第三十九話「プレイヤーvsプレイヤー」
俺に目の前の男が送り付けたのはPvP申請。プレイヤー同士で戦闘を行う
ルールはシンプル。相手のHPをゼロにすれば勝ち。だが、負けても死に戻りはせずにHPが1の状態となるだけという仕様だ。
PvPフィールドは俺と難癖付けてきた男を中心として円形に広がっていった。
どうやら、PvPフィールド内に他プレイヤーが入ることは出来ないらしい。また、敵モブはこっちを認識しなくなるようだ。
ま、徘徊する敵モブってあんまりいないし、PvPには時間制限があるから敵に囲まれた時に使ってもその場しのぎにしかならないだろうがな。
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プレイヤー名:テイク
種族:ヒューマン
ジョブ:テイマー(Lv.18)
HP 1000/1000
MP 3160/3160 (used 27)
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
スケルトン達との戦闘で消費したMPは合計1060。《MP自然回復》で85秒あれば回復しきるはずだったんだが、よかった。全回復している。
ラピス達はそもそも、ダメージを食らっていなければMPだって使っていない。
俺達は万全の状態だと言えるだろう。
「ん? 何でNPCもいるんだ?」
「知るか。そういう仕様だろ」
「ふん、まあどうだっていい」
危ねえ! バカで助かった!
これは完全に俺のミスだ。アウィンがテイムモンスだと気付かれる可能性もあっただろうしな。
コイツがもう少し気にしていたら、バレてたかもしれない。
目の前の男はロングの茶髪で、頭やら腕やら色々なところに装備をしまくっている。
防具が多いってことは
武器は剣だろうな。ただ、プレイヤーは基本、魔法も使う。遠距離もあることを覚えておかないとな。
「ラピス、トパーズ、アウィン」
「なんだ、来ないのか?」
「まず……で、その……たら」
「ごちゃごちゃ言ってねえで来てみろよ。来ねえなら」
トパーズとアウィンに動き方を軽く説明する。ま、細かいとこは自由行動だがな。
ラピスは四体に分裂させておく。
後は、タイミングを計って。
「こっちから行……っ!」
今っ!
「《火種》《土種》《風種》!」
プレイヤー相手なら熱と光を持つ火種は格好の囮となる。相手がこちらに向かって走り出し注意力が一点に集中する瞬間、しかも、何も無い空間にいきなり左真横へ出現する火種。
これに釣られない人間はいないだろ!
そして、視線の通り道へ《土種》。量と体積を五倍ずつにした消費MP250の土だ。これで視界が土色に染まったはず。あと、ダメ押しに足元へそよ風をヒューっと。
これで寒気を感じない人間もいないだろ!
「くそが、鬱陶しいんだよ! なっ、ぐぅ!?」
キィィィィーーーー
はい、お顔が見えたところに《ハウリング》を一発。
トパーズのハウリングは効果範囲が狭い代わりに直線の射程距離が長い気がする。それでもあの“
だが、威力は期待した通り。
よし、モロに食らったな。しかし、追撃の準備はまだまだあるぞ。
「今の、ホーンラビットか? なんで」
「……っ!」
ここで、アウィンが右側から迫る。《土種》で視線を隠してからすぐに走り出していたアウィンなら、この短い時間で急襲を仕掛けることだってできる。
麻痺してくれたら
「あー、ウザってえ」
楽に――え?
アウィンが斬られた。嘘だろ。あのタイミングで、意識だってこっちに向いていたはず。
いや、落ち着け。こんな時のためにアウィンにはラピスを二体付けてる。きっと、大丈夫だ。
どうやってアウィンに反応したのかは分からない。だが、《ハウリング》に反応はしていなかった。
今は遠距離で攻める!
