唾をめぐる争い

今日も私は吐きかける。


唾を。

大地に、アスファルトに、駅のホームに。

そして大好きなあなたに。


私の唾は汚いだろうか。

ううん、そんなことない。私の唾を美味い美味いと飲む人間だっているのだ。


ごくごくゴクゴク、喉を鳴らして。

舌を突き出されたならば、私は喜んでその上に唾液をそっと垂らし落とすだろう。


艶かしく光る透明の糸が線を引く。

そうして私たちは深く長いキスをする。


それはとても気持ちの良い行為ものだ。


私の唾は私の口内で生成されたものであるが、

私はそれを自身でコップに移して飲みたいとは思わない。

私の身体を離れた途端に、それはなんとも言えない嫌な匂いを放つから。


世界は相対的で、絶対的な指標などない。

私が言っているのはつまりそういうことだ。


だから今日も唾を吐く私をどうか、今日のあなたは許してほしい。

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