第2話 ある気づき

 大学を卒業後、スポーツ新聞、スポーツ専門フリーペーパー、サッカー専門新聞、広告代理店、インターネット広告の代理店・・・履歴書の職務経歴書に納まらないくらい会社を転々としてきた。


 私の履歴書を初めて見る採用担当は毎回、同じことを感じているはず。

「この人は一体、何屋なんだろうか・・・?」

 何屋というのは編集なのか、営業なのか、専門的な業務が私の履歴書からは見えずらいみたいだ。心ある採用担当者なら私に当てはまる仕事を探してくれるのだが、大抵の採用担当者は面倒臭いのか、求めている人材ではないのか、即!不採用で落とすのだ。採用担当のくせに履歴書や職務経歴書から読み取れないのかよっ!と毎回、悔しい思いをさせられている。


 これまで転々と勤め先が変わった理由には、こだわりがある。


 夢に近づくためのステップアップ


 私が心から愛するのは、サッカーだ。

 いかにサッカーに関わる仕事に就けるか。なかなかサッカーに関わる仕事や企業で働くまで簡単にはいかなかったが、少しずつ転職し、色々な人に出会い、ご縁があってサッカーに関われる仕事、企業への転職が叶った。

 しかし、サッカーというスポーツは、1993年に日本初のプロサッカーリーグ・Jリーグがスタートしただけあって歴史が浅いわりには、Jリーグブームに便乗した魑魅魍魎たちがのさばる曲者たちが支配する世界だったのだ。プロ野球とは違い、ベンチャー系企業がJリーグと共に大きくなり、Jリーグバブル崩壊後は共に苦しみ、そうした天国と地獄を味わった魑魅魍魎たちが幅を利かせる業界だと知った。


 サッカービジネスマン1年目が立ち回れるほど甘い世界ではなく、夢だった業界で働く現実は1年も経たずに追い出される形となってしまった。

 しかし、自分自身の課題は明確になった。魑魅魍魎たちと向かい合える交渉術、営業術を磨くしかない。記者や編集では手にできなかった術を手にして再度、サッカー業界で挑戦しようと決意して新天地で新たな修行が始まった。


 苦労した過去があり、報われた人、報われつつある人がいつまでもしがみついている業界。イングランド・プレミアリーグのアーセナルFCのアーセン・ベンゲル監督は、かつてこんな言葉を発した。


 「最大の功労者が最大のネックになる」


 サッカー界は、まさにこの言葉に当てはまる人が数多く闊歩している。

数が増えない椅子取りゲームは、いつまでも続く。しがみついた人が勝利する世界に再び挑むには、どうするべきか。

 まだまだ時間がかかりそうだが、夢を叶えるための修行だと前を向いたのが36歳の時だった。

 

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