第5話 熱意があれば道が開ける

 先日、勤めている会社が担当しているクライアント企業が行っている春のフォーラムが無事に開催され、終了した。

 これで春の大きな仕事は全て完了。次は秋になるのだが、報・連・相を滞るとロクなことが起きない。事前準備も多少の抜けがあったが、当日も抜けがあり、クライアントをイライラさせる出来事が多発した。フォーラム終了後の週明けからクライアント企業の担当者が資料や報告書などを「出せ、出せ」、「とにかく、早くやれ」と催促がバンバン届き、こちらの考える時間を奪う方法で追い込まれていった。

 ただフォーラムが安心、安全に開催できたのも、関われたのも、サッカークラブの運営業務の経験がとても大きかった。


 そして話は2015年2月へ戻る。


 現地スタッフと行ったキックオフミーティングから2週間が経過。そろそろ行動を起こさないと5月から開幕するリーグ戦の準備に間に合わないのではないかと焦り出したのだが、素人集団は日々の業務に追われ、それどころではなかった。クラブの会長である本体企業の社長もリーグ戦が楽しみとだけ想像し、運営にはさほど関心を示していなかった。

 焦っていたのは現地にいる事務局スタッフ、監督、選手兼社員、そして私とクラブ社長で本体企業の人事担当Y氏だけだった。


 そして、ついに緊急事態の電話が現地から届く。

「そろそろスポンサーに挨拶にいかないとマズイです」

 事務局のS君からの連絡。Y氏と私で早速、現地へ飛んだ。


 事前にスタッフがスポンサーにアポを取ってくれて、Y氏と私で、まずはユニホームに入るスポンサー4社を回ることにした。

 Jリーグのクラブの動向を見ていると早ければ夏頃に新規契約や継続のニュースが出ている。シーズンが終わった12月には継続契約が決まっている。Jリーグのクラブは2月が契約最終月になり、3月から新シーズンが始まる。

 我々も契約が3月から始まり、翌年2月まで。地域リーグでも5月開幕と他の地域と比べると開幕が遅いのだが、スポンサーとの契約が2月になっても締結できていないのは、かなりマズイ状況だった。スポンサーの予算も固まってしまっている可能性があり、すでに予算が無いなんて状況も想定された・・・。


 まずは胸スポンサーの警備会社。

 創部間もない頃からの付き合いで、新体制に疑問を持っていた。Y氏と私、旧体制から残ってくれた顧問と3人で、まずは挨拶が遅れたお詫び、挨拶、旧体制と新体制の違いや今後の展望を説明。そしてJリーグのクラブがどんな経営をしているか。クラブが地域にどう貢献していくか、特に鹿島アントラーズの話をしたことで思いが届いたようで何とか新体制にもスポンサーを続けてくれる約束を取り付けることができた。


 その後も背中スポンサー、腕スポンサー、パンツスポンサーも新体制の方針や旧体制との違いを説明し、なんとか継続に成功。みなさん、予算を確保してくれていたのだ。あとは、しっかりと挨拶に来て、いい加減なことを言えば契約は結ばないという構えだった。


 元日本代表10番のラモス瑠偉は、こんな話をしていた。


「テクニックは人から教わることができる。でもハートは自分で鍛えるしかない」


 提案書はテクニックで表現できるが、やはり人の心を打つのは誠心誠意しかないと感じた。そしてサッカークラブの運営は、いかに夢を語るか。目標を説明するか。感動と興奮を共有し、スポンサー企業の力を借りて共に地域に貢献し、地域を活性化させる。営業もエンターテインメント精神でお客様に接していかなければいけないと学んだ。

 ハートを鍛えるのは失敗や成功の経験。成し遂げたいと強く想い、行動したことで鍛えられる。最初からハートが強い人なんていない。少しでも楽をしようとすればハートは鍛えられない。苦手なことも、得意なことも取り組んできたからこそハートが強くなる。


 熱意だけでは成し遂げられないが、熱意が無ければ何も動き出さない。成功している人すべてが熱意だけで動いてきたわけではないだろうが、熱意を持って行動した人は成功しているんだろうなと感じた2月だった。

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