一章 王都への道のり、隠れた闇

 王都へ行く為、俺はフェンと《コモンウルフ》や《ハイウルフ》がわんさかいる草原を歩いていた。

 言うまでもないが、全員、俺を狙っている。


 「な、なあ、フェン。こんな所、歩いてて大丈夫なのか?」


 「(もしもの時はバシッとやっちゃえばいいじゃない。所詮、下級魔物なんだし)」


 焦る俺とは真逆に、フェンは特に気にしていないようだ。

 フェンの声は、俺の首にかかっているペンダントに埋め込まれた、宝石から聞こえてくる。

 普通、使い魔は戦闘の時以外、『魔石』と呼ばれる宝石の中に入っており、姿は現さない。


 「(私と契約したから、『加護』の効果があると思うんだけど、ジル、知らないの?)」


 「『加護』は知ってる。使い魔と契約した際、その使い魔の階級によって付加される能力だろ」


 「(なら、分かるでしょ?私みたいな最高クラスの使い魔がいたら、『加護』もまた、間違いなく最高クラスの筈よ)」



 神獣フェンリルの加護

 『全魔法適正』S 魔法晶による適正結果に関わらず、全ての属性魔法を使用可能。高ランクほど、使用できる魔法が増える。

 (元々、魔法適正を持っている主には、重複している分だけ上乗せされるが、ランク上限はSまで)


 『階級バリア』C Cランクまでの魔物の攻撃を全て無効化するバリアを付加。


 『筋力増加』A 契約者の元々の筋力に、ランクに応じて上乗せされる。


 『再生速度増加 』D 治癒速度。高ランクほど、治癒にかかる時間が短縮される。



 フェンから、実際に俺に付加されている加護の説明を訊き、驚いた。

 最高のSランクの能力まであるとは、流石、神獣である。

 それに、『階級バリア』でここにいる、《ハイウルフ》Dランク、《コモンウルフ》Fランクからの攻撃を無効化出来るのは実に便利だ。


 「凄いな。これだけの能力があるのか」


「(凄いでしょう?)」


 魔石の中で、フェンが鼻息を漏らす。

 薄い胸(言ったら殺される)を張ってドヤ顔をしている姿を思わせた。


 「(ジル、今ちょっと失礼な事を考えなかった?)」


 俺は、フェンの殺気の籠った言葉にビクリと身体を震わす。

 こいつは、俺の心の中まで読めるのか?


 「ま、まあ、それはフェンの気の所為として。所で、魔法学校について、なんで詳しく知っているんだ?」


 むー、と唸るフェン。


 「(別に、そんなに詳しい訳じゃ無いけど。ちょっと...ね)」


 歯切れが悪いな。

 一々、隠す事はなのか?

 まあ、言及はしないが。


 「でも、この力があれば、#あいつら__グルヴェ家__#を見返してやれる。もう、『無』なんて言わせない」


 どろりとしたものが、俺の中で動き出すのが分かる。

 親父も、兄貴も、皆、皆殺してやる。

 俺を見捨てた奴らに復讐してやる。

 まずは手足を、次に根元から少しずつ刻んでやる。

 どれだけ悲鳴をあげようが、助けてもらえない。

 絶望に絶望を重ねても、また絶望がやって来る。

 あいつらにも思い知らしてやるのだ。




 「(.......)」


 フェンは短く息を吐く。

 契約者の闇を感じ取ったのだろうか、顔を険しくしていた。


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