第2話
「本当に異世界に来たんだなー」
黒斗は今一人で部屋にいる。あの後、王女様に言われるまま鎧の男たちの後ろについていった。軽く王城について説明を受けた後、各個室に案内された。その時に鎧を着た騎士の飾りやキラキラと光っているシャンデリアなど城にあるものほぼ全てに驚いた。外を見てるとだいぶ暗くなってきた。この後にはパーティーがあるらしい。
1時間後(この世界の時間は地球と同じらしく1年は365日、1日は24時間らしい)にまた呼びに来るそうだ。それまではゆっくりとしていてと言われたが、気持ちが落ち着いておらずソワソワしてしまう。じっとしてられず部屋にある物を見ていく。どれも高価そうな物ばかりに感心していると外で声がした。
「パーティーの準備してができましたので、皆様お集りください。」
予定よりも早く準備ができたようでその言葉にゾロゾロとクラスメイトたちが集まってくる。全員集まったことを確認すると移動を始めた。そして王様の目の前にやってきた。周りにはたくさんの人達がいる。中には成金趣味のようなキラキラしたおっさんもいれば、スーツのような地味な格好の人もいる。周りにいる人たちを順番に見ていると王様が祝杯の言葉を述べた。
「皆、今日は急な呼びかけに集まってくれ感謝する。我が国は勇者様たちを召喚することに成功した。今日は皆楽しんでいってくれ」
その言葉を合図に全員がグラスを掲げた。異世界の料理は地球の料理に似ていた。味が少し違うが見た目はそっくりそのままだ。意外に美味しいのでいろいろなものを食べていると白音がこちらにむかってきた。とても疲れているようだ。白音が近づいてくるのと同時にクラスメイトに目を向ける。クラスメイト達は異世界の食事に夢中で黒斗を見ていない。クラスメイトの確認が終わったと同時に白音が話しかけてきた。
「黒斗君、本当にここ日本じゃないんだね。信じられないよ。」
白音はいつも通りの笑顔で話しかけて来た。だが少し疲れているようにも見えた。
幼馴染だからか黒斗には、それがわかった。
「俺もイマイチ実感がわかないよ。ところで白音、疲れているようだけど大丈夫?」
白音は一瞬迷った顔をした。恐らく、黒斗に話すか話さないかを迷ったのだろう。
しかし、表情を元の笑顔に戻すと何事もなかったかのようにふるまった。
「大丈夫だよ。きっといろいろなことが急にあったからビックリしてるんだと思うよ。心配してくれてありがとう」
なんとなく黒斗は白音が嘘を言ってるとわかった。嘘を言っているというよりか、もっと他のことで困っていると思った。何が原因なのかととりあえず周りを見渡してみると王子様がこちらをずっと見ている。たしかこの国の第一王子は第一王女と双子で18歳とメイドさんが言っていた。
それも結構なわがままで困っていると言っていた気がする。ちなみにこの事を聞いたのは召喚された場所から自分の部屋に移動している途中だ。クラスメイトのチャラいやつが王女様に向かって質問しまくっていた時に近くにいたメイドさんに聞いた。他にも何人かの貴族に人たちが女子たちに話しかけているのが見えた。
「あ、そいえばあっちに美味しい食べ物があったから食べにいかない?やっぱり疲れた時は美味しい食べ物を食べるのが一番だよ。」
白音にそう言って王子様が自分たちが見れない位置のテーブルに移動した。王子さまは舌打ちしたように見えたが黒斗は気にしないことにした。あとのことは未来の自分に任せよう。
そう心に決め白音に視線を戻すとおいしそうにご飯を食べていた。
本当に幸せそうに食べているのを見て黒斗もうれしく思えた。
そんな白音を横目に再び会場を見渡してみると王女様のところに人だかりができており、よく見るとクラスメイトの男子たちが猛アタックしていた。
「王女様ってララ様って言うんですよね」
「か、か、彼氏はいますか?」
「な、何カッ…… ぷぅべホッ」
「豚野郎って罵ってくだs……ブホッ」
