第十一話「タイトル」
「え、は? ちょ、何、俺って、その、ラピスとトパーズでこれからずっと戦って行くわけ?」
「えっと、東第一エリアでテイマーさんが、ゴブリンをテイムした様なのですが、いくら逃がそうとしても無駄だったそうです」
「あ、あったわ。テイマー関係の掲示板に載ってるわね。『【重要】テイムモンスは変更不可!【必読】』ですって」
「うわあ、抽選に当たった人もテイマーを辞めていってるみたいだね」
「北第一エリアでホーンラビットをテイムする人もいなくなって夢を諦めかけてました。トパーズちゃんは私の救世主です」
俺もメニューから外部リンクを開いてESOの掲示板を開いてみる。
……これ、マジなやつだ。
運営に問い合わせてみたら仕様だ。って返事が来たとか希望が見えねえよ。
テイムモンスのステータス欄の数から五体までテイムできるようだが、俺はその内の二体を序盤で埋めたってことか。しかもこのゲーム、テイムモンスターの進化が一切ない。そのことからもモンスターを強いやつに変更しながら進んで行くと考えていたんだが……。
あれ、軽く詰んでね?
「あ、最新の掲示板見てみて。これ、僕達のことじゃない?」
「なになに?」
『スライム頭に乗せてるテイマーいてワロタwww』
『なんか、ウサギを顔に当ててるやついたんだけど、どゆこと?』
『それ、俺も見たわ。鞭装備一人だったからスライムもホーンラビットも多分一人でテイムしたんだと思う』
『二体テイムとかお疲れwwwあと、ご愁傷さまwww』
『お前ら今の内に拝んどけよwwwキャラ再作成待ったなしだろうからなwww』
「うっわー、酷い言われようね」
「ま、知らなかったとはいえ、テイムモンスが変えられないならもっと強いやつをテイムしたいとこだよね。変更するにはキャラ再作成しなきゃだけど、β特典は一度きりだからテイマーは選べない。これは、テイマー人口一桁も有り得るね」
「それに、経験値効率も酷かったわよね。こんなの、テイマーを続けようと思う人なんて普通ならいなくなるわよ」
「…………」
「えっと、テイクさんでしたよね? もしかして、キャラ再作成されるのでしょうか。でしたら、もう少しトパーズちゃんを触っていたいなーなんて……」
「あー、そのことなら心配いらないわよ、癒香」
「ユズさん?」
「まあ、テイクのことだからねー」
「……?」
ふ、ふふふ。
何だこの掲示板の奴ら、人のこと散々好き勝手言いやがって。
ご愁傷さま? 再作成? 知るか、んなもん。
「ケン、ユズ、後ついでに癒香」
「んー?」
「何よ?」
「私、ついでですか」
「聞け! 俺はキャラ再作成などしない! ラピスもトパーズも俺が強くする! 最後までコイツらと戦い抜く!」
「うん、それでこそテイクだね」
「はいはい、知ってた知ってた」
「ええ!? マルチスライムとホーンラビットですよ!? レベル上げたところで種族の差はどうしようも」
「癒香っ!」
「は、はい!」
「とりあえず、フレンド申請を受けて、俺のステータスを見ろ!」
「は、はあ……。あら、もうLv.14って早いですね。……って、何ですかこのステータス!? MP2180!? ポイント全部MPに振ってるんですか!?」
「うむ、いい反応だな」
「癒香さん、テイクはいっつもこんな感じなんだよ」
「極振り好きの変態ね」
「ま、まさか、この子達も……」
ついに癒香は悟ったようだ。
癒香もなかなかのゲーマーだな。極振りの局所的な強さをよく知ってそうだ。
俺は、これから出会うであろう俺の仲間となるテイムモンスも、全て極振りするつもりだ。
テイマーも極振り。テイムモンスも極振り。様々な極振りをした集団はどうなるか、考えただけでも楽しそうだな!
「お前ら、これからよく見とけ! 極振り好きがテイマーを選んだ場合、どうなるかを俺が見せてやる!」
そして、そのためにも今から伝えねばならないことがある!
