げる。


「チミたちがヌクヌクと漫画部で日常をすごせるのも、ワシの寄付金のおかげなのだ! あがめたてまつりたまえ~!」

「はは~ッ!」


 まさちーが律儀に再び土下座した。


「おお? 男子は反応が薄いのう。毎年バレンタインチョコも贈ってるんだし、もっと感謝してくれていいんじゃぞ~?」

「……ああ、そういえば」

「んん~? なんだコイツ、リア充か~?」


 漫画部のレジェンド、シノザキは毎年バレンタインに高級なチョコを部室宛に贈ってくれる。高級ブランドのものだからきっと味もいいんだと思うんだが……俺は中にシロップとか果実が入っているものは苦手で、全般的に口に合わない。一年の頃は一人だったからなんとか食べきったが、翌年からはずーみーに任せている。……とはいえお礼は必要だろう。


「ありがとうございます」

「淡白~! いいも~ん、ミサキちゃんに贈るついでだもんね」

「寄付金はともかく、バレンタインはやめていただいて構いませんが」

「そーいうこと言う! こんなにもミサキちゃんを愛してるのに! 結婚して!」

「既婚者でしょうがあなたは……」

「それはそれ、これはこれ」


 シノザキは呆れるミサキに向かってニッと笑う。


「ああ、話が脱線したねえ。つまりさ、在学中に漫画家デビューしてアニメ化までやった、まるでワシ二世のよーな子の顔を見ようと思って来たんだよ。ところが文化祭に行ったのに、いないから会えないとかでさ。仕方ないから、今日こうやって部室に突撃しにきたわけよ。で……ずーみー先生はどっちだね?」

「あ、その、自分です」


 ずーみーが俺の脚の間でおずおずと手を挙げる。


「ほう! 一年生でデビューとアニメ化か……アニメ化で抜かれたなぁ~」

「あ、自分三年ッス」

「――マジ?」

「マジッス」

「な、なるほどね……ん? じゃあ後ろのとやらは?」

「卒業生だ」

「おお、そういや制服着てないもんね。……何しに来たの?」


 その疑問はもっともだ。


「ずーみーとネームの打ち合わせに来たんだ」

「お、ということは編集者かね?」

「いや。俺はケモノプロ野球を作っているKeMPBの代表社員だ。仕事の一環として編集みたいなことはしているが」

「自分も社員ッスね」

「……ああ! 高校生社長! 聞いた聞いた。へぇ~、そっか、チミがねえ。ほんじゃ、名刺とかもってる? 交換しよ~ぜぇ!」


 断る理由もない。早速シノザキと名刺を交換した。


「ふんふん。KeMPBのオオトリユウくんね」

「……プロダクション?」

「あっはっは、読めなかろう! 四の次だから五と書いて『シノサキ』って読むんだぜ~!」


 しのさきプロダクション、代表取締役社長、篠崎たから子。


「苗字が由来なんじゃよ」

「シノキ? シノキじゃなくて?」

「シノザキタカラコはペンネームだからねえ。本名はシノサキタカコなのさ、内緒だぜ!」


 シノザキは「ばちこーん」と自分で言いながらウインクした。


「漫画家なのに会社の社長なんだな」

「ありがたいことに長年仕事をしてるとさ、選集だの画集だのが出せるぐらいストックができてねー。出版社任せだけじゃなくて企画をやろうとなると人手もいるし、著作権管理とかもしないとだし、そういうのやる会社を作っちゃったのさ」

「なるほど。そういう仕事も必要なのか」

「ハッハッハ! 同じ漫画部のよしみだ! 今日は暇だし、人生の先輩になんでも聞きたまえ!」


 そう言ってシノザキはモモンガポーズをし――


「おっと忘れるところだった! ずーみー先生や、サインちょ!」


 あわただしく本をもってずーみーに詰め寄るのだった。



 ◇ ◇ ◇



「おおッとォ!?」


 ズダァン!


