第四十話「成金」
「やっぱり、《即死回避》発動は慣れないな」
「あ、お兄ちゃん起きました!」
即死回避すると意識が少し飛ぶのはいつもの事だが、起きた時ベッドにいないってのはちょっと辛いな。体が痛い。
アウィンに引き摺られて意識を飛ばす間もないよりかは断然マシだが。
「ん? あの雑魚雑魚言ってた奴、アイクだっけか。どこ行ったんだ?」
「あの人なら、つまんねーPvPだった。ま、気分転換にはなったか。あー、めんどくせー。とか言ってどっか行っちゃいました。わたし、あの人嫌いですっ!」
口を尖らせてさっきの男をマネするアウィン。頬を膨らましながら手を腰に当て、“わたし、怒ってます!”という態度を取る。
うん、俺も嫌いだ。
だが、強かった。
あの反応の速さ、状況判断能力、ラピスを
ステータスの差以上に感じた力の差。
そういや、アイクってどっかで聞いたことある気がすんだよな。
“青薔薇”とか言ってた気がするし、お嬢様のエリーかメイド服のメリーが言ってたんだっけ?
さっさとどっかに行ったのは、俺がスケルトン素材を持ってないと言ったからか。
ま、本当は持ってんだけどな。持ってるとか言ったら面倒そうだったし。
雑魚、か。
面白い。
「俺達の雑草魂見てろよ、あんにゃろう。二度と雑魚なんて言わせねえからな」
そのためにもまず、ここのボスを倒しに行きますかね。
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「おーおー、これまたいかつい扉だな」
「凄い! キンキラキンです! お兄ちゃん! これ、持って帰りましょう!」
「お前のそういうとこ、嫌いじゃないなー。でも、マジでやりそうだから怖い」
ナイフを抜いて扉を破壊しに行こうとするアウィンにチョップを食らわし、ボス前広場からボスへと挑む。
アイテムは全て“オッドボール”にいる繭に預けた。死に戻りの準備は完璧だ。
西の洞窟第二エリアでは結構エンカウントがあり、ほんの少しレベルが上がった。俺以外。
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モンスター名:ラピス
種族:マルチスライム(Lv.13)
HP 800/800
MP 98/98
ATK 3
VIT 9
INT 2
MIN 84 (used 13)
DEX 1
スキル
《粘着》Lv.1
《吸収》Lv.1
《分裂》Lv.3
《擬態》Lv.1
《物理攻撃無効》Lv.☆
《被魔法攻撃5倍加》Lv.☆
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モンスター名:トパーズ
種族:ホーンラビット(Lv.13)
HP 1380/1380
MP 20/20
ATK 86(+10) (used 13)
VIT 5
INT 2
MIN 2
DEX 6(-3)
スキル
《跳躍》Lv.3
《気配察知》Lv.1
《採取》Lv.1
《ハウリング》Lv.☆
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モンスター名:アウィン
種族:町盗賊(Lv.12)
HP 870/870
MP 20/20
ATK 2(+4)
VIT 2(+3)
INT 2
MIN 1
DEX 86(+5) (used 12)
スキル
《盗む》Lv.3
《暗器》Lv.1
《隠密》Lv.1
《気配察知》Lv.1
《闇魔法》Lv.0
《罠設置》Lv.0
《罠解除》Lv.0
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“
ラピスとトパーズはレベルが一つしか上がっていないがアウィンは二つ上がっている。レベルが低かったのもあるけど。
三人とも、さらに火力が上がったり速くなったりした訳だ。
ラピスは……まあ、いつか
今回、ラピスの活躍はあるのかね?
とりあえず、逝ってみるか。
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『ワレ、眠リヲ妨ゲル者、許サヌ。早々ニ立チ去ルガ良イ。立チ去ラヌノデアレバ……排除スル!』
はい、やって参りました。西の洞窟ボス戦フィールド。お相手は杖を持った骸骨“スケルトンウィザード”さんです。
第一印象は、デカい。あと、成金っぽい。
ま、デカいと言っても“
“スケルトンウィザード”は人型だが、優に二メートルは超えている。バスケとかやってそうだ。
バスケの外人選手が成金っぽく、指輪やらネックレスとかジャラジャラさせて杖を持ってるとこ想像してしまった。シュールだな、おい。
「うー、動けなくなるの慣れません。気持ち悪いです」
「動けない癖に動こうとするのが悪い。どうせ動けないんだからじっとしとけ」
「でも、あの骸骨さん、色々盗めそうです! お金になりますよ、絶対! 見た瞬間、走り出しそうになっても仕方ないと思うんです!」
「よし、盗め」
「アイアイサーっ! です!」
さて、相手はどう動く。
後手にまわってデータを集めるのもいいが、一回目の挑戦ぐらいは攻めてみようか。
となれば。
「アウィン、トパーズ連れて側面にまわれ。そっから突撃だ」
「その後、わたしはどうしますか?」
「相手の動きを見て、できるだけ死角に入り続けろ」
「わかりました!」
“スケルトンウィザード”の攻撃は
ラピスの
「撃ち落とすか、だな! 《火球》!」
飛んできた相手の火球を《火球》で迎え撃つ。消費MPは800。五倍の威力なら勝てるだろ。
って、思ったんだけどな。
「あっつ!」
ちょっと押し負けたか!? 火球の破片がこっち側だけに飛んできやがった! 何とか頭にいるラピスを死守しないと!
HPはそこまで減ってないが、少しでも食らえば《即死回避》は使えない。もっと威力を上げる必要がある!
「もうちょっと右に……はい! ここです!」
トパーズが、跳んだっ!
俺のいる場所からは左右の角度が分からないが、アウィンが調節したならきっと大丈夫。高さも問題ない。まずは一撃!
「あっ!」
「ちっ、テレポートか? どこ行った」
トパーズが当たる前に成金骸骨が消えた。現れたのは俺と対面する方向の一番奥。
俺から見て九時の方向にアウィン。突っ切っていったトパーズは三時の方向。そして、現れた骸骨は十二時。
……俺達から最も離れた位置に出現するのか?
「だとすれば、出現位置を割り出」
「お兄ちゃん、来ます!」
成金骸骨が俺に向かって魔法を撃つ。今度は闇球か。
「アウィン、魔法は一度に一発だ! 今の内に仕掛けろ!」
「は、はい!」
「《
消費MPは1400。八倍の威力。これなら、押し返すことができるはずだ。
この間にアウィンが攻撃を!
『ヵカヵカ』
「な……! 火球!?」
あの骸骨、闇球が消え去っていないってのに火球撃ちやがった!
だが、狙いはトパーズ。《跳躍》で避けられる。
三発目はあるか? アウィンへ魔法を撃つ気配はない。行けるか!?
『カカヵ……ヵカ!』
「っ! アウィン、離れろ!」
骸骨へ攻撃しようと近付いていたアウィンは、洞窟の壁を蹴って何とか離れることができた。
壁近くにテレポートしてくれていて助かったな。
だが、これはまた、面倒な。
『カカカカ』
成金骸骨の周りには三百六十度を取り囲む球状の障壁が張られていた。
赤黒く、いかにも触れたらダメージを受けそうだ。
さて、どう攻略してやるかな。
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