「どんな男性が好きですか?」
……途中変なこと聞いて殴られてるやつらがいたような気もするが誰もに気していない。
(みんな良くやるよな…… ん? あれは……)
そんな光景を見ていると、ある料理が目に入った。
(おぉ! ピザだ! まさかこっちでも食べれるとは…… おいしいのかな)
黒斗はそんなことを考えながら近寄っていき、手を伸ばした瞬間ピザが消えた。
(え、え、えぇぇぇ……)
食べれなかったことに項垂れているとピザをとった張本人が黒斗に気づいた。
「ん? おぉ、すまんな小僧。ここの料理は絶品だからなぁ、ついつい夢中になって食ってたわ」
「こ、小僧て…… ま、まぁまだありますから…… あは、ははは……にしてもこの料理美味しいですね」
黒斗の手を伸ばした先でピザを食べていたのは貴族達がいる中で明らかに貴族には見えないが、位の高そうな服をまとった筋肉だった。いや、筋肉もりもりな男だった。
「まぁな、そうだあっちにあったオレンジ色のソースのかかったやつ食ったか?」
「ああ、あの何とも言えないうまさの肉みたいなやつですよね。すごいおいしくてお代わりしちゃいましたよ」
男はピザを食べながら黒斗に別のテーブルの料理のことを訪ねてきた。
「おう!そうかそうかお前も気に入ってくれたか! ほかのやつの口には合わなかったんだよな。 よし、特別にこれを食わせてやろう!」
そういって何もない空間から差し出してきたのは何かの肉に見える物体だった。
「え? 今の… 何ですかこれ?」
「まぁ、食べてみろ」
押し付けるように渡された皿を受け取り、口に入れてみると、肉汁が口の中に広がりスパイシーな味付けがさらに食欲を増加させた。
「ん!? んん!? んーー!! なんすかこれ! うまいです!」
「がはははははは! だろう! それはだな!『一角牛』という魔物からドロップした肉だ!」
「ま、魔物の肉ですか…… さすが異世界……でも美味いからいいか…」
魔物の肉と聞いて黒斗の表情が一瞬曇るが、おいしいからまぁいいかぁと、自分を納得させ残りの肉に食らいついた。
「お、っとそういえば名乗ってなかったな。 俺はノーマコローオ王国騎士団騎士団長エルドラド・フォンだ! エルと呼んでくれ」
エルは思い出したかのように自分の身分を告げた。これには黒斗も驚いた。
騎士団長がこんなところでのんきに飯食っていてもいいのかなど言いたいことがあったが何か訳があるかもしれないと、気しないことにした。気にしたところで、召喚されたばかりの黒斗では、大して何も変わらないとも言える。
「き、騎士団長ですか…あ、俺は水無月黒斗と言います」
「おう!よろしくなクロト!」
「あ、あそこのやつ美味そうですよ!」
「なに! いくぞ! クロト」
エルと話している最中に、他の生徒が食べているものが目につきエルと共に料理へ駆け寄った。
この後すっかり意気投合した黒斗とエルは白音も交えながら異世界料理を楽しんだ。
その後、パーティーは終わり各自部屋に戻って眠りについた。
……翌朝
「ふぁ〜〜あ、よく寝た」
コンコンッ
「お目覚めでしょうか? この後お話がありますので大広間までお集まり下さい」
黒斗は外からメイドさんの声が聞こえて、急いで用意をし始める。
ー大広間にてー
「お集まりいただき感謝いたします。皆様にお集まりいただいたのは、皆様のステータスを確認させていただきたくて、集めさせていただきました」
「ステータス?」
王女様が説明している時に出てきたステータスという言葉に何人かが反応した。
「ええ、ステータスです。そちらを見てからでないと訓練のメニューだ作れませんからね」
「あぁなるほど。それって俺たちでも見れるんですか?」
「はい、むしろ自分以外に見せるには自分でそう設定しなければ見せることができません」
「へぇー」
「では心の中でステータスと念じてください」
(ステータスかぁ少し楽しみだな…ステータス!)