「《水種》《風球》《水種》《土種》《闇球《ダークボール》》!」
「マジで、いい加減鬱陶しいんだよ、雑魚が!」
目の前に水を滝のように流し、スピードを上げた《風球》を撃つ。《ハウリング》をした時と同じタイミングなので、避けられるだろうが、それでいい。
避けようと動いた方向の腰当たりに《水種》。濡れることに忌避感があるなら動きが鈍るはず。最初の《水種》が地面に流れていて足元が見え辛いところに、《土種》を着地点へ出現させる。
これで、体制を立て直すのに少しは時間が稼げる。《風球》は既に消え去った。ここで本命の《
威力は四倍。スピードも四倍。消費MP2,400の特別製!
この一度で合計、2,570のMP消費だ。
トパーズの《ハウリング》で三割のHPは削っている。闇球の後、追撃がうまく決まれば……!
「《
「よし、当たった。残りは四割。一気に削り」
「
回復魔法か!
だが、それも回復薬と同じでクールタイムがある。それまでに回復した分も合わせて六割。
大丈夫。押し切れる。
次の一手だ。
「《光種》! からの《闇種》《闇種》《闇種》《闇種》《闇」
《闇種》は光を通さないカーテンのようなものだ。それを相手の顔の周りに配置しまくる。《光種》も一緒にな。
想像してみりゃ分かるが、これは相当にキツいぞ。目の前には光を発する物体、周りにはすぐそこに光を通さないモノ。気が狂いそうだな。
ただ、闇種はすぐ消えてしまうので供給し続ける必要がある。それに、通さないのは光だけなので、少し移動すればすぐ効果範囲外だ。
ま、今は意識が移ってくれるだけでいいんだがな。
「あー、マジでうぜえ。うぜえうぜえうぜえ」
「たあぁーっ!」
俺が滝もどきを作り出した時から既にトパーズとアウィンは動き出していた。
前からトパーズ。後ろからアウィン。
タイミングも文句無し。挟み撃ちだ。
トパーズの突撃が当たってくれるのが一番いいんだが、アウィンの麻痺だって本命だ。 背中にラピスを貼り付けることもできれば、毒と接触ダメージの二重でスリップダメージが期待できる。
どれか一つでもいい。成功すれば勝ちに大きく近付ける。
どうやら、悪質クレーマーは観念したようだ。闇種ボックスから抜け出そうともしない。
最初のアウィンへの反応には驚いたがそれだけ。終始、俺達のペースに持っていけた。結局、コイツはなんだったんだ。
もう、トパーズの角が届く。アウィンのナイフが当たる。
「勝ったか」
「うぉるらぁぁーっ!」
「なっ」
「きゃあ!? あ、トパーズさん!」
この野郎、何の動きもしないと思ったら、トパーズを蹴りやがった!
トパーズに付けていたラピスは、剣を警戒させていたから防御が間に合っていない!
「よそ見してんじゃねえぞ、雑魚が」
「え。あ、いや!」
「《火球》! アウィン、避けろ!」
火球を撃つが、見向きもしない。確実にアウィンを仕留める気か!
ラピスを手に持ち、剣を防御しようとするアウィン。
ダメだ。それは悪手でしかない!
「さっきもそのスライムで防御してただろ。同じことしてんじゃねえよ、雑魚。《火球》」
「あ」
「くそ。《土種》!」
「遅えんだよ、雑魚」
動きを阻害しようとした土種もランダムに動かれたら狙うことなんてできない。
トパーズもアウィンもやられた。
「《火球》」
「ラピス!」
トパーズと一緒にいたラピスもいなくなった。残っているのは俺と、保険として一緒にいたラピスだけ。
ラピスは最大で八体まで分裂できるが、今だと二体に分かれることしかできない。
手札が、足りない。
「どうする、どうすれば勝てる」
「雑魚が何したって無駄だ」
抜き身の剣を持ち、こっちに向かって歩いてくる。
まだ、策はあるはずだ!
「《
規模は100倍。消費MPは2,000。
これは避けられないだろ!
「あ、が」
「避ける必要もねえ」
腹が熱い。
「雑魚が群れたところで雑魚は雑魚だな」
視界が黒い。白い。赤い。
「折角だから教えてやる。俺はギルド“青薔薇”」
体が浮かぶ。地に足が付いていない。
「序列一位のアイクだ!」
ああ、眠たい。
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