「たっ、タカラコ様、大丈夫でございまするか!?」

「うむ案ずるでない、コケただけじゃ。んー? 物件情報?」


 シノザキが漫画家としてのエピソードを語るなどして盛り上がりしばらく経った時、彼女はふいに床に手をついて盛大に滑ってコケた。ハラハラと舞い散る紙を取って、シノザキは眉を寄せる。


「なんだね、誰か引越しでもするのかいな?」

「すまない。俺がもってきたものだ。片付けよう」

「えっ。大先輩、引越しされるので?」

「俺だけの物件じゃないぞ」


 紙束をまとめながら答える。


「今の事務所が手狭になりそうでな。人も荷物も増えるし、少し広いところを探しているんだ」

「ほう! 景気がいいようでなによりじゃん」

「まあ俺の引越し先も探しているんだが」


 従姉のアパートに転がり込んでから二年ほど経つ。ずいぶん長い「しばらく」になってしまったが、そろそろ出て行く頃合だろう。


「それからツグ姉の引越し先も」


 それはそれとして、アパートに荷物が多い。それどころかカナの部屋に預かってもらっている分もある。従姉ももう少し広い物件に引っ越すべきだろう。


「もちろんずーみーの物件も探しているぞ」

「あざッス! いやー、先輩の知り合いが不動産屋さんだと話が早いッスね!」

「いくつか候補を出してもらったんだ」


 カナの父親は不動産を取り扱っている。今のアパートも事務所も、おじさんの紹介だ。この間相談して、今日には準備ができているのだから、とても助かる。


「だがどこにしようか迷っていてな……」

「おばさんにも見してみ。ふんふん。おー、よさげじゃん。何が不満なの?」


 紙束を奪い取ったシノザキが、パラパラとそれをめくりながら問いかけてくる。


「場所がちょっとな。うまくいかなくて」

「場所?」

「ツグ姉と俺の家は近くにしておきたいんだ。できればアパートの隣同士とか」

「……なして?」

「洗濯物や掃除だけならいいんだが、食事の用意は毎日しないといけないからな」

「……チミが家事全部やってんの? 怠惰なお姉さんだねえ」

「役割分担だ。健康管理の一環でもあるが」


 従姉はケモプロをつくる。俺はそれに従姉が全力を出せるように、それ以外のことをする。


 ……従姉が一人で暮らしていた期間もあるのだが、その間の様子はひどかった。大学で自炊をしていたというのは何だったのかと思ったものだ。後日ミタカから「ほぼ学食、オア、餌付け」と教えてもらったが。


「いいッスねえ、先輩の手料理……」

「健康かー、ワシんとこはスタジオに専門スタッフがいるよ。大人数のメシを作るのは大変だしね。以前はスタッフ個人で食事取らせてたんだけど、だいたいカップ麺ばっか食べるしさ、体壊した子がいてねえ」

「専門スタッフか……」

「健康管理ってことなら、運動も必要だぜぇ~? ウチは近くにデカい公園があるから、みんなでジョギングする時間をとってるよ」


 運動は考えていたことだが、アメリカから帰った反動か従姉のひきこもりが悪化していて、外に一歩も出ないんだよな……。


「参考になった。まあ、そういうわけで俺とツグ姉の家は近くにしたい。できれば事務所もだ」

「自分も先輩の家の近くがいいッスねえ」

「……ということを考えると、なかなかいい配置の物件がなくてな」

「ふーん。んー、オススメしないけど家と事務所を一緒にするって手もあるぞよ?」


 家と事務所を一緒にする。なるほど、かなり条件が緩和されるな。


「オススメしない理由は?」

「登記じゃよ。アレは一般公開されちゃうじゃろ? 本社が別にあるならいーけどさ。ウチの場合ファンが突撃してくっから、すぐ引っ越したね。いやーあん時は大変だった」

「……なるほど。もしやるなら今の事務所は登記上の住所のために残しておかないとか。しかし……」

「なんだね」

「いや、出費が増えるなと」


 事務所とアパートだけで済んでいたところが、確実に一箇所は増えるからなあ。


「それを言うなら自分もッスね~。引っ越したら一人暮らしなわけで……」

「それがしも一人暮らしですが、家賃だけでなくいろいろかかりまする」

「……っというか、チト聞きたいんじゃがね? おばさん、気になってるんじゃがね?」

「なんだろうか」

「いや今までずっとツッコミたかったんだけど」


 シノザキは俺とずーみーを交互に見てから言った。


「……姉弟同士もそうじゃが、チミら、なんで別々の家に住むんじゃ? 付き合っとらんのか?」

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