マタ三人デドコマデモ

Salt

マタ三人デ一緒ニ

ジャパリパークからヒトが立ち去ってから時がたったある日-僕はかばんに出会った。


「初メマシテ、僕ハラッキービーストダヨ。宜シクネ。」

「あ、どうも、初めまして。カバンです。」


僕はこの島のパークガイドロボット《ラッキービースト》の総活を行っている。

基本的にはパークガイドロボットは各エリアに分散して、管轄のエリアが決まっている。

僕は他のラッキービーストな総括をしているため、様々な地方の移動を許可されている。


ある日ミライの帽子を見つけ、そこでうまれたしたフレンズ《カバン》を追いかけた。


フレンズたちが自分の事を『ボス』と呼んで親しんでくれているのは知っていた。

しかし、フレンズの話を聞いていながらも話しかけてはいけない。生態系の維持が原則だからだ。

フレンズへの干渉が許可されているのはヒトの緊急事態対応時のみ。


僕はフレンズと話したいと思ったことは無い。その概念すら無かった。

それは、サーバルやカバンとの旅を通しても変わることは無かった。




地響きと共に車は飛ばされ、衝撃が体中に走る。


「かばんちゃん!ボス!」


一瞬の浮遊感とともに草むらに投げ込まれる。振り返ると、サーバルは黒セルリアンに飲み込まれていた。


しかし、僕はミライにパークを託された。

ヒトの安全を守るのがパークガイドロボットの僕の務め。フレンズより人を優先させる。


見上げるとカバンの瞳がこちらを向いていた。


「ァ……」


その瞳は確かな意思を持っていた-サーバルを助けると。


ヒグマに抱えられカバンとの距離は徐々に離れていく。

でも、このままでは黒セルリアンに食べられる。

僕には力がない、けれど、今僕に出来ることを…!


「通信、通信-カバンヲ助ケテ…!」




カバンが食べられたという話をヒグマたちが話してるのを聞いてしばらくの時間がたった。


「サーバル、三人デノ旅、楽シカッタヨ。」

「当たり前じゃない。カバンちゃんを助けて、またいろんな所行くんだから。」


何故こんな言葉が出たのかは自分でも分からない。

けれど、僕は冷たい機械の体の奥に温かいものを感じた。


「コレガ、感情ナノカナ?」


一人呟くとサーバルの後ろ姿がやけに小さく見えた。




黒セルリアンの前足が船にかかる。途端に船は悲鳴を上げ、沈んでゆく。


「カ(バン)…サ(ーバル)…」


体が動かなくなっていくのを感じる。

ジャングル、高山、砂漠、湖畔、平原、図書館、ライブ、雪山、ロッジ。様々な思い出が湧き上がってくる。


まだ、一緒に居たかったなあ。


身体がほのかに暖かくなるのを感じる。

目を覚ますと僕の前に悲しそうなカバンとサーバルがいた。


ニ人には悲しい顔をして欲しくない。笑っていて欲しい。


「オハヨウ、カバン。」


また、2人に会えた。それだけで僕は嬉しかった。


また、島に平和が戻った。


「サーバルちゃん、『食べちゃうぞ』っ言ってみて。」

「え?何で?食べないよ。」

「ちょっと思いついたんだ。」

「じゃあ、うーがおー!食べちゃうぞ!」

「食べないで下さーい。」

「サーバル、食ベチャダメダヨ。」


こんな風にでも話が出来るのは嬉しい。『嬉しい』という感情ももう不思議ではない。

僕はこのニ人との旅が楽しかった。



僕はまた、カバンと共に旅に出ることになった。


この島にも平和が戻った。ならば他のパークガイドロボットに任せても大丈夫だろう。

それにあんなに心強いフレンズ《なかま》たちがいるのだから。



「ラッキーさんあの島にも名前ってあるのかな?」


「ゴコクエリアダネ。管轄ガ違ウカラ僕モ詳シク知ラナイケドモ。キョウシュート同ジヨウニ、イクツモ地方ガアッタリ、今モフレンズガイル可能性ガアルネ。」


説明すると、カバンは希望に満ちた目をする。


「デデデ、電池…バスノ電池ガ…」

「ここでー?」


ふと、後ろから声が聞こえる。


「ああ!サーバルちゃん。皆ー。」

「エヘヘ、もうちょっとついて行こーかなーって。」


僕はやっぱりこの2人が大好きだ。


「カバン、サーバル、マタ三人デドコマデモ旅ヲシヨウ」







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マタ三人デドコマデモ Salt @0920

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