第九話「変態」
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スパイクドッグ Lv.2
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丸鷹 Lv.1
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ホーンラビット Lv.1
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北第一エリア内でまたもや戦闘である。
第一エリアだとプレイヤーが多いので、エンカウントは少ないが全くない訳では無い。
「今度は団体さんね。さっさと倒しちゃいましょ。あ、テイクはホーンラビットにトドメ忘れずにね」
「お前が、テイムしたウサギをモフりたいだけだろ。俺としては空中戦力が欲しいんだ。鷹は残しとけよ」
「スパイクドッグ涙目。《プロヴォーグ》!」
「ほら、ラピス。お前も一応行っとけ。ダメージ喰らわないんだし。狙いは犬っころ、だ!」
町に戻るまでにラピスとちょっとした連携ができた。
ケンに向かって一直線に走る敵にラピスを投げつける。言ってみればそれだけだが、これがなかなか使える。
《挑発》スキルでタゲを取った敵はラピスの接触ダメージ程度では標的を変えることなくケンを狙い続ける。ラピスを引き剥がそうともしないので、ちょっとした毒のようなものだ。
そして、ラピスは一体ではない。
「もう1丁!」
「ああー! 何でホーンラビットにラピス投げるのよ! アンタがトドメさせないかもしれないのよ!」
「俺に飛んでる奴を狙う
ラピスが一人いるだけで同時に二体の敵へスリップダメージが期待できる。ダメージは微々たるものだが、レベル帯の低いここなら貢献度は高い。
「まあ、テイムモンスが増えるのに否はないけどな。優先度的にはまずは鷹だ。飛行タイプだ」
「“そらをとぶ”なんて序盤で手に入るはずないんだから、まずは見た目で捕まえなさいよ!」
「おま! “そらをとぶ”要員を後々捕まえた時に古参メンバーがパソコン送りになったら可愛そうだろ! 趣味モンスターはクリア後で充分だ」
「可愛いモンスター達で最初の殿堂入りを目指すのがいいんでしょ!」
「ストーップ! 二人とも!」
「何だよ!」「何よ!」
白熱した議論を展開していた俺達が見たものは、犬に頭を噛み付かれ、爪を立てられ、角と嘴で身体中をつつかれまくっているケンだった。
よく見ると、牙は刺さっていないし、爪はくい込んですらおらず、鷹とウサギは何度も跳ね返されていたが。
「…………」
ケン氏、無言の訴え。
「えっと……、テイク、私はスパイクドッグをやるから、アンタは後の二匹をお願い。テイクなら出来るでしょ」
「あー、おう。了解。ってか、魔法打ち込むだけだけどな」
「その変態的な魔法の打ち込みを出来るのがアンタしかいないのよ!」
とか言いながらユズはケンの後ろから噛み付いているスパイクドッグに駆けて行った。
よく分からんが、鷹とウサギを仕留めれば文句ないだろ。
二匹のHPは、鷹はフル、ウサギは六割まで削れていた。六割まで削ったのはラピスの功績だ。そういや、このウサギの角は赤いな。何か違いでもあるのかね?
鷹はケンに弾かれた後、体制を立て直してから時計回りに回り出し、犬のいないところを狙って突撃。って感じか。
ウサギは弾かれて、体制立て直して、即突撃か。弾かれて飛んでく場所はあんまり変わってない。あと五回で鷹と衝突するな。
魔法の弾速はおよそ秒速三メートル。鷹が体制を立て直す時にウサギがぶつかる訳だから、その地点は……、目視で大体8メートル40センチか。
タイミングはこれでいいとして、問題は威力調節のMP消費量だ。
MP消費を多くすることで調節可能なものは三つ。威力、規模、スピードだ。
規模とスピードは単純に二倍にするためにMPを二倍つぎ込めばよかった。1/2にするにも二倍のMPが必要だ。
ただ、威力の設定がおかしい。二倍の威力にするために十倍のMPを要求されたのだ。そりゃ、ちょっとMP増やしただけじゃ違いなんて分かるはずもない。
ちなみに、威力三倍だとMPは二十倍、四倍だと三十倍、といった風に増えていく。今回、鷹を倒す為に弱点魔法の《火球》を2.5倍にしたい訳だが、ウサギも一緒に巻き込みたいので、少し威力を増す。
二体を巻き込む時には威力が八割まで落ちることが、検証の結果判明したので、今回は通常MPを20消費するところをなんと! 313消費でご提供! この威力なら、HPがもう六割も残っていないウサギを葬れるハズだ。
単純計算だから楽に計算は出来るが、こんなもん誰が使うんだって話だろ。魔法スキルのレベルを上げれば効率良くなるのかね?
