【ケモプロ】2019年度ペナントも熱い! ケモノプロ野球ドラフト会議兼発表会まとめ!【詳報版】(下)

・メディアミックス、アップデート、技術供与。盛りだくさんの発表会後半!


 さてここまでは発表会の前半に公開されたことが主だったが、ここからは後半、ネット中継終了後に話された内容をまとめていこう。


 (画像:『ケモノ野球伝 ダイトラ』1巻表紙)


 まず発表されたのはメディアミックスの話だった。ケモプロは初期から漫画化を行っており、島根出雲ツナイデルスの捕手・山茂ダイトラを主人公にした漫画、『獣野球伝 ダイトラ』(著:ずーみー)がワルナス文庫から9、10、11月に三ヶ月連続刊行されるのは既報のとおりである。こちらは今回さらなる情報として、電子書籍ストア『HERB Books』の開設が発表された。


 (画像:HERB Project のロゴ)


 なぜケモプロの発表で電子書籍ストアが、と思ったら、こちらの開発にKeMPBが関わっているとのこと。また『獣野球伝 ダイトラ』の電子書籍版も『HERB Books』にて先行販売(一定期間後に他の電子書籍ストアでも販売)とのことだ。さらに『HERB Books』では店舗特典(詳しくは【前の記事】で)も全てバラ売りされるとのことで、コンプリートしたい人や地方在住の方には嬉しい仕様かもしれない。


 そしてさらにKeMPBが開発に協力しているということで公開されたのが、以下のムービーだ。


 (動画:VR図書館のPV)


 VR図書館『HERB Library』。VR空間上に現実と同じ仕組みの図書館を作る、という壮大なプロジェクトだ。おそらくこの記事で全てを語ることは難しいので、後に別記事でまとめさせてもらうとして、ケモプロとの関わりはその連携にある。

 VR図書館では、ケモプロのアバターが利用できる。それどころかケモプロ内からのマップ移動で図書館へシームレスに入ることができるとのことだ。VR図書館とケモプロ、二つのサービスが直接つながっているわけである。


 (画像:図書館のテラスで読書をする雨森ゴリラ)

 /*小規模ながらこれまでもケモプロに図書館は存在した。これがVR図書館に入れ替わるわけだ。


 さらに『HERB Books』で購入した電子書籍を、ケモプロユーザーはマイルームの本棚に設置することができる。マイルームを訪れたフレンドはその本を読むことが可能となっており、つまり電子書籍の貸し借りができるということだ。


 (画像:マイルーム内でごろごろしながらマンガを読むケモノアバターたち)

 /*フレンドのマイルームには所有者が入室している間しか入れないので、無制限に他人に読ませられるわけではない。


 大鳥氏によればHERBとは「Holo-ElectRonic Book」(完全なる電子書籍)の略だそうで、電子書籍ストア『HERB Books』を運営する株式会社HERB Projectには他のプロジェクトでも技術協力をしているとのこと。来る9月20日にはHERB Projectの主催する発表会があるということで、詳細を待ちたい。


 (画像:マイルーム内で麻雀をしながらテレビを見るケモノアバターたち)


 また、マイルームは電子書籍の本棚以外にも拡張されることが発表された。麻雀やトランプなどの簡易なテーブルゲームがアイテムとして購入でき、実際にプレイできるという。これはVRでケモプロを観戦することの価値を高めること、野球の「ながら見」を用意することが目的だという。

 確かに野球はひとりでじっとテレビを見続けるより、仲間と何かしている間に流しておいて実況が盛り上がったらそちらを見る――というスタイルが身近な人もいるだろう。筆者としては飲み食いしながら見られればなおいいと思う。なぜ人は、VR飲食で腹が膨れないのだろうか……?


 (画像:マイルーム内のテレビに映るHakocatsのロゴ)


 そして先ほども少し触れたのだが、Hakocatsがケモプロ内のテレビ系アイテムで視聴可能になる。Hakocatsアカウントとの連携が必要だが、ケモプロからアカウント作成をすると自動で連携されるうえ割引サービスを受けられる。日本語対応もしてくれたので、英語でアカウントを作るのに躊躇していた人はこの機会に申し込もう。これで24時間、箱入り猫が見放題だ(もちろん海外ドラマもアニメもある。アニメは日本のものが多いので、字幕を消して見れば日本のストリーミングサービスと変わらないだろう)。


 (画像:『ササ様と学ぶ野球』のロゴ)


 そしてケモプロが用意したのは箱入り猫だけではない。逆さ猫のササ様がニンゲンと野球を学ぶアニメ、『ササ様と学ぶ野球』の配信が発表された。以下がそのPVだ。


 (動画:『ササ様と学ぶ野球』のPV)


