【特集】今からはじめる「ケモノプロ野球リーグ」。野球に飢えた人も、飽いた人も。(前編)

l| 帰ってきた、『野球』


 少し昔話をさせて欲しい。スマホ世代の若い読者にはなかなか理解できない話だと思うが、昔はテレビは一家に一台だけで、どのチャンネルを見るか(そしてゲーム機を繋いでいいか)の争いが親子間で、兄弟間で繰り広げられていた。

 筆者はゲーム小僧だがゲームは日中までとルールで決められていたので、夕方からは姉と一緒にアニメやバラエティを見ていた。だが、この時代の家長は絶対だ。父親が帰ってくると有無を言わさずリモコンを取り上げられ、スポーツ番組――野球中継に切り替えられる。


 ひとつ断っておきたい。筆者は別に野球が嫌いなわけではない。まだまだゲームに風当たりの強い時代であり、日中に友達とゲームばかりしていて怒られて家から追い出されれば、外で遊ぶしかない。そんなときは野球やサッカーなどに明け暮れていた。スポーツの中でも野球は好きなほうだと言ってもいい。

 だが見ていたアニメやバラエティから切り替えられて映される野球中継は嫌いだった。雨天中止を願ったものだし、延長戦となれば早く終われと呪詛をかけていた。次のドラマの時間に間に合わないだろ、と。


 (写真:古臭いブラウン管テレビ)


 それからおよそ二十年。個人向けデバイスの急速な普及に伴い、チャンネル権争いは死語となった。見たいコンテンツが手元ですぐに再生できる。邪魔をするのは野球中継じゃなく、広告動画になった。筆者のディスプレイから野球は消えた。


 ただ、今は違う。デスクで仕事をしている際はその片隅に必ず野球が存在し、移動中のスマホの画面にはたいてい野球が映っている。

 その野球はかつてテレビを占拠していた野球とは違う――デジタルのプロ野球だ。


 前置きが長くなったが、本稿は2月3日に大型アップデートを迎えた『ケモノプロ野球』(以下ケモプロ)、その紹介記事となる。アップデート内容については前記事を参照いただきたい。

 さて野球好きもそうでない人も、今しばらくお付き合いいただければ幸いだ。



l| ケモノプロ野球とは?


 詳しくは【この記事】や【この記事】を参考にしてほしい。

 簡単に説明するなら、インターネット上でコンピュータ対戦が行われ、それを視聴するものだ。ただしその作りこみは従来のものとは違う。選手たちのAIは画一化されたものではなく、それぞれが機械学習の技術を用いて、思考のみならずモーションまで生み出している。これが選手の個性化に繋がっており、見ていて飽きないプレーが繰り広げられている。


 ちなみに選手はよくあるリアル頭身の人間でも、デフォルメされた人間でもなく――リアル頭身のケモノ人間だ。ケモナー絵師として有名なずーみー氏がデザインした選手たちは個性的で、覚えやすい。

 そうそう、これでもイマイチよく分からない、という人は、同じくずーみー氏が連載しているWebコミック「獣野球伝 ダイトラ」を読むといいだろう。ようはこの漫画の続きが、リアルタイムで視聴できるのだ。


 (写真:獣野球伝 ダイトラの表紙ページ)

 /*主人公は今のところベンチスタートしているが。



l| ケモノプロ野球を見るには?


 公式の動画チャンネルにGO! 試合の生放送も過去の分も全部見ることができる。これが公式で「動画配信版」と呼称されているものだ。


 だが公式の「動画配信版」には実況はない。ケモプロではUGCが奨励され、実況は実況主などのユーザーの手にゆだねられている。誰でも好きなように野球実況をつけて、それを配信していいよというスタイルだ。だが、公式のものがないわけではない。各球団にはそれぞれ公式チャンネルがある。なので、こちらを見ることを初心者にはお勧めしたい。

 個人的にオススメなのは「島根出雲ツナイデルス公式チャンネル」と「ダークナイトメアチャンネル」だ。前者は女性ながら豊富な知識と実家感のある声で人気を博する。後者は社長自ら出演しているなどいろいろ衝撃的だ。たびたびリンゴの広告が挟まるのはご愛嬌だが、農作業で不定期なのが辛い。


