闇を切り裂く死者の弾丸

「そしたら、あいつどんな顔したと思う?こんな顔したのさ!笑っちまうよな!」


「そりゃ傑作だ!さぞかし楽しいダイビングが出来ただろうな!」


「っと、もうこんな時間じゃねえか、あいつまだ終わんねえのか?」


「さあな、聞いてみればいいだろ」


「おい、さっさとヤッて埋めちまおうぜ」


「まて!あともうちょいでイクからまて!」


「だとさ。俺たちは準備でも始めてようぜ」


 ――こんなことが日常茶飯事なのが、現世界の裏社会だ。表の人間が表の人間にはめられ、裏の人間の食い物にされる。あるときは、表の人間が見ただけで、その人は闇に葬り去られる。彼女とその彼は深夜、不良グループの密売を見てしまい、彼は撲殺され、おもりを付けられて海に沈められた。おそらく今頃はサメの餌になっているだろう。彼女は、強姦魔の不良の相手をさせられ、その後に殺される。――自分たちが居なければの話だが。


《三、二、一、突入》


【バン!】


「な、なんだ!?」


【パパパッパパパッパパパッ】


「うっ……」


「な……」


《二人ダウン》


「おい、もう終わったぜ。なんか大きい音したけどなんか……」


《コンタクト》


【パパパッパパパッパパパッパパパッ】


「ぐえ…………」


《クリア。女性の確保に向かう。車両準備。出入り口の警戒》


《了解》


「はあ……はあ……誰……」


 自分は無言でコミュニケーションカードを見せる。カードにあるのは「あなたの味方です。助かりたければついてきてください」。


「はあ……はあ……分かり……ました……」


 彼女は素早く服を着て、後ろについてくる。さて、後は車に戻るだけだ。仲間に合図を送る。


《女性を確保。これより移動する。援護》


 部屋を非常階段から出て逃げようとするが、運悪くやつらの仲間に見られた。


「おい!てめえらなにしてる!?」


「あ、あの女、俺たちの取引見やがった女ですよ!あいつら早く始末しろっつったのに、まだ遊んでいやがったな。仕方ねえ、ここで殺すぞ」


【パパパッパパパッパパパッパパパッパパパッパパパッパパパッ】


「ぐえ……」


「う……」


《クリア》


 自分たちは喋ることはしない。それらしき輩どもは問答無用で撃つ。それくらい、裏人に激しい恨みを持っている。それに、少しでも気を緩めれば、死ぬ。それはもう嫌と言うほど味わった。もうそんな隙、見せるものか。


《車を出せ》


《了解》


 車に全員乗り込み、その場を離れる。


「あの……助けてくれてありがとう。あなたたちは一体……」


 そういう質問には必ずこのカードを見せる。「裏社会の警察みたいなものですよ」。


「警察……でも、その恰好……」


 自分たちは基本、全身迷彩ファッションで活動する。サバゲ用のマスクをかぶり、黒のサングラスと迷彩の帽子をかぶる。そして、事務所から支給される、この小型カービンDB10とハンドガンを装備している。もちろん実弾は使わない。事務所独自で開発した弾丸で、殺すことなく無力化する。まあ、そのあとの回収班によって大体は闇に葬られるが。


《所長、第五警備隊三班です。殺されそうになった女性を一人確保しました》


《お疲れ様。安全な所まで案内してあげな。発信機はおいてきたかい?》


《はい、中に三人、外廊下に二人、倒れています》


《分かった。後は彼の職員に任せよう。引き続き、警備の方よろしく》


《了解。それでは、戦場所長》


 女性を安全な駅まで送る。彼女の姿が見えなくなった瞬間に、ある装置を起動する。これは、彼女の記憶を強制的に排除する装置だ。原理は知らないが、負担が少ない上に、自分たちの記憶を消すことが出来るらしい。開発部隊は毎回すごいものを開発してくる。そのおかげで、自分たちは裏社会の闇と戦うことが出来る。


《これからどうする》


《おなか減ったから、どこかに入ろう。そのあとまた警備すればいい》


《賛成、どこ行こうか》


《車が止められるところならどこでもいいさ》


《じゃあ、あのビルはどう?色々と選択肢ありそうだけど》


《じゃあ、とりあえず行くか》


 こうして自分たち四人は一台の車を走らせる。深夜の眠らない都心部を、眠らない裏社会の墓場を。

 自分たちは、かつてはサラリーマンとして、極道として、自衛隊として、様々な場所で生きていた。そんなある日、別の人間たちからはめられ、居場所を追い出され、罪を負わされ、裏の人間に追われるようになった。毎日裏の人間に追われて、表の人間としては生きていけない自分たちに居場所をくれたのが、戦場所長だった。彼に誘われ、激しい特訓を乗り越え、今では裏社会の警察として、奴らに復讐している。ある人間は家族を、ある人間は財産を、ある人間は人としての尊厳を奴らに奪われた。各々が裏社会に激しい恨みを持っている。あの時の自分たちは、これからは表の人間の死者として、裏社会の闇を切り裂く弾丸となって生きていくことを決意した。戦場所長から教えてもらった、おまじないの言葉と共に。

『現世界に歓喜と安寧を。この星に賛美を。裏社会に死者の鉄槌を』


 ・あとがき

 裏社会に葬られた人間の復讐劇の日常

 読んでいただきありがとうございます。現世界物語です。

 今回は正直、息抜きで書いたものなので、短いです。読みやすいかな?いまだに現世界物語はあまり読まれず、どうしたものかと悩んでいる今日この頃。やはり長編を書いた方が良いのでしょうか?ひとまず、長編は中世界を集中して書こうと思っています。今後とも、よろしくお願いします。

 ご意見、批評などご遠慮なくどうぞ。近況ノートで書けるところ作った方が良いのでしょうか?一応作っておこうかな。

 それでは、『現世界に歓喜と安寧を。この星に賛美を。そして、あなたに感謝と栄光あれ』

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