◆ステータス◆
名前:水無月 黒斗 Lv.1 年齢:17
性別:男 種族:ヒト族
体力45/45
魔力20
力5
生命力3
知力2
敏捷力3
運-10
攻撃力6 魔法攻撃力4
防御力6 魔法防御力6
《スキル》
言語理解 アイテムボックス
《固有スキル》
【封印:感情】パンドラの匣:3/3(所持者以外視認不可)
《魔法》
《称号》
異世界人 封じられし匣の所持者
《パンドラの匣》
感情が一定値を超えることで封印が解除される。
解除される感情の封印の数は3個。
どんな効果が解除されるかは神ですらわからない。
《異世界人》
異世界から来た人間につく称号。
言語理解を覚えることが出来る。さらにアイテムボックスか鑑定スキルを覚えることが出来る。又どちらも覚えているものも存在するが稀。
《アイテムボックス》
10種類+最大MP量×1種類の物を入れることが可能。使用時消費MP無し。
《封じられし匣の所持者》
この称号を持つということは、汝にも試練が訪れるのであろう。
決してくじけるな。 決してあきらめるな。 決して折れるな。 決して感情に飲み込まれるな。
うまい事は言えぬ。しかし、その道は汝の―――も通った道である。
(んん?ステータスの基準がわからないから何とも言えないんだが…低い…のかな?…あと『パンドラの匣』?なんだこれは…)
黒斗がそんなことを考えているとララ王女から全体に声がかかった。
「この世界での村人の男性のステータスはこちらになります」
◆ステータス◆
名前:村人A Lv.10 年齢:20
性別:♂ 種族:ヒト族
体力150
魔力30
力10
生命力10
知力3
敏捷力10
運10
攻撃力20 魔法攻撃力6
防御力20 魔法防御力9
《スキル》
《魔法》
《称号》
ララ王女の告げたステータスは決して高いものではない。その辺にいる一度も魔物と戦わずに過ごしてきたような男性のステータスである。そのステータスにすら負けてしまった黒斗は内心とても凹んでいた。
しかし、一筋の希望。レベルアップによるステータスの上昇にかけてみることにした。
そんな凹んだり決意にも得たりしている間にも、王女の話は進んでおりステータスの公開設定について説明をしていた。
「ステータス画面の右上に公開設定というものがあると思うのでそちらを押していただくと「おおおおーー」え? どうしました?」
王女が一生懸命説明をしているときに生徒たちから歓声が上がった。
「勇星! お前めっちゃ強いじゃん!」
「え? そうかな?」
◆ステータス◆
名前:英澤 勇星 Lv.1 年齢:17
性別:男 種族:ヒト族
体力300/300
魔力300/300
力15
生命力20
知力30
敏捷力25
運100
攻撃力30 魔法攻撃力60
防御力40 魔法防御力90
《スキル》
言語理解 アイテムボックス 鑑定:Lv1 剣術:Lv1
《魔法》
光魔法:Lv3 聖魔法:Lv2
《称号》
異世界人 選ばれし者
《選ばれし者》
とあるものに導かれし者につけられる称号。特に補正はない。
「そういう元輝の方も俺より高いのあるじゃん」
「ん? あぁこれ?」
◆ステータス◆
名前:龍崎 元輝 Lv.1 年齢:16
性別:男 種族:ヒト族
体力225/225
魔力150/150
力25+10
生命力15
知力15
敏捷力30+10
運25
攻撃力50+20 魔法攻撃力30
防御力30 魔法防御力45
《スキル》
言語理解 アイテムボックス 鑑定:Lv1 拳闘術:Lv4
《魔法》
風魔法:Lv2
《称号》
異世界人 拳豪
《拳闘術》
拳を使った技が使えるようになる
《拳豪》
己の拳を信じ生きてきた者が得ることの出来る称号