 (写真:ダークナイトメア仮面)

 /*これが社長。いや本当に。


 公式チャンネル以外だと「やきうのあんちゃんズch」「ケモノ放送局」辺りをオススメしておきたい。どちらもちょっとクセが強いが、実況自体はしっかり行っているので安心してほしい。今後もどんどん配信者は増えていく気配なので、新しい実況主を探すのも楽しい。


 実況動画は手軽に見れるし、本当に入り口としてはオススメだ。だが、筆者としてはぜひそこから一歩先に進んでもらいたい。専用の視聴ソフトウェアを使う「クライアント版」をぜひ試して欲しいのだ。


 (写真:クライアント版ダウンロードページ)


l| リアルな広さの球場を歩く


 クライアント版のインストール方法は【こちら】を参照してほしい(そこまで難しいことはないが)。インストールが終わり起動して最初にすることは、観戦客となるユーザーの分身、アバターの作成だ。リアルタッチな選手たちと違い、コミカルタッチなアバターをいくつかのパーツを組み合わせて自分好みに仕立てあげられる。


 (写真:アバター編集画面)

 /*筆者自慢の牛娘。体型の調節で一日潰れた。オリジナルのずーみーケモノキャラを作ろう! という感じで人によっては無限に遊べる。


 面倒だという人にはランダム作成もあるし、なんなら一回だけ無料で作り直しできる(二回目以降は有料)ので、早く先に進みたい場合は適当にすませてもよい。


 アバターの作成が終わると全機能が解放される。チュートリアルもあるがいつでも受けられるので、後回しにして早速球場に繰り出そう。現在開催中の試合を一覧から選ぶことができる。


 (写真:試合一覧画面)

 /*ちなみに過去の試合に出かけることもできたりする。


 球場に到着すると座席を選ぶことになる。ここで無料席と有料席があることに注意。詳しくは【この記事】にあるが、有料は動画配信版にアバターが確実に映り、選手に影響を及ぼす席。無料はその保証のない席になる。まずは無料で問題ない。好きな席に座ることができる(誰かが座っている席でもだ)。


 さて座席を選ぶとすぐに移動するかどうか選ぶことになるが、筆者は(試合開始まで時間があれば)球場を散策することをオススメしたい。立ち並ぶ売店、往来する野球ファン(のケモノ)。筆者は数回、父親に連れられて球場に行ったことがあるが、まさにあの時の空気がそのまま再現されていると感じた。


 (写真:売店の様子)

 /*売店では買い物もできる。メニューから一覧で出すこともできるが、こっちの方が品揃えを見たり店員の反応を見れたりして好きだ。


 そして時間さえ合えば、バスから降りてきたり控室から出てきたりする選手の姿を見ることもできる。声援を送るとノリのいい選手なら手を振ってくれたりするのが嬉しい。


 (写真:手を振る瓦ノ下ツツネ)

 /*ツツネさーん! 俺だー! 再婚してくれー!


 階段を登ればスタンドだ。観客で溢れかえる中を進んで、自席につこう。……裏技っぽいが、フェンスギリギリで立ち見するのも可能だ(ホームランボールのキャッチはできないそうだが)。

 なお球場はすべてリアルスケールだ。一部の球場は現実に実在するものなので、後述するVRモードで歩き回ると、自宅にいながらにして観光している気分になれる。



l| いざ観戦! チームを応援しよう!


