歌姫の声は世界のために
《はい! 今回は歌ってみたを投稿してみました! 皆さん、見てくれたらうれしいです! ではでは~》
投稿っと。これで、SNSの宣伝も終わったし、今回の動画の作業はこれでお終いっと。さて、ひと段落したし、散歩でもしようかな。そう思い、外にでる準備をして、マンションの玄関を出た時に、携帯がなる。鈴からだった。私は笑顔になりながら出る。
《はいはーい! 鈴、元気だった? 久しぶりだね~》
《うん、ひさしぶり。元気そうでなにより。あ、動画見たよ。相変わらずの歌唱力だね。さすが、コネクター五十万以上の大物投稿者、”幻想の歌姫”さん》
《えっへん! すごいでしょ! もっと褒めてくれてもかまわんよ?》
《はいはい、すごいすごい》
《ちょっとーなんかテキトーなんですけどー》
この子は、
《それで、
《ああ、はいはい! まだなんだ~ごめんね~もうちょっと待っててくれる?》
《まあ、それは別にいいけど》
そう。私は初のライブを計画しているのだ。ライブといっても、小さなハウスで何曲か歌うだけ。それでも、私は、嬉しかった。一人でも多くの人に、私の歌声を届けたい。出来れば、直接。
《それで、今月のあなたの目標は達成できたの? あの、路上で勇気がでない人に勇気を与えるってやつ》
《ああ! それね! なんと、十人、勇気づけたのだ! どう、すごいでしょ?》
《……予想より多くてびっくりだよ。やっぱり、未来はそういう方向が一番あってるよ。中世界でいう、天性なんだね。それに、未来の『心声』の効力もどんどん強くなってるみたいだね。まだ動画越しだと人には効かないけど、天人の私たちには気づいたよ》
《そっか~まだ画面越しだとダメか~! まあでも、鈴の言う通り、力はついてきているよ! これも、鈴の指導の賜物だよ! ありがとね!》
私にはある特別な力がある。それは、『心声』。相手の心に声を届けて、私が望んだ、相手が必要な心の強さを引き出す力。勇気がない人に勇気を。楽しくない人に楽しさを。悲しんでいる人に、喜びと乗り越える意思を。怒りに震える人に、優しさを。私は、この力を、人のために使いたい。その一心で、歌っている。
《じゃあ、今度スイーツおごりね。……そろそろ、仕事に行かなきゃ。今結構忙しいんだよね》
《良いよ! 奢る! そっか~今忙しいんだ……色仕掛けで情報を攻めるのは良いけど、ほどほどにしときなよ? 男子の大事なもの壊さないようにね!》
《……分かったよ。じゃあ、また連絡する。じゃあね》
《うん、じゃあね! 錬によろしく伝えといてね!》
そして、通話は切れた。鈴も最近はテンションが高いようで、声に元気と覇気があった。さて、そろそろ散歩に出かけよう。一歩踏みさせない人、毎日辛くて自殺を考えてしまっている人、好きな人にアプローチを掛けたいけど声が出ない人。色んな人が行きかう街へ。そして、そんな人たちに、一歩を踏み出す力を、声にして届けに。
私は天使の時代、ある時に人間たちに、感謝してもしきれないくらいにお世話になった。その時に、人間の可能性と慈悲の心に触れて、信じてみたくなった。そして、天使を引退して、地上界に降り立った。かつてお世話になった人たち。助けてくれた人たち。守ってくれた人たち。そんな心を持った人達が、現在も存在していることを信じて、私、天使未来は、人間たちのために歌う。たくさんもらった恩を、一生かけて返すために。この言葉とともに。
『現世界に歓喜と安寧を。この星に賛美を。すべての人間に、声を』
・あとがき
歌姫は、世界のために歌う。
読んでいただきありがとうございます。現世界です。天使にも引退というものがあります。彼女、未来も引退した、いわば天人という存在で、地上で暮らしています。彼女の声には特殊は力があります。それを使って、彼女は世界のために歌います。なぜ歌うのかというと、彼女曰く、「歌うのが好きだから!」ということです。
ご意見批評、お待ちしております。中世界の方も進めていますのでお願いします。
では、『現世界に歓喜と安寧を。この星に賛美を。そして、あなたに感謝と栄光あれ』
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