第33話 俺たちの仕事がある。テレビ局の人に指示されたことだ

 次の日の生徒会の時に、俺は会議の司会を一人ですることになった。

「俺たちの仕事がある。テレビ局の人に指示されたことだ」

 今ななみは良賢君と一緒に作文を作っている。あのアホがいなければ、会議もスムーズに進むことだろう。

「なんか、会長がいないと締まらないな」

 笹島君が何かおかしなことを言い出したぞ。

 奴がいると、それこそ、会議がグダグダになって締まらない会議になるのが目に見えているのに。

「そこに座って、ドーンとかまえている会長がいないと、会議って感じがしないよね」

 ちかどさんもトチ狂った事を言われますね。

 ななみがふんぞり返っていると、俺は殺意しかわかないが、ちかどさんはそうでもないらしい。

「そうですよね。鷲谷のマヌケ面を見ながら会議なんて、気が抜けますよね」

 てめぇ糸居。後で屋上行こうか。

 そう言いたいところだが、今の俺は生徒会の一員。お上品にいかなくてはいけない。

「マヌケ面はないでしょう。とにかく。今日の会議の司会進行は俺がやりますよ」

 全員の文句をスルーして会議を続ける俺。

 良賢君の作文をテレビ中継をするはいいが、そのためにその事を宣伝してほしいというのだ。

 宣伝なんてテレビ局の人間の専売特許のような気がする。向こうに任せたいが、学校の方でも良賢君の作文披露に力を貸してくれという事だ。

 俺たちがテレビ局を利用しようとしているように、テレビ局の方も俺たちの事をとことん利用するつもりのようだ。

 テレビでの放送を見てくれる人が増えるように、大きな一大イベントにして、周囲に認知させてほしいという。

 良賢君の作文披露に多くの村の人を集め、テレビでどう放送されるか気になった村の人が、テレビ放送も見るっていうのを期待しているようである。

「俺たちの方で広告を作って村中に張り付けて良賢君の作文披露を宣伝。休みの日に人を集めて大勢の人でにぎわう中での作文披露。俺たちの役目はそれだ」

 利用して利用されてだ。

 あちらが乗り気になってくれているのだから、こっちも全力で人を集めていかないといけない。

 広告の作成費用は校長に交渉が済んでいる。いろんなところに張り付けさせてもらうように、頼める顔の広い奴がいると、いろんなところにペタペタ張る事も出来てやりやすいのだろうが。

「それ、ななみだ」

 あのバカのたった一つの長所である友人を作る能力。それが発揮される機会であるというのに、今は作文を作らせてしまっている。

「無理やりでも引っ張ってくるか」

 あいつは文句を言うだろうが知ったことではない。いろんなところにお願いをさせて広告を貼らせてもらおう。

 生徒会の役目として優先度が高いのはこっちだ。

「待ってくれ」

 笹島君が言い出した。

「今度はボクの番らしいから」

 今まで、大した事をしていなかった笹島君の言葉の意味はその時はよくわからなかった。


 ななみは笹島君は先輩の女子達に絶大な人気があると言っていた。

 特に気にも留めていなかったが、その能力は、今回活かすことができそうであるというのだ。

 今は俺たちはちかどさんの教室の前にいた。

「ボクの一番苦手なクラスだ」

 笹島君はキツそうな顔をしていた。

 このクラスはレベルたけーな。顔の良し悪しで選別してクラスわけでもしているのだろうか? そうだとしたらすげぇ差別だ。

「見ていて」

 笹島君は意を決してと言った感じでそのクラスに入っていった。

「笹島君だ!」

 一人の女子が笹島君が教室に入っていったのを見つけると、笹島君に向けてハイエナのように女子達が群がっていった。

「キミの方からきてくれるなんて、お姉さんうれしいなー。いいこいいこしてあげるよ」

 女子の一人が言い出す。うぜぇな。こういうのが男に受けるとでも思っているのだろうか。こんな事言われるのは確かにキツいだろう。

 笹島君がこのクラスにビビっていた理由がわかる。

「今日は折り入って頼みがあるんです。市場長のおじいさんがいるんですよね」

 そのウザい女子は、いいとこのお嬢さんだったようである。

 大体わかった。市場に今回作る広告を貼らせてもらうように交渉をするのだろう。

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