第七話「ラピス」
「スライムが仲間になりたそうにこっちを見ている」
「どこに目があるのよ」
「《火球》」
「さっきもやったでしょ! きっと、テイム成功なんだって!」
「魔法を無効化された可能性が」
「現実を見なさいよ。何かウィンドウ的なの出てないの?」
「……」
発売初日、ゲーム更新時間の16時にログインしてからスライムを倒しまくりなんと二日目。
一日目ではテイム成功報告はなく、どれだけ難易度高いんだ。と、テイマーを選んだプレイヤーは阿鼻叫喚の地獄絵図となった。
そんな中、朝からひたすらケンがスライムを集め、ユズがHPを調節し、俺が魔法で仕留めるというルーチンワークをこなし続けた俺達の目の前にどれだけ攻撃しても倒れないスライムが現れた。
ユズ達はすぐにテイム成功だと思った様だが、俺は信じなかった。断じて信じたくなかった。
そもそも、このESOでは、
この二日のなかでも、一度だけスライムに魔法を無効化されたことがある。その時もテイム成功だと思ったんだが、もう一度魔法を当てることで消えていった。
「テイク、どうなの? もうスライム狩りは終わりでいいのよね? レベルは結構上がったから満足ではあるけど、さすがに別のマップにも行きたいわよ」
「ほんと、レベルは上がったよねー」
「……」
ここ、北第二エリアは適正よりも断然上だったこともあり、確かにレベルは上がった。
現在の俺のステータスはこうだ。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
プレイヤー名:テイク
種族:ヒューマン
ジョブ:テイマー(Lv.14)
HP 1000/1000
MP 573/2180 (used 23)
ATK 10
VIT 10
INT 10
MIN 10
DEX 10
スキル
《鞭》Lv.1
《火魔法》Lv.1
《水魔法》Lv.1
《土魔法》Lv.1
《風魔法》Lv.1
《光魔法》Lv.1
《闇魔法》Lv.1
《HP自然回復》Lv.3
《MP自然回復》Lv.1
《即死回避》Lv.1
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
正直に言おう。
ステータス操作してる時、笑いが止まりませんでした。
いや、Lv.14でMP2000越えって。おかしいでしょ。おかしいよね。
このおかしなステータスを見る度に極振りやっててよかったって思えるんだよな。うん。
ま、他のステは初期値のままなんだけど。
あと、レベルが5と10になった時にスキルポイントが貰えたから予定通り《HP自然回復》に全振り。
Lv.3になったことで五秒ごとに6%、俺の場合だと60回復するようになった。
最初期の回復薬で250回復することを考えると……いや、考えないでおこう。
ちなみに、ユズのステータスはこんな感じ。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
プレイヤー名:ユズ
種族:エルフ
ジョブ:剣士(Lv.14)
HP 4820/4820 (used 3)
MP 367/367 (used 3)
ATK 43 (used 3)
VIT 29 (used 2)
INT 50 (used 5)
MIN 31 (used 2)
DEX 56 (used 5)
スキル
《剣》Lv.2
《水魔法》Lv.2
《風魔法》Lv.1
《光魔法》Lv.1
《回避》Lv.1
《気配察知》Lv.1
《直感》Lv.1
《MP消費軽減》Lv.1
《MP自然回復》Lv.1
《詠唱破棄》Lv.1
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
ポイントがバラケてなお、
そんなユズさんのMPは367。俺は2080。
うん、おかしい。そして、素敵だ。
《水魔法》がLv.2になると、回復魔法が使えるようになったらしい。
ケンもユズも、もちろん遠距離専門な俺もダメージはほぼなかったので使う機会は無かったが。
後、パーティーを抜けていたケンがレベルを先行している時もあったな。
どうやら、ユズは経験値パーティー山分け説で確定としたらしい。
さて、そろそろ現実逃避はやめて視界の端に追いやったウィンドウを直視しよう。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
マルチスライムをテイム可能です。
テイムしますか?
