038 6才になりました

お久しぶりです。仕事が空いてきたので再開です。なるべく続けていきたい物です。

今回から一話ごとの文字数を下げてみます。上手く行くと良いのですが。

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 さて。今日も良い朝。

 夏本番で日が昇るのも早いし。おまけに今日は良い事が二つもあるんだよね。


 僕は相変わらずアレハンドロにいる。

 神殿の皆さんはコミエ村に帰り、アラン様達は王都に。体のことを考えれば、アラン様は僕と一緒に居た方が良いんじゃ無いかということで何度か話し合いがあったけど、結局僕とアラン様は別々に動くことになったんだよね。秘書のセレッサさんは平然とした顔をしてたけど、すごく辛そうだった。ハンナも。普段あんなにアラン様のことからかってるのにね。不思議な物だね。

 僕もアラン様にはお世話になったし。……クソガキ呼ばわりされるのは嫌だったけども。ハンナが泣きそうだし……。だから、ちょっとだけ。ちょっとだけ役立ちそうなベルト型の術理具をあげた。大した手間でもなかったし。三日くらいで作ったから大したもんじゃないよ。見た目は四角くて白い大きめのバックルの真ん中に赤いファンが付いてる感じ。アラン様の調子を見てファンが周囲のエーテルを吸収するようになってるんだ。これで一応アラン様の症状には対応出来ると思う。でも対処療法だからそのうち破綻すると思う。僕にもっと力があれば……。


 セリオ様、アラン様、それにバスカヴィル商会の人達のお陰で、僕はひとまずアレハンドロで立場を得た。僕の用意した付け届けも役に立ったみたい。

 まず僕はバスカヴィル商会の人達に術理具を見せた。馬車のもの、草刈り、草かき、倍力、マッサージ、土ならし。他にも需用があれば作りますよ、というと、商会主のコーデリアさんは大喜びした。ただ、幾つかの問題があって仕様の変更が必要だとも言われたよ。もっと構造を単純にしないと、僕以外には作成も手入れも難しいから。確かに、僕がずっと術理具作りしてるわけにも行かないものね。あ、後は見た目がシンプル過ぎるから装飾がないと売れない、とか。

 

 そうしてセリオ様はアレハンドロの神殿を攻略。僕が上げたおっきな水晶と特大珊瑚が現金以上に効いたと、セリオ様悪い顔してたよ。占い好きの副神殿長が嵌まってしまって大変とか言ってた。

 そうしてアラン様とセリオ様が組んで冒険者組合と領主一家の調略をしたみたい。

 一応僕も顔見せ程度のことはしたんだけど、ほとんど中身は聞いてないんだ。追加で色々魂倉から持ち出したけど。良かったのかなぁ。

 セリオ様は、アレハンドロが中立から味方よりになったと喜んでた。コミエ村が楽になるのならいいのかな。政治の話は分からないから、いっか。だって僕6才だしね。


 そうそう。僕、今日から6才なのです。

 8月10日は僕の誕生日。

 体もおっきくなりました。おっきくなりすぎてるかな。

 今、140cm、35kgなのです。

 ちなみに3ヶ月前、名付けの儀の頃は98cm、14kg。おおよそ3ヶ月で伸びたんだよね。周りも驚くけど、僕も驚いた。と言うか大変だったんだ。

 お腹いっぱいに食べても直ぐお腹減るし。我慢すると直ぐ倒れそうになるし。ていうか、2回倒れたし。代謝も凄いから、出る物も凄くてね。酷いもんだったよ。筋肉痛、成長痛も! 僕が神術で痛み止めできなかったら大変だったと思う。

 成長はまだ止まってないけど、やっと最近落ち着きつつある、かな? でも、服は直ぐ使えなくなるから、まるで犯罪奴隷のような粗末な貫頭衣が日常着。さすがにそれじゃ人と会えないから、外出する度に服を買い換えるものだから支出が凄いことになってた。最終的に、大きめの服を何通りも買っておいて、紐や布を巻いて調整する事にしたんだけど。でもこれ、脱ぎ着が面倒なんだよね。どうにかならないかな。


 身長が伸びたので、周りに余り子供扱いされなくなったのは嬉しいのか嬉しくないのか良く分からないや。140cmというと、成人男性でも居ない訳じゃない。女性だと割と普通に居る。コウタロウさんの時代より大分平均が違うみたいだね。顔つきは十代前半みたいになったし。今の僕を見て6才だと当てられる人は居ないんじゃないかな?


『坊っちゃん。そろそろ』

『あぁ、うん。分かったよ、ロジャー』


 僕の魂倉管理人は日に日に心配性になってきてる気がする。見た目はガラの悪い黒づくめなんだけどねぇ。まぁ何度か僕目当ての襲撃があれば仕方ないのかな?

 僕はささっとベッドを降りる。神殿の養い子に過ぎない僕に個室を渡してくれたのは嬉しい。お陰ではかどってるし。

 洗浄力を持たせた冷たい水を作って、ざっと顔を洗い。6才にして生えてきた髭を剃り。マッサージ器を改造して作った術理歯ブラシで口内を清潔に。最期に臭いを抑えるミストを体に吹き付ける。……体臭強いからね。


 階下に降りると


「おう、サウル。もう姐さん来てるぜ」


 店の人が指さしながら教えてくれた。

 店の表には二人の女性。スラッと背の高い剣士と、ウェイトレスの女性。ウェイトレスの女性は剣士にしなだれかかってて、悔しいけど絵になる。


「おはようございます。フラムさん」

「あぁ、おはようサウル。寝坊するんじゃないかと心配したよ」


 フラム様は、冒険者になった。アレハンドロに腰を据えて仕事をしている。今は、ジーンさんと一緒に暮らしてる。ジーンさんは、アレハンドロに来たときに最初に立ち寄った飯屋のウェイトレスさん。

 二人は友達……、には見えないね。もっとこう親密な何かっぽいですね。

 僕、子供だから分からないけど。


「さぁ行こうか、サウル。今日がお前のデビューになる」

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