 虚空からぶら下がる謎の逆さ猫「ササ様」に、野球ファンの少年「ニンゲン」が、野球の歴史やルール、観戦の楽しみ方をレクチャーするアニメーション作品だ。とりあえず、PVを見て、そしてササ様の声を聞いてほしい。ヤバいので。一度耳にしたら忘れられないとはこのことだろう。


 根本的にヘタレなのに傍若無人にふるまってイキろうとして失敗するマヌケでブサカワいいササ様を演じるのは、声優の雲居桃|(くもいもも)さん(WAPPA所属)。本作がデビュー作とのことだが、ニンゲン演ずる先輩イケボ声優の字原恭太郎|(あざはらきょうたろう)氏(WAPPA所属)への堂々たるディスり倒しから、大物感を感じる。さすがWAPPA、通好みというかなんというか。


 アニメーション制作を担当するのはマルイミカン。リッチな絵作りで有名だが、今作ではあえてこの簡素なタッチでいくとのこと。監督はこだわり派の萩中天平|(はぎなかてんぺい)氏で、「野球入門の決定版となるべく製作中。流行の絵を追求するのではなく、何十年後でも見返せるものを作る」とのメッセージが紹介された。


 (画像:ササ様のアスキーアート)

 /*アニメ公式サイトのソースに書かれていたアスキーアート。汎用性が高い。


 Hakocatsをはじめとした各種ネット配信サイトで、10月より配信開始。秋アニメに滑り込んだ形だ。


 (画像:放送スケジュール表)


 さてこの『ササ様と学ぶ野球』のPVを見て、最後のスタッフクレジットで気づいた人もいるかもしれない。そう、NPB、日本野球機構が協力団体に名を連ねているのだ。PVの上映後にはNPB広報担当が壇上に上がり、『ケモノプロ野球』に対する応援メッセージを送り、KeMPBとの出会いを語った。


 最初はKeMPBからルールブック――公認野球規則の文言の使用について許可を求める接触があったという。担当者は始め「選手の肖像権などが利用できる承認ゲームメーカーとしての申請ではないのか?」、と不審に思ったらしい。ところがケモプロに日本の野球選手は一人も登場しないことを知って、驚きと共に可能性を感じたとのこと。そして『ササ様と学ぶ野球』でプロ野球に触れるシーンがあり、KeMPBがその許諾を得る段階で再接触。その内容から「野球の普及の為になる」と協力を決めたとのことだ。


 (画像:NPB担当者と握手を交わすユウ)


 そしてNPBとケモプロの関係はこれだけに留まらなかった。KeMPBはケモプロで作り出した技術を応用した、『野球映像・動作分析システム』を、NPBおよびMLBに提供すると発表したのだ。


 (画像:ケモプロのシーン検索画面)


 ケモプロでは『シーン検索』というシステムがある。キーワードや結構アバウトな文字列から該当するシーンを検索するシステムだ。例えば「雨森ゴリラ ホームラン 対左投手」と検索すれば東京セクシーパラディオンの雨森ゴリラが左投手からホームランを打つシーンが検索されるし、「ライナーをキャッチしてそのままベースを踏んでダブルプレー」と入力してもそういうシーンが出てくる。

 これのどこに新規性があるのかと疑問に思う方もいるかもしれない。実際これは動画にタグをつけていけば検索は容易だろうし、ケモプロはゲームなのだからそのデータを参照すれば難しいことはないはずだ。

 このシステムで新規性がある部分は「AIによる画像解析」で自動的にタグがつけられていることだ。内部データも参照しているが、基本的には画像解析AIによって処理されているという。


 この技術を応用することで、現実の野球の映像からもタグを作り検索することが可能だというのがこのシステムの肝だ。つまり試合の映像さえシステムに流し込めば、勝手に分類して検索できるようにしてくれるのである。対戦相手の研究に役立つツールと言えるだろう。


 (画像:壇上で映し出されるスライド。シャーマンの投球とケモノ選手の投球)


 ケモプロはボールに計算能力の大半を割いているという。独自の物理エンジンによって、空気や摩擦の影響などを計算した結果、投手が投げた変化球が曲がるわけだ。それはつまり、現実から与えた入力が正しければ、ケモプロ内で正確に反映されるというわけである。

 これを利用したのがもうひとつのシステム、投球シミュレーターだ。画像のような専用の機材を身につけた選手の動きを取得し、コンピューターの中で投球結果を確認することができる。すでにナックル(無回転に近いボールで、不規則に変化する変化球)のモーションキャプチャーとシミュレーションに成功した実績があるというから驚きだ。投球フォームや変化球の研究が進むだろうと予測される。


 (画像:ビーストリーグ2019年開幕、という新聞記事)


 NPB、MLBへの技術提供の発表の後、突如会場で新聞の号外の配布が行われた。それが上の画像のものだ。発行者はスポーツ新聞の老舗、名勝スポーツ。名勝スポーツ担当者が壇上に上がり、今回の取り組みについて説明した。