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
ここまではいいんだ。
問題は目の前にいるコイツ。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
マルチスライム Lv.1
△△△△△△△△△△△△
なんで、よりによって、Lv.1が、数少ないはずのLv.1が、テイム出来てしまうんだろう。
右を見ればLv.11のスライムがいる。ここの最高レベルだ。大体のスライムはLv.7~10。
んで、前を見ればLv.1。
「……はぁ」
「別にいいじゃない。Lv.1でもアンタの記念すべき初テイムよ。喜びなさいな」
「いやー、長かったねー。この子のレベル上げも長いだろうけど」
「ケン、お前覚えとけよ」
「そんなこと言ってると手伝ってあげないよ」
「これから頑張ろうな!」
さすがにテイムしないなんて選択肢は俺にはない。ちょっと自分の不運を嘆いてただけだ。
ウィンドウに意識を移し、肯定の意思を送る。
お、なんか出てきた。
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モンスター名:(名前を入力してください)
種族:マルチスライム(Lv.1)
HP 800/800
MP 20/20
ATK 3
VIT 9
INT 2
MIN 6
DEX 1
スキル
《粘着》Lv.1
《吸収》Lv.1
《分裂》Lv.1
《擬態》Lv.1
《物理攻撃無効》Lv.☆
《被魔法攻撃5倍加》Lv.☆
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
任意のステータスに
1ptを振り分けてください。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
「おお?」
「どうしたの?」
「何なに? プレイヤーでテイム成功は初かもしれないんだから、何かあったら言いなさいよ」
「いや、それがさ。どうやらテイムモンスターにもステータスポイントを割り振れるみたいなんだよ」
「自動じゃなくて?」
「おう」
「任意で? 自分の思ってるステータスに?」
「割り振れる」
「……テイク、アンタまさか」
ユズとケンが、恐る恐る半分諦めた表情(かお)でこっちを見る。
恐る恐るってことは心配してるってことか?
失敬な!
「心配しなくても、極振りするに決まってんだろ」
「ああ、この子にもテイクの魔の手が!」
「名前は知らないけど、スライムのアンタ。強く生きなさいね」
「あ、そういや、名前決めないといけないんだったな」
初めての仲間モンスターであるスライムをよく見てみる。ケン、スライムを抱くな。放せ。
色は光沢のある深い青。大きさは他のスライムと変わらずバスケットボール並。今はケンの腕の中で大人しくしている。
ふむ。
「ケン、ほら、スライム渡せ」
「えー、極振りしないでよ? 可哀想じゃん」
「お前には関係ないだろ。それに、極振りだって使いようで強くなるって」
「それはテイクだけでしょ」
「……? 俺に出来るなら誰でも出来んだろ」
「まだ自覚持ってないのか」
ぶつぶつ言っているケンからスライムを受け取る。
何だろう。リアルにあるスライムとは違う、ひんやりとした心地よい抱き心地だ。コイツ枕にして寝たい。
それにしても、コイツの色、どっかで見たことあるんだよな。何だっけか。
確か……。
「ラピスラズリ」
「それよ!」
「わわ、いきなり大きな声出さないでよユズ」
「ごめんごめん。でもやっと思い出したわ。どこかで同じような色を見た気がしてたのよ」
「あー、ユズもだったか。俺もさっき思い出したんだよ。やっぱラピスラズリっぽいよな」
宝石の一種、ラピスラズリ。
俺の腕に収まっているスライムはその色にとてもよく似ていた。
なら、名前は決まったも同然。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
モンスター名:ラピス
種族:マルチスライム(Lv.1)
HP 800/800
MP 20/20
ATK 3
VIT 9
INT 2
MIN 6
DEX 1
スキル
《粘着》Lv.1
《吸収》Lv.1
《分裂》Lv.1
《擬態》Lv.1
《物理攻撃無効》Lv.☆
《被魔法攻撃5倍加》Lv.☆
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▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
任意のステータスに
1ptを振り分けてください。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
あ、ステータスポイント忘れてた。
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