 アバターが座席に着くと観戦が始まる。ちなみに外野席に座ったからといって『選手が豆粒みたいだ』と不満を漏らす必要はない。視点は 1.野球中継のような自動カメラ 2.投手の背後からの固定視点や特定選手を追跡するカメラ 3.自席からの視点 から自由に選ぶことが出来る。2で選べるポイントはかなりたくさんあり、変り種ではベンチから観戦ということも可能だ。

 さらにサイズ可変のワイプ画面を1つ使うことができるので、自席から見つつワイプで自動カメラを見る……ということもできる。球場にポータブルテレビを持ち込んでいる感覚だ。


 (写真:外野席からの視点とワイプの自動カメラ)

 /*オペラグラスというアイテムを買うと自席から望遠で見れるというよくわからないこだわりもある。……よくアイテムリストを見たらポータブルテレビもあった……。


 さてすぐに試合開始――とはならない。現実のプロ野球の試合もそうだが、選手の練習があり、スタメンの発表があり、イベントがあり、それから試合が始まる。常設されているイベントは今のところ、球団マスコット撮影会と始球式だ。


 (写真:マスコットのダークナイトメア仮面とイージスちゃん)

 /*イージスちゃんは癒し(3Dキャラなんだから普通に美少女のモデルにすればいいところをあえて着ぐるみというセンス)。ちなみにマスコットにもAIが搭載されているらしい。


 始球式というとアイドルがマウンドに立つイメージだが、ケモプロでは一般ユーザーのアバターが立つ。君の自慢のアバターをマウンドに立たせたければ、始球式抽選券を購入しよう。当選しなければ支払いは確定しないので安心してほしい。ちなみに筆者は当選したことはない。かなり倍率は高そうだ。


 さて試合前に応援の仕方を確認しておこう。コンピューターに応援を? と思うかもしれないが、選手たちは思った以上に応援に敏感に反応する。球場を盛り上げることがチームの勝利につながる――かもしれない。

 まずはチャットから確認してみよう。エリアチャット、グループチャット、応援団チャットの3種類がある。エリアは付近のユーザーと共通、グループは作成したグループ内、応援団チャットは先の記事で紹介した応援団メンバー全員とのチャットだ。どこでもいいからテキストを打ち込んでみよう。すると――アバターが動き出す。


 (写真:立ち上がって片手を突き上げるアバター)


 これは「自動エモート設定」がオンになっている場合の機能だ。エモートは一覧から自分で実行することもできるが、チャットを打ち込むと内容から自動でそれらしいエモートを実行してくれる。「888888」と打ち込めば拍手をしてくれる――と聞けば、「単なるキーワード設定でしょ?」と思うかもしれない。だが運営に問い合わせたところキーワードは設定していないらしい。「打ち込んだ文字」「以前の発言」「試合状況」「周囲の反応」などからAIが学習してエモートを選んでいるとのこと。


 (写真:手を上げて拍手をしているアバター)(写真:気まずそうに小さく拍手をするアバター)


 確かに盛り上がりどころで「888888」を入力すると写真左のように拍手をするが、無関係で誰も拍手していない状況だと写真右のように気まずそうになった。自分でエモートを押さなくても(奇抜な発言でなければ)かなり「らしい」動きをしてくれるので、操作量が減って応援に集中できる。

 チャットとか恥ずかしいし……という人は「連動エモート設定」をオンにしておけば、こちらが何もしなくても周りと同調した動きをしてくれるので応援の輪を乱すことはない。というか両機能ともデフォルトはオンなので、よほどこだわりがなければそのままでいいだろう。


 さらにケモプロにはボイスチャットも搭載されている。これもテキストチャットと同じ区分けがされているが、エリアチャットについてはデフォルトでは他の人の声は「ケモノ語」(意味をなさない動物の鳴き声や唸り声のようなもの)でしか聞こえない。これがかなり異世界情緒があってオススメだ。不快な声が流れてくるわけでもないので、ボイスチャットの受信はしておいたほうが絶対よい。


 (写真:タオルを首にかけスティックバルーンを打ち鳴らすアバター)


 チャットだけでかなりの文章量になってしまったが、もちろん応援グッズもある。タオルをぶん回してもいいし、バルーンをバチバチ叩き鳴らしてもいいだろう。実際の球場では禁止の流れになりつつあるジェット風船も、ケモプロでならゴミの心配もなく飛ばしまくれる。ジェット風船は入場特典|(ログインボーナスのようなもの)でもらえることが多いので、どんどん使っていって問題ない。なんなら100枚セットを買おう。


 (写真:ジェット風船が舞うスタジアムの様子)


 前置きが長くなったが、いよいよ試合開始というところで、後編に続きたい。

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