第2話 生徒会のメンツ

「えーと。まずはみんなの挨拶から」

 生徒会が招集され一同に集まった。そこで、生徒会長の補佐役として司会を俺が請け負った。

 我らが生徒会長。ななみ様を筆頭にくじ引きで決められたメンツがそろう。

 ななみ様は明朗闊達を形にしたような奴だ。

 髪は短く、それでも無理やり結って三つ編みにしているし、リボンなども付けてかわいさアピールをしているという。

 ただ、高校生のつけるアクセサリには到底見えない。

 一番の特徴は昔の怪我で頬から首に至るまで痛々しい傷跡があることくらいだ。このお馬鹿な娘であれば、どこでどんなアホをしてこの怪我をしたか、無限に想像ができるものだ。

 この怪我については俺も一枚かんでいるがそれは若さゆえの過ちというものである。

「私の事は紹介の必要はないかい。今をときめく学校一のスターダムだからね」

 無駄にダムを付けるな。それじゃスターの地位とかの意味になる。

「今の言葉で、あなたの人となりはよくわかりましたわ」

 会計の少女が言う。

 この一言でこいつのバカは伝わったようだ。

「では寺海 ちかど(てらうみ ちかど)さん。ご起立と自己紹介を」

 俺の司会で起立をするとペコリと頭を下げるちかどさん。

「君も紹介の必要なんてないよ。巫女さん」

 ななみは友人が多く他人の情報にとにかく詳しい。どこかから彼女の情報を仕入れているのだろう。

「ちかどさんは正真正銘の生の巫女さんだというのだよ」

「説明が足りません。寺海さん。続きをお願いします」

 ななみにしゃべらせていたら訳がわからん。

 ちかどさんが巫女さんという話はどういう意味か? 彼女の口から聞いた方が何万倍も速い。

「えっと。わたしの事はちかどでいいです。先ほど紹介に預かりまして、家が神社で祖父が神主をしています」

 あー。そういう事ね。

「巫女さんと言えば子供たちなんかに人気で、よく脱がされてヒドい事に」

「なりません!」

 こいつの失礼は心の底からお詫びいたします。後で煮るなり焼くなり好きにしてください。こいつのこと簀巻きにしてあなたの前に引っ立てますんで。

「三年のFクラスで学級委員もしています。よろしくおねがいします」

 早口で言う。ななみに口を挟ませないようにだろう。

 こんなの序の口だぞ。そういう事をななみに知られたら事あるごとにイジられることになる。

 生徒会でのちかどさんの未来はかなり暗くなった。

「それでは糸居 怜太(いとい れいた)さん。おねがいします」

「よお! 忍者の末裔よ!」

 ななみは、またなんか知っているらしい。

「今ご紹介に預かりました、家が忍者をやっている糸居です」

 よく話の続きを聞こう。今の時代に忍者なんてありえるわけがない。

「家は確かに忍者の末裔ですが、今の時代の忍者は観光を仕事にしており、外国人に手裏剣の投げ方などを教えるのが仕事です」

 なるほど、今の忍者って外国人向けの観光の仕事をしているんだね。

 家が忍者というのは彼にとって知られたくない事実だったようだ。自分の名前も言わずにそれだけ言うと座ってしまった。

「三年Aクラスの糸居 怜太さん。ありがとうございます」

 とりあえず俺が名前とクラスの紹介をしておく。

 糸居先輩すいません。こいつの事は後で磔獄門にかけておきますね。

「えーと私の家は武家で、剣道道場をしています」

 俺の紹介の前にそう言ってきたのはこの生徒会で唯一の一年である。

「笹島 渚(ささしま なぎさ)です。一年Cクラスです」

「現代を生きるサムラ……」

「やめなさい」

 もう自分から言ったんだから許してやれよ。

 渚は女の子にも見えるような美形の少年だ。こういう奴は先輩の女子達から絶大な人気を持っていたりするものだ。

「彼は先輩の女子達から絶大な人気がある。もしもの時は彼の人気にあやかって人心掌握をしようと私は考える」

 ななみの言葉に渚君が奥歯を噛んで悔しそうにしているぞ。やめなさい。

 すまない渚君。こいつはいずれ切腹をさせてやる。

 必要最低限の人間しかいない生徒会。このメンツで行くわけだが、いきなりお互いの知られたくない秘密をななみの奴が暴露しやがった。

 今回話し合う校長から出された会議の議題は、最初から結論が決まっているようなものばかりだ。

 一考の余地などなくスムーズに会議は進んでいく。

 だが俺たちの関係はどこかぎくしゃくしたものだった。

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