大見得を切って、いつの間にか立っていた俺は少しずつ腰を下ろしていき、一拍置いた後、徐々に頭を下げた。
ラピスが後頭部に移動して落ち着いたのを確認してゆっくりと言葉を紡ぐ。
「なので、色々と助けてくれるとありがたいです」
「……プッ」
「……ククッ」
「……あ、え、はい?」
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「あーあ、テイク、途中までは格好よかったのに」
「何とも締まらないわねー」
「うっせ、どう考えても俺とテイムモンスだけじゃどうにもなんねえだろ。それに極振りを活かせるようになるのはもっと後になってからだ。それまではおんぶに抱っこで生き抜くしかない!」
「格好わる」
「言うな。自覚はしてる」
でも、パーティ組むと経験値が激減するんだよな。どうしたもんか……。
「極振り、テイク……って、もしかしてあの“変態極振り”のテイクさんですか!?」
「あ、出た」
「癒香、やめろ! その呼び方はやめろ!」
「癒香ー、それ私が広めたんだよー」
「てめえ、マジで浸透しすぎなんだよ!」
「ってことは、“やわらか城壁”のケンさんと、“嵐”のユズさん!」
「いつも思うけど、僕のそれ矛盾しすぎじゃないかな?」
「私のは嵐って書いてテンペストって読むんだよ!」
「ユズのだけ無駄にカッコよすぎじゃねえか」
「だって、全部私が広めたんだもん」
「くっそ、確信犯だ! 計画犯だ!」
「あわわ、まさかそんな有名な人達だったとは思わなくて! あの、その、ようこそ“aroma”へ!」
分かりやすいテンパり様だな。
俺達の二つ名的なものについては、色んなゲームで色物プレイをしてる内にそう呼ばれるようになっていった。
だが、俺は認めんぞ! 誰が変態だ!
「癒香さん、落ち着いてー。僕達のこと知ってるなんてよほどのゲーム好きだね」
「自分のやってるゲームで有名な人とかって掲示板とかで調べなきゃ分かんないものね」
「それか、本人が相当な上位プレイヤーで俺達のことを知ってる人と交流があったとかだな」
「癒香の場合は後者ね。生産職があるゲームでしか会ったことはないけど、上位プレイヤー御用達の上位生産職よ」
「戦闘とかは苦手なので、生産職しか出来ないってだけです。でも、別のゲームと似てる仕様があったり、このイベントだったらこんなアイテムが売れるかなーとかが分かるので生産職だけでも楽しいですよ」
「熟練の技だな」
「ある意味、プロの領域だね」
「そんなことないですよ!?」
癒香の店“aroma”か。
「癒香ってギルドの運営もやってたんだよね? さっき、ギルドがどうって言ってたけど、今もやってるの?」
「いえ、今は運営ではなく、一人のギルドメンバーとして所属させて頂いていますよ」
「そうそう、そのギルドについてなんだけど、どうやってギルドを作ったの? 冒険者ギルドにそんな機能あったっけ?」
「実は、ギルドを作るにはまず、土地を手に入れないといけないみたいなんですよ。私のようにβ特典でお店を持てた人が偶然気付いたみたいです。あんまり広めないでくださいね。お店を建てる土地が無くなっちゃうと私の所属してるギルドが困っちゃうので」
「教えてくれて、ありがと。土地ねぇ……。買うとしたらお店が建つと不便な端っことかの方がいいのかしら」
「出来れば、そうして頂けると助かります。それに、端だと土地代が安くなるみたいですよ」
うーん、別にギルドが絶対に必要な訳でもないが、この情報が広まって土地が無くなったり、高くなったら嫌だな。
昨日よりもスライム素材は大量にあるし、これ売って昨日のと合わせれば何とかなったりしないもんかね?
「土地って幾らかかるんだろ? 僕らの手持ちで足りるのかな?」
「とりあえず、素材を換金してみないことには何とも言えないわね」
「ああ。スライム素材って幾らで売れたっけ?」
「あの、皆さん」
何だ? 癒香が急に真面目な顔付きになったぞ。
これはまさか、熟練のプロがなると言われている、あの!
「その件で、私からご相談があるのですが。どうです? 取引、致しませんか?」
仕事モードだ……!
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