出会い、集結
その邂逅は最強の友情
藍月が輝く月下の下、僕は白のyシャツと黒スーツのズボンをはき、黒の革靴を履いたいつもの恰好で、ここ都心地方最大の街、東京区新宿市の街を歩く。ここはいつ来ても一番臭う。人が人を狩り、欲に溺れた人は身を滅ぼす。天使時代、能天使として前線で悪魔と戦っていたが、それがこんな世界のためだと思うと、なんだか馬鹿らしくなってくる。もっとも、今は天使をやめ、天人として存在しているから、もうそんなの関係ない。とにかく今は、悠と大和を奪ったあの組織の足取りを掴まなければならない。と思っているのに、今日もこうやって、収穫の無かった日を憂うために、ダラダラと散歩をしている。
僕のいつもの散歩コースは、東京駅から進んでひたすら思い立った方向に歩くだけ。帰るときはタクシーで駅に帰る。贅沢な散歩だが、こうでもしないと、臨時収入も望めない。誰か人知れず殺されそうになっていないか探していると、ふと、気になる青年が目に留まった。
彼の背後に半透明の少女が浮いている。しかも、明らかに青年はその子と会話しているように見えた。おそらく秩序から外れてしまった人だろう。なにがどうあれ、あのような普通じゃない人はいずれ天使たちに目を付けられる。可愛そうな青年だ。そう思っていると、明らかに不良な奴らがその青年にぶつかり、難癖をつけてきた。よし、臨時収入獲得。僕は嬉々として彼らの間に割って入った。
「ちょっと待って。まあ落ち着いてよ、そちらの不良さんがた。」
「あ、なめてんのか。金出せよ」
「あいにく今君たちにあげる持ち合わせはないんだ。ここは僕の笑顔に免じて帰ってくれるかな?」
「うぜえな。とりあえず死ね」
そういい、僕の顔面目掛けて殴り掛かってきた。やはりこういう不良君たちはすぐ殴り掛かってきて楽だ。これで完封しても正当防衛として話しが作れる。僕は普通の人には見えない分身を出し、その拳を受け止めさせた。当然、見えてない不良君は驚愕する。
(ごめんね。驚かせてる暇はないんだ。大人しく沈んでくれよ)
瞬時に、本体の僕は不良君の腹部へと拳を入れる。見た目からは想像できないような力を僕は発揮できるため、不良君は、驚きと痛みで何も言わずに沈んでいった。後ろの連れは恐れをなしたのか、走って逃げようとしていた。ごめんね。僕はそんな甘くないんだ。僕は分身を二体だし、足払いをさせて不良君二人を転ばした。派手に転んだ不良君たちは、鼻血をだしたり、膝をすりむいたりしていた。
「お、おい……ひでえだろ!」
「ごめんね。君たちみたいな、他人の不幸を何とも思わない屑野郎にあげる慈悲は持っていないんだ。おやすみ」
そういい、二人の顔に蹴りを瞬時に入れる。不良君たちは皆、地面で寝てしまったので、目的の物を取り出して、合計の半分を青年に渡す。しかし、青年は受け取ろうとしなかった。
「いや、受け取れません。助けて頂いたのに、逆に僕があなたに払いたいくらいです」
「そう? じゃあ、申し訳ないけど、これは僕がもらうね」
「……あの、流石にそれもまずいのではないですか? いくら不良だからといっても、その人たちだってなにか事情があって不良になっているのかもしれないですし……」
なるほど、面白いことを言う青年だ。こいつらは痛い目を見ないと我に返ることは出来ないやつらだ。なのに、そのきっかけを、この青年は奪おうとしている。っという捻くれた意見は冗談として捨てるとしても、自分を襲おうとした人の背景まで考えるなんて、珍しいと思った。
「なるほど。でも、この不良は、君みたいに気が弱い雰囲気の人たちを狙って、金を稼いでいる奴らだと知っても、そんなことを言えるかな。今までの被害者の前で、その言葉を紡げるのかな?」
だめだ。また捻くれたこと言っている。彼らが居なくなってから、こんな風に考えることが多くなってしまった。ダメだ、ちゃんと普通の感じに戻さなければ。そう考えていると、青年から回答が返ってきた。
「言えません。これはあくまで、自分が被害にあった場合に、自分が考えるであろうことです。他人にこの考えを押し付けるつもりはないです」
これもまた面白い。なんだんろう。この子はとても真面目なのだろう。正直者が馬鹿を見るこの世の中、彼のような存在はいずれ深い社会の闇に飲まれてしまうかもしれない。なんだか、そんなことを想像していると、この子がかわいそうになってきた。なので、元天使の慈悲をここで発揮する。
「そうだね。君の考えは分かった。じゃあ、これは元の通り、彼らに返すよ。なんだか、僕は君と話していると楽しくなってくるよ。もしよかったら、これからどこかでお話しないかい? もちろん僕の驕りで。見たところ、君は学生だろう? 家は近くかい?」
「え、ええ。まあ近いですね」
「じゃあ、少しお話しようよ。……そこの少女と一緒にね」
そういうと、青年は驚いた顔をする。なるほど、この少女が見える人にはまだ会っていなかったみたいだ。それなら安心だ。おそらく、この少女は、なにか特別な事情を抱えているはずだ。もしかしたら、こう考える奴らもいるかもしれない。“こういうやつら倒せば願いが一つ叶う”と。過去にもそんなことで争いが起きたことがあった。だから今のうちにこの青年は僕の所で保護をしよう。この邂逅には、絶対的な意味があると、僕は直感で感じた。
この出会いは僕にとって最高の出会いだった。だって、いずれ僕たちは、最強の二人組として、この星を守っていくことになるのだから。そして僕は、この青年の出会いを機に、これからとても重要な存在になる人たちと出会うことになった。それらの出会いは、偶然に見えて、多分必然だったんだと思う。これから起きる、中世界、現世界、未来世界と他の世界を巻き込んだ、大きな事件を、彼等と共に解決していくことになるのだから。
・あとがき
その出会いは必然だった。
読んでいただきありがとうございます。
現世界に生きる人たちそれぞれに物語があり、その中にまたそれぞれの想いが込められています。彼らは、己の物語の中以外でも、生き生きとしながら物語を紡ぐ重要な要素を持ち、己の正義の名のもとに戦っていくのです。
ご意見批評、お待ちしております。では、『現世界に歓喜と安寧を。この星に賛美を。そして、あなたに感謝と栄光あれ』
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