第八話「侵食」
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
モンスター名:ラピス
種族:マルチスライム(Lv.1)
HP 800/800
MP 20/20
ATK 3
VIT 9
INT 2
MIN 6 (used 1)
DEX 1
スキル
《粘着》Lv.1
《吸収》Lv.1
《分裂》Lv.1
《擬態》Lv.1
《物理攻撃無効》Lv.☆
《被魔法攻撃5倍加》Lv.☆
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
スライム、ラピスのステータスは
あの時の、
というのはまあ、建前で。どうせ最初のテイムモンスターなんてすぐ入れ替えるだろうし、魔法無効化するスライムとか面白そうじゃん。
実際、無効化された時は何のチートだ、って思ったし。
「何に割り振ったの?」
「
「
「というよりも1ptしかなかったんだよ。ほら、これがステータス」
スクリーンショットして、メールを送る。
一斉送信できるのはいいな。
ラピスは名前を付けた時辺りから、急に動き出して俺の頭に乗っている。
バランスは自分で取ってるから気を使う必要はないが、ずっとこのままだと俺の首が悲鳴を上げそうで怖い。
「モンスターはプレイヤーよりも結構ステータス低いのね。テイムした時に書き換えられたかもしれないけど」
「レベルが上がってたらステータス割り振りが自由にできなかった可能性もあるな。Lv.1をテイムしたのはむしろ幸運か?」
「ねえ、スキルのLv.☆って?」
「何それ」
「アンタのテイムモンスターのことでしょ。ちゃんと見ときなさいよ」
「ほら、スキルにある《物理攻撃無効》と《被魔法攻撃5倍加》」
言われて見てみると確かにレベル表示が☆となっている。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
《物理攻撃無効》Lv.☆
受ける物理攻撃を無効化する。
(このスキルのレベルは上がりません)
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
《被魔法攻撃5倍加》Lv.☆
受ける魔法攻撃を5倍加する。
(このスキルのレベルは上がりません)
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
「レベルMAXみたいなもんだな。これ以上レベルを上げられないらしい」
「物理攻撃はいいとして、受ける魔法攻撃が永続で5倍って酷くない?」
「テイクみたいに《即死回避》はないし、避けられるスピードも無さそうだし。当たったら一瞬で終わりそうだよね」
「
「無効化出来てもせいぜい一日に一回あるかどうかね。それについてはもう考察は上がってて、
「それはユズが調べたのか?」
「違うわ。他のプレイヤーよ」
「だとすると
「ちょっとそれ、どういう意味よ」
だが、残念だったな。調べたプレイヤーは極振りの恐怖を知らない。
極振りをすることによって築き上げられた一点の莫大なステータスは時に一般常識を覆す。
覆すとこまでラピスが仲間だったらの話だが。
と、ここで額に青い角の付いたウサギが飛び出してきた。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
ホーンラビット Lv.1
△△△△△△△△△△△△△△
「なんだ、コイツ」
「北第一エリアのホーンラビットね! 可愛いっ!」
「第一エリアまで戻ってきたんだね。このまま敵モブを倒しながら町まで戻ろうか。やっと物理攻撃が効く相手なんだろうけど、倒したくないなあ。可愛いし」
「《水球》」
「何するのよ、テイク!」
「いや、敵なんだから攻撃すんだろ」
HPバーは五割削れたかどうかって感じか。
さすが、
水球の見た目はまんま水の球。だが、ノックバックする程ではないが土球と同じで質量がある。
ぜひ、MP消費を多くしてダメージを見てみたいとこだが、ここは……。
「ほら、ラピス。お前の初戦だ、行ってこい」
「ホーンラビットって魔法攻撃したっけ?」
「イワンの町周辺の第一エリアには魔法使えるモブはいないわね」
「おお! ラピス無双が始まるのか。なかなかやるな、お前!」
ラピスがズリズリピョンとウサギに近付いていく。
ホーンラビットの方も、俺が魔法を当てたことで敵だと見なしたのか、こちらを警戒している。角をラピスに向けて今にも飛び出して来そうだ。
ラピスは全く気にしてないけど。
「なんか、焦れったいわね」
「さっさと仕留めた方が良かったか」
「折角の初戦なんだから、そんなこと言わずに見てあげようよ。ほら、もうそろそろラピス、くん? ちゃんかな? が攻撃しそうだよ」
ラピスがホーンラビットを間合いに捉えた。この距離ならスライムが何度もユズに繰り出していた体当たりが当たるはずだ。
ラピスがピョンと飛び上がる。このまま行けばホーンラビットにぶつかるだろう。
だが、敵も黙っていない。
後ろ足に力を込めたかと思うと同時にラピスに飛びかかり、額の角でラピスを貫いた。
「うおっ!?」
「あ、穴が! ラピスちゃんに穴空いてるよ!?」
「ちょっと、これ大丈夫なの!? ラピスやられちゃったんじゃないでしょうね!」
「今、確認してる!」
おいおい! いきなり、胴体貫かれてお陀仏とかやめてくれよ!?
後々、別れるかもしれないとしても、俺の大事な初めてのテイムモンスだ。目の前でスプラッタなんぞ見せられたら焦る!
テイムモンスターのステータスってどこから開くんだっけ!?
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
モンスター名:ラピス(1/2)
種族:マルチスライム(Lv.1)
HP 400/400
MP 10/10
ATK 1
VIT 4
INT 1
MIN 3
DEX 1
スキル
《粘着》Lv.1
《吸収》Lv.1
《分裂》Lv.1
《擬態》Lv.1
《物理攻撃無効》Lv.☆
《被魔法攻撃5倍加》Lv.☆
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
「……は?」
「どうなったのよ! ラピスは無事なの!?」
「ラピスちゃんが、真っ二つに……」
「いや、えっと、多分、大丈夫。真っ二つが正常というか、さっきラピスのステータス送っただろ? スキルにある《分裂》を使ったっぽいな」
二人の目が忙しなく動き始めた。恐らく、俺が送ったメールを確認しているんだろう。
当のラピスはホーンラビットの背中にくっついたようだ。ホーンラビットは何とかラピスを引き離そうとしているが、額にある角じゃどうしようもないだろ。届かんって。
「おー、ロデオみたいになってきたな」
「ラピスちゃんがやられてないならむしろ優勢?」
「でも、攻撃できないんじゃ……。あれ、ウサギちゃんのHP減ってる?」
ラピス、バラバラ事件のせいで見えていなかったが、ホーンラビットのHPが残り三割まで削れていた。
しかも、現在進行形で少しずつ減っているように見える。
「ラピスの攻撃方法は、超至近距離まで近付いてからの接触ダメージによるスリップダメージの蓄積、ってことね」
「テイク、今ユズはなんて言ったの?」
「ラピスは敵を侵食して倒す」
「うわ、ラピスちゃん怖い」
「まあ、そのピーキーさは極振りに通じるところがあって俺は好きだけどな」
「あ、ホーンラビットが暴れだした」
「火事場のなんちゃらってやつかしらね。そろそろ終わるわよ」
ラピスの乗っていた馬もといウサギがだんだんと弱っていき、最後にパタリと力尽きた。
リアルにいる生き物が死ぬ瞬間はスライムよりもちょっと心に来るものがあるな。
ウサギの死体はポリゴンとなって虚空へと消え去り、ウサギのいた場所には二人のラピスだけが残っている。
……これ、ちゃんと一つに戻るんだよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます