第27話 詳細とはなんだ? 白菜の仲間か?
「校長がプロデューサーを呼んでくれるらしいぞ」
生徒会の会議中にななみが言い出した。
「詳細を言え」
「しょうさいとはなんだ? 白菜の仲間か?」
校長もなんでこのバカに重要な事を通達するんだ?
こいつが生徒会長なんだから、責任者に話をするのは当たりまえの事ではある。
「私達も鷲谷だけに頼っているわけにもいかないよね」
ちかどさんが言う。
すいません。うちのバカがご迷惑かけます。
「自分で出ていかないと、どんどん話が広がっていってしまうな」
ごめんよ笹島君。できれば俺のところでカタをつけたかったが、校長が出てきたら一人では止めようがないからね。
このやる気のない生徒会が初めて一致団結した。
「みんなで行きますか」
糸居先輩も空気を読んだ。
だけどさ。なんでちかどさんに向けて言うの? みんなに向けて言えよ。
初めて一致団結した俺たち。
全員で校長室に向かうと、校長はまたしても俺たちの事をすんなり通した。俺たちが来るのを待っていたかのようだ。
「来てくれて助かったよ。ななみ君ではちゃんと伝えてくれるかどうか不安だったんだ」
校長も言ってきた。このクセ者の言う事だから真意は分からないが、その言葉には全員が納得した。
「テレビ局の方から話を聞きたいって言ってくれた」
テレビ局だからって、そんなに腰が重いものではないらしい。当然ロクでもないアイデアを流すわけにはいかないが、アイデアが余っていて、どれを流していいか困っているような状況でもない。
校長に向けて何度もネタを催促をしてきたという引け目も、少なからずあるだろうという校長の分析だ。
「テレビ局の人を呼べるわけがないと思っていたけど、今回は好条件が重なったわけだ」
俺が今の状況を整理する。本当に運がよかったという事らしい。
「だが呼び出すからにはハンパな事はできないよ。こっちだって」
校長の言いたい事もわかる。
「計画は立てておきましょう」
俺は言う。校長の言いたいこともそういう事だ。生徒会のみんなで、学校の代表として恥ずかしくない計画を立てようではないか。
「とんでもない事になったな」
俺はいつもの帰り道をななみと一緒に歩いている。
「おうよ。楽しみな事になったな」
楽しみなのはこいつだけだ。
早速明日にテレビ局の人と打ち合わせ。俺たちの事は伝えてあるらしい。どう伝えているか恐ろしい想像しかできないところだ。
あいも変わらず防波堤の上を歩くななみ。
何度も蹴りを食らいたくないので今日はななみから離れて歩く。
「なぜ離れる?」
「お前、スカートの中を覗いたとか言って文句言うだろう?」
文句だけではなく綺麗に蹴りを入れてくる。
ななみのやる事は読めるため、かわすのは簡単であるが。
俺はななみの事を考える。
こいつの善意で良賢君が前向きになったはいいが、それが逆に死への不安と恐怖をかき立てたのだ。
だが、それは止めるべきだったとは思わない。
死ぬのを怖がるのは当然の事だし、あの幼い身空で死を受け入れてしまっていたは、逆にかわいそうに思えてくる。
「そうだ。いい考えを思いついたぞ」
ななみのいい考えという事は、聞く価値がないという事だ。
「こっそり教えてやろう。耳を貸せ」
ななみが俺に手招きをする。付き合ってやろうと思い、ななみの方に歩いて行った。
「隙あり!」
ななみは俺の顔面を思いっきり蹴り上げようとして蹴りを打って来た。
「隙なしな」
そう言う俺はそれをさらりとかわす。
「そんなこったろうと思った」
いい考えというのは俺を油断させるための罠だったわけだ。そんなものにかかるわけがない。
「これがないと落ち着かないからな」
俺の顔を蹴り上げるのはこいつにとっては日課みたいな気分になっているらしい。
本当に騒動を起こさないと気が済まないやつだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます