フットボールガーデン ~長続きしない親父がアジアNo.1を目指す
蹴球道
第1話 この先・・・
また仕事を辞めた。
約3年間、勤めた会社だったが入社当初からバツが悪かった上司との関係が崩壊し、これ以上は働けないと感じ、自ら「辞めます」と口にした。
ただ次の働き口は、ほぼ決まっている。これからは自分がやりたいこと、自分が一番、輝ける仕事、追いかけてきた夢が現実となる場所での労働が待っている。
だから絶望ではなく、希望しかない退職なのだ。
さあ! 夢を叶え、たくさんの人を喜ばそう!!
・・・と希望に満ちて会社を飛び出したのが11月27日。
約1ヶ月、のんびりと休養して、会う人、会う人に夢を語り、喜びを話していたのだが、新年が明けても一向に次の職場から連絡が来ない。面談をしていた担当者とも連絡が取れない。何度も留守電を残し、ショートメールを送っても担当者からのコールバックが一切ない。
誰でも感じる。これはヤバイな。ひょっとしたら・・・
悪い予感は当然、的中。
なんと担当者が年末で契約打ち切りになってしまったのだ。その連絡をもらったのが1月10日を過ぎた頃だった。目の前が真っ白には、ならなかったが嫌な予感が的中して「やっぱりか」と諦めでもなく、どちらかと言えば呆れてしまった。
話を聞けば、私とよく面談していた夏から秋にかけては、3年契約が終了する頃で、3年契約の延長を済ませた頃だった。それが突然、社内の派閥争いというか、担当者の反対勢力が別方針を掲げ、社長が納得してしまったそうだ。担当者は「地道に、コツコツと前進し、然るべきタイミングで大きな勝負をすべし」と社長以下、全ての人を納得させていたのだが、反対勢力が「いつまでも時間をかけてはいけない。ここで予算を投じて大きな勝負をする3年間にすべし!」と驚きの計画をぶち上げたのだ。
そして担当者は年末で職を失い。私も完全に職を失ってしまった。
担当者は電話口で「本当に申し訳ないです。あなたと一緒に仕事がしたかった。僕も無職になったので、これから職探しです。あなたのことは社長とスタッフに伝えてあります。スタッフ強化、増員をする際には真っ先に連絡がいくようにしています」と伝えられたが、追い出される人の言うことなんて実現したことがないのを理解しているから逆に白けてしまった。
人生初の無職になってしまった。
無職は「無色」と表現できる。私は何色でもない。そして何者でもない。大きな夢や高い目標を掲げていても挑戦する場がなくなってしまったのだ。
これから、どうしようか。結婚もして子供もいる。長男は春から高校生になるのだ。最悪というよりも最低だ。私は最低な奴になってしまった。
こんな最低な状況の時に、かつて日本代表ゴールキーパーとしてアトランタ五輪で“マイアミの奇跡”を手繰り寄せ、“ジョホールバルの歓喜”で日本のワールドカップ初出場に貢献した川口能活の言葉が頭をよぎった。
「努力をしない者に運やツキは回ってこない。運やツキも実力のうちなんです」
底辺に落ちたけど、努力し続けるしかない。夢が叶っても、叶わない日々が続いても思考を巡らせ、考え続け、行動し続け、努力をし続けるしかないのだ。与えられた時間をそうして過ごすしかないのだ、と斜め下を見ながら頭に浮かんだ。
ひとつだけハッキリしていることがあった。
会社を辞めたことに後悔だけはなかった。いずれ辞める予定だったから、それが早まっただけのこと。戻るつもりもない。戻ればウマが合わない上司に頭が上がらない地獄のような状況で毎日を過ごさなければいけないからだ。気持ち良く仕事できないなら行くべきではない。
しかし参った。これから先どうしようか・・・。
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