「ま、上げる気は無いし、MPは有り余ってっから惜しみなく撃たせて貰いますがね!」
ウサギが体制を立て直す時間、1.7秒。その間に鷹が跳ね返される。空中で羽根を広げた瞬間にウサギの足に力が込もる!
「《火球》!」
マズい、
火球到達前に二体が衝突。火球が下にズレた位置に着弾しようとしたところで、ウサギの背で何かが動いた。
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「またアンタ、ややっこしいことしてたんでしょ。動き回る二体が重なった一瞬に丁度魔法を当てるなんてよくできるわね。さすが変態」
「変態言うな。あんなもん、よく見りゃ誰だって出来るぞ。それに、あれが当たったのはラピスのおかげだ」
着弾の一瞬、ウサギの背から体を伸ばしたラピスは鷹を引っ張って強引に魔法にぶち当てた。
もちろん、ラピスは無傷。フレンドリーファイア、所謂、同士討ちはこのゲームにはないから気兼ね無く撃てるな。
功労者のラピスは今、分裂していた身体を一つにして俺の頭に乗っている。戻れることに一安心。
「しかも、魔法一発で二体を仕留めたってことはMPを増やして撃ったんでしょ? 計算早すぎだし、そもそもどんな計算したのかも分かんないよ」
「お前、頭大丈夫か?」
「テイクに言われたくないよっ!」
「あんな計算、四則演算しかないんだから小学生でも解けるだろ。あんだけスライムで実験してたら大体の仕様だって嫌でも理解できる」
「出来ない! 無理だから! あんな変態じみたこと出来るのはテイクぐらいだよ!」
……またか。
ほんと、いつもいつも何言ってんだろうな、二人とも。何の変哲もない俺に出来るなら誰にだって出来るだろ。
なのに寄ってたかって人を変態扱いしやがって。
「毎度毎度思うけど、テイクだから極振り出来るんだろうな。って思うわよね」
「
三体以上に襲われた時だな。背を壁に付けりゃ一気に襲って来るのは二体ぐらいが限度なんだから後は時間差で飛んでくる攻撃を捌けば終了だろ。
一撃必殺も楽しかったな。
「
あー、遠距離攻撃されたら面倒だったな。魔法には固有のMP消費量があるし、回復薬は割合回復だったから簡単に割り出せた覚えがある。
後はMPが一番消費しただろうとこで盾スキルか何かで一気に距離を詰める簡単なお仕事です。
「
「ほら、不意打ち対策のやつよ」
「あ、初級魔法ばら撒き事件だね」
事件って何だよ。
俺は、不意打ちとかいう、やられると無性に腹が立つものの対策に魔法を全方向にぶっぱなして歩いていただけだ。
後は、弾速と目標物までの距離から着弾時間を割り出して、爆発音が聞こえるまでの時間に違和感があれば不意打ち野郎がいるって寸法だな。
「しかも、それを同時にやるっていうね」
「魔法属性変えれば音も変わるし聞き分けやすいぞ」
「何の参考にもならないアドバイスをありがとう。
魔法を耐えることは出来るんだろうが、使わずに近付かれたら即終了だし、
ラピスは
「で、最後は
「見た目は一番変態的だったね」
「リズムゲーとかほざいてたわね」
問題は器用さではなく、素早さだった。歩けばどっかの壁に物凄い勢いでぶつかっていくあの感覚が懐かしい。
ま、一歩で移動する距離とマップの形さえ暗記すれば後はタイミング良く、移動するために足を動かせばいいだけ。戦闘だって敵との距離を目視で測って歩けば、突き出してた武器に気付けば当たってる訳だし。
「何も難しいことはしてないだろ」
「「うるさい、この変態がっ!」」
ふむ、誠に遺憾である。
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