 担当者によると以前からケモプロの記事を書くことを考えていたが、諸事情でなかなか話が進まなかったとのこと。今回、NPBとKeMPB両者から協力があって、名勝スポーツでケモプロの記事を取り扱うことができたそうだ。今回配布された号外だけでなく、現実のプロ野球と同じように記事にしていきたいという。「ケモプロは野球だ」と言う担当氏。特に独占契約ということでもないそうなので、いずれケモプロの話題が各スポーツ誌の一面をにぎやかす未来が来るのかもしれない。


 (画像:コンビニの新聞売り場のラック。一箇所だけ空っぽ)


 本記事では古い話になってしまうが、実際に今朝の朝刊ではドラフトの結果が掲載されていた。また数日に渡って「ケモプロとは何か」をこれまでのペナントレースなどを振り返って読者に紹介する記事を掲載するとのこと。ケモプロファンは売り切れる前に買っておこう(今朝の朝刊は3軒もコンビニを回る羽目になった)。



・ケモノたちとのコミュニケーションも。今後直近のスケジュール。


 ここから壇上には大鳥氏のみが残り、直近のスケジュールについて語った。


 (画像:ケモノ選手がケモノアバターから差し出された色紙にサインを書いているシーン)


 まず近日中のアップデートとして、ケモプロゲーム内の特定の場所において、ケモノ選手たちとコミュニケーションが取れることが発表された。画像のように決められた場所に立ち、サインを要求するアピールをすると、気づいた選手が近寄ってきてサイン色紙のアイテムをくれるなどだ。

 またヒーローインタビューも解禁される。これまでケモプロの試合では、活躍した選手が試合後にお立ち台に上がって写真撮影会をすることはあったものの、インタビューに答えることはなかった。アップデート後は「5回裏の勝ち越しタイムリーを打った時」などシーンを指定して選手へ聞きたいことを投票でき、得票率の高いものに選手が感想を答えてくれるとのことだ。

 アクションが限定されていて双方向のコミュニケーションという感じではないが、より選手を身近に感じることができるようになるアップデートだろう。


 そしてこのコミュニケーションの仕組みを用いて、『契約更改』が行われる。これまでケモノ選手たちはお金という概念を持っていなかったが、今後は球団から給料をもらい、お金を扱うようになるわけだ。

 球団の資金は、球場への入場者数、ケモプロを通して購入された物品の金額、ケモプロ関連商品の販売額などによって決まるとのこと。通貨単位はKEM|(ケム)となる(円とのレートは秘密だそうだ。とはいえ、ゲーム内の価値としては1KEM=1円で考えてよさそうである)。

 すでに球団から各選手に年俸は提示されており、その年俸に不満のある選手、および球団から指名された選手との交渉の模様が、9月22日、23日に渡って生放送される。プロ野球と異なり、年俸交渉は具体的な数字まではっきりと公開されるとのことで、バーチャルなのに生々しいやりとりが見られそうだ。


 (画像:ベンチに座るダイトラ)


 なお交渉が決裂した場合、まだケモノ選手たちにはFA|(フリーエージェント)権がないためKeMPBによる調停(専用のAIが算出した年俸での契約)となる。さすがにクビにされる選手はいないと思うが……。


 (画像:試合の様子)


 契約更改の後、9月28、29、30日には、西日本豪雨、台風21号、北海道地震への支援を目的としたチャリティーマッチが行われることが発表された。これらの試合中に購入されたゲーム内アイテムの収益は、すべて被災者支援に当てられるとのこと。何度も買えるもので手ごろなのはジェット風船だろうか。祈りをこめて風船を飛ばしまくろう。



・より『厚み』を増したケモノプロ野球


 来月はキャンプイン。ドラフトで獲得した選手もキャンプに参加し、ますますケモプロはにぎやかになる。今回の発表を通して感じたことだが、ケモプロはより「ケモノ選手たちの実在性」を高める方向に進んでいるのだなと筆者は感じた。


 (画像:果森ロージィに求愛するもフラれる北露地王子)


 野球の試合を見せるだけなら、選手のオフの様子、それどころか練習の様子だって見せる必要はない。しかし、ケモプロはわざわざリソースを裂いて配信している。プロ野球を見せるだけなら、アマチュア時代の経歴なんて設定だけでいい(実際、スタート時はそうだった)。しかし、ケモプロは拡充を始めている。

 ケモプロはただのプロ野球選手ではなく、プロ野球選手の人生を作ろうとしているのではないか? それが、今回の発表会を通して感じた筆者の感想である。


 (画像:屋台で酒を飲み交わす、海洞アキヒサ監督と自然アラシ監督)


 そのところを知りたい――と思っていたのだが、発表会後に用意されていた代表の大鳥氏へのインタビューの時間が、急用が入ったとかでキャンセルされてしまった。個別にインタビューの申し込みはしているので、次の記事まで筆者の疑問の答えはお待ちいただきたい。

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