第四十九話「作戦開始」

「それじゃ、ケン。頼むぞ」

「任せて。そっちこそ、作戦通りお願いね」

「私はいつでもいいわよ。ドンドンやって頂戴!」

「それじゃ、行くよ」


 “沼の主 異形の泥蛙マッドマスター”討伐の作戦を練り、ついに動き出した俺達。

 ここまで来たら、死に戻りなんてしてられない。成果をあげるまでは帰らない。


 もう、何度繰り返しただろうか。それでも、少しずつゴールへと近付いていく。


「《プロヴォーグ・サークル》」


 ケンのスキルが発動した。ここからが大変だ。パターン化されていない攻撃をさばき続けなければならない。

 しかも、耐えるだけじゃダメだ。反撃もしなければ、詰む。


「来るぞ。踏ん張れよ、ユズ」

「あんたこそ、死に戻りしたら面倒なんだから死ぬ気で生き残りなさい」

「それ、どっちだよ」


 軽口を叩けるのも、ここまで。

 ここからは。


「来た! 右から牛二頭、後ろは豚と鶏一体ずつ!」

「正面に鶏三羽、左からは牛二頭! その後ろに豚も見えるわ!」

「ケンは左と正面、俺とユズで右と後ろを殲滅!」

「「了解!」」


 効率的な、レベル上げ作業だっ!


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 プレイヤー名:テイク

 種族:ヒューマン

 ジョブ:テイマー(Lv.25)

 HP  1000/1000

 MP  3240/5260 (used 34)

 ATK  10(+5)

 VIT  10(+6)

 INT  10

 MIN 10

 DEX  10(+6)


 スキル

 《鞭》Lv.1

 《火魔法》Lv.1

 《水魔法》Lv.1

 《土魔法》Lv.1

 《風魔法》Lv.1

 《光魔法》Lv.1

 《闇魔法》Lv.1

 《HP自然回復》Lv.6

 《MP自然回復》Lv.1

 《即死回避》Lv.1

 《魔法複数展開(Ⅱ)》Lv.☆

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「おし、これでやっとレベル二十五だな。《挑発》スキルのありがたみがよく分かるレベル上げだった」

「三人であの数相手に連戦したらこんなに早くレベル上がるもんなのね。私も四つレベルが上がったわ」

「場所的にレベル高めなのも良かったかもだね」


 レベル上げの目標だったレベル二十五に達したところで一先ず切り上げ、近くの町へと歩く。その町の名はローツ。第二の町だ。


 ……別に、泥蛙討伐を諦めた訳じゃないぞ。泥蛙を倒すためにはレベルが足りないと判断したからこそ、効率のいいレベル上げをするために第二の町から南側のマップへと足を運んだのだ。

 第二の町へ行けるのなら、それを活用しない手はない。今の目標は第二の町に辿り着くことではなく、泥蛙を倒すことだからな。


 南側にしたのは泥蛙を倒した後に通る道、つまり、第二の町から見て戻る道だからだ。東や西、北にはゲームクリアを目指すプレイヤーがたくさんいると予想して、南へと向かった。

 実際は、南側のマップにもプレイヤーは結構いたがな。そこで、俺達は南側の中でも西寄り、南西の方向でレベル上げをすることにしたのだ。


 このゲーム、東西南北にエリアがあるせいか、南西や北東といったエリア同士の間は不人気なのだ。何かあるんじゃないかと探索するプレイヤーもいるらしいが、今のところ何も見付かってはいない。


 そして、そんな人気ひとけのない場所で活躍するのが、《挑発》スキルのレベルを上げることで使えるようになる《プロヴォーグ・サークル》だ。

 つっても、挑発の範囲が単発から円形範囲へと広がっただけだがな。


「トパーズちゃん達をレベル上げしなくて、ほんとによかったの? これだけ効率良くレベルが上がるなら連れてくればよかったのに」

「経験値が山分けならそれでもよかったんだがな」

「そっか。もし、アウィンちゃん達を連れて来るとテイクの経験値が減っちゃうんだったね」

「俺、ユズ、ケンで経験値を分配してから、俺とテイムモンスで山分けだからな。十二分の一だといつまでかかるか分かったもんじゃない」


 ラピス達のレベル上げは俺達だけでやった方が都合がいい。今回のレベル上げは泥蛙を倒すため。泥蛙を倒すためにレベル上げが必要なのは俺なのだ。

 とりあえず、俺だけのレベルを急ピッチで上げたのはそういう理由があったから。

 そして、その必要なレベル上げは今、達成した。


「さてと、それじゃ、対泥蛙の勝ち筋を辿りに行きますかね」


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 スケルトンの呪鞭 武器


 スケルトンウィザードの持つ

 杖芯が埋め込まれた鞭。

 呪いがかかっているため、

 移動に制限がかかる。


 INT知力値 +40

 DEX器用さ・素早さ -30

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「ヤバいものを貰ってしまった」

「こんなもの装備するやつ、あんた以外にいないわよ」

「でも、プラス値は破格だねー。デメリットの方が凄いけど」

「俺は元々DEX器用さ・素早さが初期値だったからな。ステータスがマイナスになることはないみたいだし、実質プラスだけだ」

「お兄ちゃんの鞭、禍々しいです。でも、どことなくカッコイイ!」

「待て、アウィン。これは俺の趣味じゃないぞ。勘違いするなよ」


 一度、オッドボールに寄ってラピス達を迎えに行くと、繭からこの鞭を手渡された。

 スケルトンウィザードを高速周回していた時にいくつか出た杖芯を使って鞭を作ったそうだ。性能は文句ないんだが、デザインはもっとこうどうにかならなかったのだろうか。

 柄はヘビのウロコのようで、しかも紫色にテカテカしている。持ち手にはドクロのワンポイントが。なんだこの、オシャレ要素。


 繭曰く、《呪術》スキルも併用したからその弊害だそうだが、俺が装備した時の目の輝き方は確信犯だった。わざとこのデザインにしたか、変えなかったかのどちらかだな。

 この武器はレベル制限があって、誰でも使えるって訳でもないらしい。レベル上げをしたのは本当にいいタイミングだったな。


 DEX器用さ・素早さの数値は10(-30)と表記されているが、歩いていてもあまり不便さは感じない。だが、戦闘中は酷かった。ラピスと同じくらいの速さと言えば察してくれるだろうか。

 器用さの方は、どうなんだろう。恐らく、もっと精度のいることをすれば実感しやすいのだろうが、初期魔法を撃つだけならそこまで見当違いの方向へ撃つということはなかった。


 まあ、少し誤差を大きく考えた方がいいとは思ったが。大体の狙いを付けることはできるなら問題はないな。


 前を歩いていたユズが立ち止まる。ここを歩くのはまだ三回目の俺達よりもユズとケンは遥かに多くの回数、ここを通っているはず。

 つまり、ユズが立ち止まったということは。


「テイク、ここからボス戦フィールドよ」


 作戦開始だ。

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