力、敏捷に補正。
「でもさぁ、麗子なんか魔法がハンパないぜ?」
「ん?確かにすごいな」
「えぇ?そんなにすごくないよ?」
◆ステータス◆
名前:清水 麗子 Lv.1 年齢:16
性別:女 種族:ヒト族
体力225/225
魔力550/450+100
力5
生命力15
知力45
敏捷力5
運100
攻撃力10 魔法攻撃力90
防御力30 魔法防御力135
《スキル》
言語理解 アイテムボックス 鑑定:Lv1
消費MP軽減
《魔法》
火魔法:Lv2 水魔法:Lv2 風魔法:Lv2
土魔法:Lv2 光魔法:Lv3 闇魔法:Lv2
《称号》
異世界人 魔導の戦姫
《消費MP軽減》
魔法を使用する時に消費する魔力を1割減らすことが出来る。
《魔導の戦姫》
魔法適性に火、水、風、土、光、闇を加える。魔力が少し増える。
「白音はどうなんだ?」
勇星が白音に訪ねる。
「よくわかんないんだよね…」
◆ステータス◆
名前:暁 白音 Lv.1 年齢:17
性別:女 種族:ヒト族
体力375/375
魔力400
力5
生命力25
知力40
敏捷力7
運50
攻撃力10 魔法攻撃力80
防御力50 魔法防御力120
《スキル》
言語理解 アイテムボックス 鑑定:Lv1
《魔法》
聖魔法:Lv4 水魔法:Lv2
《称号》
異世界人 癒しの加護
《癒しの加護》
回復系魔法に大幅補正
「麗ちゃんの方が強いんじゃないの?」
「しーちゃんは支援特化型みたいだね、私と比べるのは間違ってるかな」
「えーなにそれー」
勇星たちが盛り上がっている中、木場達もまた盛り上がっていた。
「木場さん!俺鑑定持ってましたよ!」
「俺は火魔法使えるみたいっす」
「ん?そうか俺は風属性に槍か」
「俺短剣術に雷魔法でしたよ」
◆ステータス◆
名前:木場 翔太 Lv.1 年齢:17
性別:男 種族:ヒト族
体力150/150
魔力100/100
力5
生命力10
知力10
敏捷力10
運10
攻撃力10 魔法攻撃力20
防御力20 魔法防御力30
《スキル》
言語理解 アイテムボックス 槍術:Lv3
《魔法》
風魔法:Lv2
《称号》
異世界人
「そういえばアイツはどうなんすかね?」
「はっ、あんなやつ村人以下だろ」
「おいおい村人が可哀想だろ」
「ぎゃははははは」
「俺鑑定でちょっくら見てきますわ」
「おーういってこい」
木場たちが鼻で笑いながら遠巻きに黒斗のことを馬鹿にして、鑑定を使ってステータスを見ようとしていた
(はぁ、どうしようなぁ…)
「鑑定!」
(鑑定…鑑定!? は、ちょ、え!? あいつは石田…)
「プックックックぶあははははは!ちょwwwまじかよwww木場さんこいつやべぇよwww村人なんかよりもくそ弱えぇwww魔法も使えないしくっそざこだわぁwww」
「まじかよ石田!おいおい、そんなカスが勇者様の足を引っ張るなんて迷惑もいいとこだよなぁ?水無月ぃ?ア゛ア゛?」
「……」
「おい、どうなんだぁ?ア゛ア゛?無視してんじゃねぇよ?おい」
「……」
「だぁかぁらぁ!無視すんなって言ってんだろがァ!」
「黒斗くん…大丈夫?」
黒斗が不藤によって鑑定されステータスがばらされてしまい、クラスの一部の連中の笑いの的になっていた。
そんないつもは(たまたま)見ないクラスの様子に白音が驚きながら何も言わない黒斗に問いかける
「ああうん」
「ほんとに?」
「ああ」
「なら…」
「本当に大丈夫だから。俺もう行くわ」
黒斗はそう言いさっさとステータスの受付を終えて部屋に帰っていった。
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